寛容すぎる大阪・四天王寺、その狙いは?

日本仏法最初のお寺、和宗総本山「四天王寺」

「和やかですが、芯はしっかりしているんです」(田渕さん)
──まずは率直に伺います。こんなに「和やか」で大丈夫なんでしょうか?
加藤さん「実はあえてそうしているんです。と言うのも、四天王寺は聖徳太子創建のお寺であり、その土台には『和の精神』があります。ここを訪れていただいたとき、心が救われるように、また、決して信者さんが不快に思ったり、傷ついたりしないよう実は細心の注意を払った言葉遣いにしているんですよ」
田渕さん「どんな取り組みでも、住職による細かく厳しいチェックがあります。でも、これまでの型にとらわれないように、新しい取り組みをしてきなさいとも、常々教えられています。和やかですが、芯はしっかりしているんですよ」
──ユーモアあふれる企画はほかの寺院ではあまり見かけないですが、なぜ「四天王寺」はこんなに自由な発想でアイテムや企画ができるんでしょうか?
田渕さん「四天王寺が総本山であることが大きいですね。系列の寺院ですと、本山の許可が必要だったりするんです。会社でいうなら系列会社が本社に許可を取るという感じでしょうか。その許可を得るスピードが速いんです」
加藤さん「これはダメだけど、こことここを変えればOKとか。細かな訂正ならすぐできますから、やはりスピード感は出ますね」

──こちらでは多種多様なユニークなグッズが販売されていますが、特に御乳守は思いもよらないアイテムですね。
加藤さん「女性の信者さんからの要望を形にしました。女性が肌身離さず身につけれるもので、パットはどうかな?ということで開発されたんですが、かなり時間はかかりましたね」
田渕さん「あの時は肌触りや素材、耐久性もかなり追求しましたね。あらゆるメーカーのパッドをさわりました。職員たちとひとつひとつ手作業でラベルを付けて、実際に使ってもらったりもして。販売すると爆発的に人気が出て、みんな、うれしさ反面、驚いてます」
「僕ら世代にとっては当たり前のツール」(加藤さん)
──おふたりが出演しているYouTubeチャンネル「おまいりイコカTV」も話題です。しかし、僧侶自ら動画を作るというのは、とても意外でした。
加藤さん「前回の新西国霊場の出開帳は40年前に開催されたんですが、当時も一生懸命広報活動したそうです。その時代を知る住職たちに、時代に合わせたことをやりなさいと常々言われていまして。時代に合わせるなら今のツールを駆使すること。つまり、インターネット、SNS、YouTubeなど、僕ら世代にとっては当たり前のツールなんです」

田渕さん「オリジナリティがあるから面白くって味がある、また、人間味とか親しみとかを感じていただけたら、さらにうれしいですね。テレビ番組に出演したときも『さらに詳しい内容は、YouTubeを見てくださいね!』と言えば、さらに効率的な宣伝活動ができます」
加藤さん「総本山が次々と新しい取り組みをする姿を見せることで、ほかのお寺さんの参考になったり、また、盛り上げていく牽引力になればという意図もあるんですよ」
──その『霊場巡拝いこか』ですが、チラシが3種類あります。なかでも、ギャグマンガ日和とのコラボは非常に革新的です。なぜこのような企画が生まれたのでしょう?
加藤「最初は国宝の聖徳太子肖像画を使ったチラシ作成していたのですが、住職のなかに増田こうすけ先生の『ギャグマンガ日和』のファンがいまして。そのマンガに登場する聖徳太子をチラシに登場させたい!となったんです」
田渕さん「そこで集英社にオファーしたんですが、『ギャグマンガ日和』が今年で連載20周年という節目もあって、奇跡のコラボレーションが誕生したんです」

加藤さん「2番目のチラシは、増田先生にチラシのデザインをイメージしてもらうためのサンプルで。イラスト担当の谷口くんが描きました。『霊場巡拝いこか』も『ジャンプ』っぽいロゴにしていて、『40年ぶり』という文字もジャンプの表紙によく使われる描き方で。するとツイッターで拡散されて、コラボ前は1000前後だった告知ページのPVがいきなり40万PVになって、SNSのいいね!も4000を超える桁違いの反応でした」
──谷口くんっていうのは、四天王寺のイラストを担当している方でしょうか?
田渕さん「はい、ブログの挿絵や地蔵山地図も描いています。もともとマンガ家志望で、絵が上手ということもあり四天王寺のイラストはほとんど彼が描いています。呼びましょうか?」
──ぜひ、お願いします!

谷口さん「こんにちは、僕がイラストを担当している谷口です」
田渕さん「タレントの宮川大輔さんに似ているので、みんなから『四天王寺のペイペイ』って呼ばれています(笑)」
「これからの時代、個性を出すことは大切」(田渕さん)
──お坊さんといえども、同世代が集まれば会話は普通の若い人たちと同じなんですね。
加藤さん「結構、冗談とか言ってワイワイやってますよ。番組作りもアイテム作りも、終始和やかで楽しい雰囲気です。田渕くんがイラストレーター(描画ツールソフト)などを使えるので、谷口くんが手描きで下絵を描いて、田渕くんがデジタル化するというタッグも組みます」
田渕さん「実は、今回のチラシの挿絵が『ジャンプ』の宣伝ページにも掲載されるんです。マンガ家志望だった谷口くんの夢が、ちょっと叶ったよね」
谷口さん「いやあ、まあ、とてもうれしい限りです(照)」
──アイテム、イラスト含め、オリジナリティ、ユーモア、人間味が溢れているように思います。粛々としたイメージのお寺に、親しみが湧いてきます。
田渕さん「業者に手配すれば簡単だけれど、味気ないものになってしまう。ですから、これからの時代、工夫して自己流で個性を出すことは大切でないかと思うんです。お守りひとつでも、四天王寺らしさやユーモアが出せれば、それを目当てに来てくれる人がいる。お参りだけでなく、こんなに面白い、楽しい面もあるので、ひとりでも多くの人が四天王寺に足を運んでもらえるようになればうれしいです」
そんな「四天王寺」の若手僧侶が今、もっとも力を入れている新西国霊場会発足90周年事業の『霊場巡拝いこか』は、6月5日から9日まで開催される。また、年間を通じてさまざまなイベントが企画されているので、チラシとともにチェックしてみて。
取材・写真/岡田由佳子
和宗総本山「四天王寺」
住所:大阪市天王寺区四天王寺1-11-18
『霊場巡拝いこか』
期間:2019年6月5日(水)〜9日(日)
時間:10:00〜16:00
料金:出開帳参拝料1000円(記念法要などは無料)
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