葵わかな「京ことばに助けられた」

「『笑い』について深く考えるようになった」(葵わかな)
──てんちゃんのモデルとなった吉本せいさんは非常に面白い人で、今の関西の精神的土台を作り上げた張本人の1人ともいえると思うんです。先ほど撮影スタジオを見学させていただいて、いま撮影中のセットも拝見したのですが、せいさんの生涯と重ねあわせて、なるほどこういう展開をしていくんだなあ、と勝手に想像させていただきました(笑)。
「もちろん、せいさんはモデルではあるんですが、今回はオリジナル・ストーリーですし、せいさんの生涯を忠実に追ってるわけではないんです。でも当時のせいさんが作った寄席商売の流れだったりとか、その当時の芸人さんに対する評価だったり、世間の感じ方ということについてはリスペクトしている、と作家の吉田さんもおっしゃっていて」
──セットのディテールの作りこみはちょっとすごいですね。「風鳥亭」の外見や楽屋とか、てんや栞さんの会社事務所の様子などはもちろん、たぶん画面ではそう細かくは読み取れないだろう、壁に貼られたチラシなんかもそりゃあ詳細に作りこまれている。

「小道具ひとつにしても、この時代にこれはあったけどこれは無かったとか、寄席のセットも実際に繁昌亭や、東京にある末廣亭に何回も通って構想を練って作ったというお話を聞きましたし、そこに私も連れて行っていただけました。千日前も行きました。でもぜんぜん面影はなかったですけど・・・(笑)」
──確かにまったく違いますもんね。でも天満天神繁昌亭には行かれたんだ。あの寄席自体は10年ほど前に建てられたんですが、せいさんが最初に買収された寄席もあのほんの近くにあったんですよ。
「天満ですか? 『わろてんか』の『風鳥亭』の、最初の小屋も天満ですね!」
──大阪のお笑いの歴史や、せいさんのエピソードもあちこちに盛り込んだ今回の脚本は、吉田智子さんですね。吉田さんといえば今や三木孝浩映画の脚本家、というイメージがありますが(『僕等がいた』『ホットロード』『アオハライド』『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』)、僕がわかなさんを最初に見たのも三木監督の『陽だまりの彼女』(2013年)だったわけです。
「不思議なご縁で。私は吉田さんの脚本で演らせていただくのは初めてなんです(註:葵の出演した三木作品『陽だまりの彼女』『くちびるに歌を』は、吉田脚本ではない)」
──でも『陽だまり~』でわかなさんが登場した時は衝撃でした。このとんでもない美少女は一体誰?って。男性だけじゃなく、女性も口を揃えて。
「え~(驚)」
──いや、ホントにそうで。でも『わろてんか』の主人公を演じられると知ったとき、あの映画やその後のCMで見る天使的な笑顔が浮かんで、これは素晴らしいと思ったんです。それにしても、今回5週目までを観ても、実に何パターンもの笑顔と笑いのトーンを持っておられる。
「ありがとうございます」
──その時々の、状況に即した笑顔のバリエーションは計算されてのものですか?
「準備して、というよりは『そうなったらいいなぁ』くらいの心持ちで、あまり意識はしてないです。特に今撮影しているところはもう歳を重ねて、藤岡屋にいたころの何も知らない無垢で無邪気な笑顔は少なくなってます。いくつになっても変わらない笑顔というのも魅力だと思うので無くしたくないなと思いつつ。でも経営者になって、守られる側から守る側になって、守るべき人たちを見たときの笑顔や微笑みで違いが出ていれば素敵だなと思っています」
──「笑う」ということが、このドラマの中心的テーマではありますよね。とても笑ってなんていられない状況になってもとりあえず、てんがみんなの笑いを引き出して前進していく。いわば物語の牽引役になっていると思うのですが。例えば京都時代のシーンでお父さんの遠藤憲一さんが蔵で首を吊りそうになるんだけど、いやいや誤解だと。とりあえずそういうことにして、家族全員が笑って気持ちを切り換えるんですけど、でもあれは本当に死のうとしたとしか僕には思えない。
「あれは判らないですよね!」
──吉田脚本は明らかにわざとうやむやにしているわけで、あれはむしろ悲劇的なシーンだと思うんです。
「本当はそうかもしれないですね、状況的にも」
──ただ、これからのてんちゃんの人生、面白いこともいっぱいあるんだろうけれど、わろてなんていられないことも続出するんでしょ?
「そうです。大変です、いろんなことが起きていくので。でも、幸せじゃないときがあるからこそ幸せを感じられるように、笑えない状況があるからこそ笑いの大切さというのも伝えることができると思うんです。私自身もこのドラマを通して『笑い』について深く考えるようになったし、みなさんにとっても考えるきっかけになってくださってたらうれしいです」

──今、わかなさんはほぼずっと大阪にいらっしゃるんですよね。関東人と関西人の笑いに対する感覚の違いをたぶん感じてられると思うんですが。
「現場でも関西の方が多いですが、すごく真摯というか。何か(おかしいことが)あるとそれを全て拾おうとするスタッフさんがいて。関東だったらあっさり終わるような何気ない一言を誰かがスパンって拾ってワーってなって、それをまた誰かが拾ってワーッとなって・・・すごく面白いし、初めて来たときはびっくりしました。笑いが絶えない現場です」
──普通の日常生活のなかでもボケとオチがないと気持ち悪いっていう。そういう土壌は元々あったと思うんですが、関西人みんながそんな体質になっちゃったのも、おそらくてんちゃんと藤吉さん(のモデル)がお笑いの小屋を広げたりラジオやテレビに乗せたりしたせいなんです(笑)。藤吉さん役の松坂桃李くんとのコンビネーションはどうですか?
「本当にほとんどが一緒のシーンで、ほぼ毎日一緒に撮影していて。てんちゃんと藤吉さんの関係も、一緒に暮らしていくうちにお互いに成長したり変化したり。それに伴って2人の関係もだんだん夫婦になっていくように、だいぶ空気感は整ってきたと思います。支え合ってやっと一人前だったのが1人ずつ立てるようになって、2人で歩いて行けるようになったりとか、逆に2人だけじゃなくていろんな人と歩いて行けるようになったりとか、どんどん変わっていくのは演じていても楽しいですし、見ているかたにも『いろいろあったけど幸せそうだな、この2人』『幸せそうだな、この家族』と思っていただけたらうれしいです」
連続テレビ小説『わろてんか』
日程:2017年10月2日(月)〜2018年3月31日(土)
映画『逆光の頃』
2017年7月8日(土)公開(関西は11月4日〜)
監督:小林啓一
出演:高杉真宙、葵わかな、清水尋也、ほか
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
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