二階堂ふみ「あの頃退屈で仕方なかった」

「普段の学校に行くとあまり感じなくなるというか」(二階堂ふみ)
──あのインタビュー・カットは監督や脚本家のアイディアですか?
そうです。インタビュー・カットを入れようと思っていると伺ったとき、諏訪敦彦監督の『2/デュオ』(1997年)にスゴく近いなと思って、「いいですね」って。
──あ、やはり。僕もすぐに思い出したのはあの作品です。『2/デュオ』も作品内のキャラクターと演者の関係がほぼイコール・・・というか、物語の展開やセリフを俳優と合議しながら作り上げていく、そこに俳優本人へのインタビューも挟んでいく、というメタフィクショナルな構造の映画でしたから。インタビューはどのように撮られたんですか?
インタビューはいつ撮るとか、どんなことを聞くかとか事前に聞かされていませんでした。ある程度の質問とそれに対する答えが用意されているんですが、そのほかはほとんどアドリブで話しています。
──じゃあ、かなりの量を撮ってるんですね?
だいたい1時間半くらい撮っていたと思います。撮られてるうちに、この役を演じているから自分がこういう考え方になってるのか分からなくなるような、役と同居するような感覚がありました。インタビューがあったことにより、(俳優たちは)みんな考えるし、感じる。インタビューには正解がないので、それぞれの個性がスゴく出ていると感じましたし、あれがあったからこそキャラクターと自分が共存できたんじゃないかなと思います。

──ちょっと時間が経って、16~17歳の頃を思い返して「あの頃は確かに、もう少しで溺れてしまいそうな川の縁にいたんだ」みたいな。
そうですね。あのころの私は、学校だけでなく、(撮影)現場にも社会があったから、ぜんぜん別の世界を行き来していたような感じでした。現場ではスゴくいろんなことを感じるのに、普段の学校に行くとあまり感じなくなるというか。退屈で仕方なかったです。
──劇中で、こずえに「アホはほっとこ。あの人は何でも関係ないんだもん」って捨てセリフを吐かれるシーンがありますよね。まさしくハルナの本質を衝いていて、だからこそ彼女がこの物語の主人公である所以だと思うし、ひょっとすると岡崎さんはあれこそが描きたかったんじゃないか、とさえ思うんですよね。

山田やこずえみたいに、最初から世界を持って生まれてきた特別な人たちがいて、そうじゃない観音崎とかルミは剥き出しでいることでしか感じることができない。ハルナはちょうどその中間にいるというか。「そのほか大勢」のひとりで、大多数の人に当てはまるキャラクターだと思います。これは監督もおっしゃっていたんですけれど、圧倒的な生命力があって、そこにみんな惹きつけられてしまう。でも、それをハルナ自身は意識してないんですよ。何か惹きつけるもの、というのがたぶん生きている人という感じがするのかなぁという感じはします。
──とりわけ『リバーズ・エッジ』の世界はセックスが関わってきます。といってもロマンティックなそれとは程遠いもので。特にハルナは客観的というか、醒めきっている。
そうですね。「なんか不感症なんだよね」みたいなことを、監督もおっしゃっていましたけれど。そんなハルナが、山田やこずえや観音崎やルミが傷ついていくのを見て、初めて感じるようになる。そして、自分も実は傷ついていることをそこで知る。最終的にはハルナの成長の物語でもあると思います。
──川向こうへの一歩を踏み出す瞬間を描いているわけですからね。いや、川べりからの逃避かも知れないけれど。
ハルナが、山田と心を通わせていって、友情なのか恋愛なのか、それとも人間的なもっと広い意味なのか、男女の垣根を越えてお互いが感じ合えるようになって。そういう関係性を描いたということでも、岡崎先生に影響を受けている方は多いんだろうなと思います。
──最後、山田とユニゾンで詩を読むシーンがありますが、あの作者はサイバーパンクの創始者のひとり、ウィリアム・ギブスンですよね。原作でも引用されてますが、川べりの工場地帯のライトが頻繁に映し出されるのを見ていると、まさに『ブレードランナー』的な光景であり心象風景だなあと思わせます。
あの詩自体、キャラクターそれぞれに当てはまる感じがしていました。私も、これからどんどん大人になっていったらこういう感覚も無くなっていくのかもしれません。世の中がちゃんと分かるようになってくるのも寂しいですね。
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