「洗骨」の映画人・照屋年之に迫る/後篇

「この10年間は無駄じゃなかったなと思う」(春岡)
──映画を撮ることに対しては、どこでスイッチ入ったんですか?
照屋監督「もう1作目『刑事ボギー』の編集ですよ。それ以外なにもない。あの『映画の編集』の魅力です。現場はずっと楽しくなかったですけど(苦笑)」
斉藤「2作目の『ボギー☆ザ・ヒーロー』で明らかに進展がみえますよね」
照屋監督「1作目が苦しすぎたんで、精神的に。もうあの嫌な思いはもうムリですね。僕以外全員、イヤ〜な空気を出す現場にずっといるって。地獄なんすよ」
田辺「ありますね、そういう現場。デビュー作で、そういう現場は耐えられないかも(苦笑)」
照屋監督「ちゃんと段取りやれよ、そこで悩むなよ、とか。いや、誰もそんなこと言わないんですけど、僕が勝手に感じちゃうんですよ。でも編集が終わったときのうれしさと、みんなが笑ってくれるのを味わったら、どうしても止められなくて。で、監督3作目の『南の島のフリムン』が終わったとき、芸人が映画を撮るって雰囲気が吉本から急に無くなっちゃって」
斉藤「そういえば、知らないうちにプロジェクトが終焉してしまいましたね」

──それにしても、自腹で映画を撮るって相当ですよね。
照屋監督「僕も出しましたけど、フリーのプロデューサーの方がお金を集めてくれて。で、2011年に『伝説の家族』という短編を撮ったんですけど、全然賞には引っかからないんですよ。『あれ? こんなに面白いのに!?』って。会場はわんわん笑ってるんだけど、面白いだけじゃ賞はとれない。かといって、賞を目的に映画撮ってるんじゃないんです」
田辺「分かります。賞をとらないと、次の長編のチャンスがないってことですよね」
照屋監督「そうです。僕が長編を撮るには、それしかないなと。で、『SNS』で一切笑いなしの感動映画を作ったら、思いっきりこき下ろされまして(苦笑)。で、迷ってるとき、『沖縄国際映画祭』で地域映画を撮るチャンスをもらえて。毎年、短編を撮りながら、『ショートショートフィルムフェスティバル』に出すんですけど、やっぱり箸にも棒にもかからず・・・というのが、ずっと続いていて」
斉藤「やっぱり色眼鏡があるんじゃないですかね、審査員に。箸にも棒にも、というレベルでは少なくともないと思うんだけどなぁ」
照屋監督「僕自身がボケの連続なんで、自虐的に言うと、映画は映像化したコントなんです。やっぱり映画は物語で引っ張らないと、観客も評論家も審査員も掴めないと思って、大きく変わったのが『born、bone、墓音。』ですね」

斉藤「たしかにステップアップした感はあるけれど、でも、全部面白いよね?」
田辺「全部面白かったです。『ロクな人生』にしても素晴らしいじゃないですか。ラストを変顔なんてのは古典的ですけど、それまでの筋が緻密に練られているからちゃんと笑える。しかも、ワンシーンごとにオチをつけていくんですけど、物語が途切れない」
斉藤「いわゆるコント的と言われるのは、1作目の『刑事ボギー』だけでしょ。特に『伝説の家族』なんて、すごいファルス(笑劇)やと思うけどな」
照屋監督「僕、自宅以外でこんなに居心地いい場所は初めてです。『第2の自宅』って呼んでいいですか?」
一同「ハハハ(笑)」
照屋監督「こんなに褒めていただけるとは。評論家のみなさんって、みんなキツイこと言うじゃないですか。あのシーンはダメだよねとか、あれは展開が読めて冷めたとか。それは僕も分かってますから。でも、この場所は気持ちいい(笑)」
斉藤「いやいや、僕らけっこう厳しく言う方ですよ?(笑)」
春岡「そう。厳しいけど、好きなものは徹底的に好き。俺は申し訳ないんだけど、短編『born、bone、墓音。』と今回の長編『洗骨』しか観てなくて。でも、照屋監督のインタビューは全部読んだんだけど、この10年間は無駄じゃなかったなと思う」
照屋監督「ホント、そう思います」
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