北原里英「数万のいいね!も勝てない」

「ネットで何千、何万人が相手をしてくれていても・・・」(北原里英)
──白石監督は間違いなくサニーをアイドル的に描いていますよね。
撮影前から白石監督は、「アイドル映画」を撮りたいとおっしゃっていたんです。アイドルの偶像性、虚像性を題材として、特に現代のネット社会におけるアイドルの姿を映した映画です。SNSなどを通じて誰でも(アイドルに)なることができる時代の中、サニーという偶像がネットでひとり歩きし、実際のところは誰が本物か分からないし、逆を言えば誰だってサニーを名乗ることができます。つまり、サニーは現代のアイドルであり、そういう意味での「アイドル映画」ですよね。
──ネットの文化は、発言などのソース元があっても、伝え方、発信の仕方次第で情報がどんどんねじ曲がっていきます。
私ももっと上手くSNSを使うことができれば、もう少し人気があったのかもと思うのですが(笑)。
──ハハハ(笑)。
ネットは、伝わり方次第で人を神格化させることができます。ただ、赤理はサニーとして覚醒するとき、人を殴り、蹴り、そして抱きしめます。つまり、誰かと直接触れ合うことの意味を訴えています。ネットで何千、何万人が相手をしてくれていても、たったひとり直接抱きしめてくれる人がいなければ、それはすごく寂しいことです。数万人の閲覧者も、数万のいいね!も、ひとりの体温には勝つことはできないと思います。

──サニーとして神格化した赤理はその後、悩める人々に説法をおこなうわけですが、決して難しいことは言っていないですよね。すごくわかりやすい言葉で、相手に直接ぶつけてくれる。ただ、こういった説法はネットで拡散すると、どこかでねじ曲がったり、違う意味で捉えられたりするんですよね。
そう思います。ネットの情報はとても便利だし、媒体として発達すること自体はいいことだと思います。でも、その場で直接聞くと明らかに良い意味であったり、冗談に聞こえたりする内容でも、文字にすると温度感やニュアンスが変化してしまうことがあります。私自身もそれで誤解を招いたことがあります。しかもそういった情報は、発信すると絶対にどこかに残って消すことができません。
──情報が残ってしまうことの悲劇の産物こそ、大人になったサニーなんですよね。情報が残るから、人々はいつまでも幻影や面影を追ってしまう。結果、自分の過ちを償おうにも、償えない状況になります。
そう、サニーは弱者です。全員、そういった表面上では分からないものを抱えています。赤理を拉致する、ピエール瀧さん演じる柏原勲もものすごく怖いですが、愛おしく感じられる弱さも持っています。
──ラストはまさにそれを象徴するようなシーンですよね。あのエンディングは観ている側も救われます。発言した本人の意図が誤解されることが多い今だからこそ、赤理のあの行動にメッセージ性が生まれる。まさに今おっしゃったことですよね。
あのラストはクランクアップした数カ月後に追撮したものです。それまではもう少し濁す終わり方だったのですが、編集をしているときに白石監督が「追加で撮りたい」となったそうです。白石監督作品のなかでも、観終わってこんなにスッキリするものはなかったのではないでしょうか。

──読み込めば読み込むほど、この映画は面白い。ただ資料には、北原さんのコメントとして「アイドルである私が主演なので、それで鑑賞を避けられてしまうかもしれません」と書かれています。そういったおかしな固定概念やアンチズムのせいで、正当な評価が成されていないことが最近は多いと思うのですが。
私もグループを卒業しても一生、元AKB48、元NGT48と言われると思います。それはすごく武器にもなるし、時には足かせになるかもしれない。でも、自分の努力次第できっと変えられると思っています。私が目標としている小池栄子さんも、かつてはバラエティや雑誌のグラビアを中心にご活躍されていましたが、現在では日本を代表するような演劇人です。きっと、ご本人の並々ならぬ努力があったからだと思います。
──この映画を観ると、女優・北原里英を期待せずにはいられませんよ。ちなみに北原さんは、ご自身でどういう演技がもっとも得意だと感じていらっしゃいますか。
殴られるシーンです(笑)。白石監督にも、「受けの芝居が上手くなっている」と褒めていただくことがありました。以前も別のお仕事で「殴られるのが上手」と言われたことがあって。『マジすか学園』(テレビ東京系列)で殴られてばかりいるキャラクターだったので、それで上手くなったのかもしれません(笑)。
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