「洗骨」の映画人・照屋年之に迫る/後篇

「僕は狂った方向に行きたいんですよ」(照屋監督)
春岡「相米監督にとっては、そんなことはどうでもいいですよ。自分の演出で、自分の言ったとおりにカメラが動いて、できたフィルムを観て、『ああ、映画じゃん』っていうだけ」
照屋監督「あれどうやってOK出したんですかね?」
斉藤「いや、たまたまでしょ。撮ったら映っていた、ぐらいの」
照屋監督「それ、配給会社はOK出したんですか? 狂ってますよね・・・。だって、普通は出さないですよ、今は」
春岡「狂ってるのが映画なんですよ。映画というのは、実は狂ってるもんだもん。照屋監督は真面目に映画を考えすぎ!」
照屋監督「いや、だから嫉妬してるですよ。僕も、もっと狂った映画を撮りたいんです。『台風クラブ』や『ションベン・ライダー』を観ると、ああ、こういうの撮りたい! って。でも、今の映画業界には制約があるじゃないですか、どうしても」
斉藤「残念ながら、そうですよね。映画界まで下らない世論におもねって自主規制の嵐でしょ。でもそういう時代はいっぱいあったんですよ。ちょっと破天荒なプロデューサーが何人か出てくると実際変わるんですよ。角川春樹とかさ」
春岡「そうそう。実はどの時代にもいるのよ。どの時代も制約がいっぱいあって、どの時代も狂ったプロデューサーがいて。それとうまく組んだ狂った監督が、世間は認めないかもしれないけど、ちゃんと観てる連中にとってすごいよねっていうのを撮ってたんですよ」
斉藤「照屋監督は狂ったものが撮れますよ。それは短編を観たら分かる」
照屋監督「僕は狂った方向に行きたいんですよ」
田辺「分かります、それは。ガレッジセールのコントを観てたら分かりますよ」

照屋監督「僕、五社英雄監督の『吉原炎上』にあった、名取裕子さんと二宮さよ子さんのレズシーン。ああいうのが大好きなんですよ」
春岡「それを撮りたいわけでしょ?」
照屋監督「撮りたいっす。『鬼龍院花子の生涯』とか。あの映画、最初に闘犬の喧嘩シーンがあるんですけど、興奮して咬むのをやめない闘犬の鼻先に火を着けて、牙を離させるじゃないですか。ああいうリアリティにめっちゃ興奮するんですよ。やばすぎて。『恐い』が『すごい』。『すごい』が『美しい』に変わるんですよ」
春岡「ただ、あまりにも狂いすぎると、世間からスポイルされてるんだけど、五社監督は上手いよね。狂気をドラマのなかにちゃんと落とし込むのが、あの人の腕なんですよ」
斉藤「五社監督はテレビ出身だけど、テレビの時点で狂ってた(笑)。まあでも、映画としてすべて面白いかと言われると、それほどではない。そこが一番辛いとこ(苦笑)」
春岡「でも、あの樋口可南子をはじめ、役者はみんな五社監督の映画に出たがる。役者たちも、現場ではみんな狂いたいのよ。で、それを実現させてくれるのが、五社監督の現場なわけ。相米監督の現場も、みんなまた行きたいっていうんだけど・・・」
斉藤「今、映画を作ってる人で相米監督の影響を受けてないのって、ほとんど皆無ですよね。たとえ自分で相米監督の映画を観てなくても、映画学校とかで教えてる人が相米さんの影響をモロに受けているから」
田辺「そうそう。批評家も含めてね」
照屋監督「俺も長回しで撮りたいですもん。もう格好良くて」
春岡「20シーンを1カットでやったりしてさ(笑)」
斉藤「やってみたいでしょ? 必然性があるかと問われれば正直言ってないんだけど(笑)、まったく意味のない1カット!」
照屋監督「あと、オープニングのシーン。ヤクザのカットからそのままプールに行くのとか」
春岡「『ションベン・ライダー』のあのカットはすごいよなぁ。長めの数シーンを8分間1カットの長回しでいくからね」
斉藤「あれこそまったく意味はないけど、これが映画というものだ、って身に沁みるシーンですよねえ」
春岡「だから映画というのは、やっぱりキャメラの運動なんだなって。改めて知らしめられるっていうか。ストーリーなんてどうでもいいんだってことを、ちゃんと証明してくれた映画なんですよ」
照屋監督「なるほどねぇ」
春岡「俺も(日本映画の基礎を築いた)牧野省三監督は立派だとは思うけど、三大原則『スジ、ヌケ、ドウサ』なんてどうでもいいって。映画で大事なのは、映画的な運動、映画的な表現だけなんだから。要するに、観て面白いか、つまんないかだけ。まあ、照屋監督にそれをやってくださいって言うのは、違うのかもしれないけど」
照屋監督「いやいや、がんばりますよ! 4月の『沖縄国際映画祭』では最新作の『NAGISA』が上映されるんで、ぜひこれも観てください。『洗骨』よりも成長してると思いますので。江口のりこさんが主演で、死にたい大人と、生きたい子どもの作品です。僕、これも大好きなんです」
一同「それは絶対に観ないと!」
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