廣木隆一監督、故郷・福島を想う「撮れなくてもいい、と」

福島の現在を、憤りを抱えながら逆に淡々と描いた廣木隆一監督
「上辺だけならして、放ったらかしにされている」(廣木監督)
──監督が自主制作でこの映画を作られていたら、それも面白そうですね。
今回の映画より、もっと過激なものになっていたかもしれませんね(笑)。あと震災後の風景といえば、もうひとつ強く心に残ったものがあって。今回の映画化のロケハンで福島県のいわき市に行ったのですが、ただただ平らに地ならしされた土地が荒涼と広がっているんです。
ほとんど無機質な感じさえして、薄ら寒いというか。それを見て、震災に遭われた人の心も、同じようにされているんじゃないかと思ったんです。上辺だけならして、放ったらかしにされている。そのとき、今の福島のことを描かなくてはと強く思いました。
──だから、この映画には、震災後の町や人のことを描いたほかの映画には出てこない、例えば補償金で無為な日々を送っている人とか、放射能がらみの怪しげな壺を売る男とか、仮設住宅でバッシングを受けている原発の従業員とか出てくるわけですね。
すべて、被災地で実際に見聞きしたことです。なかでも印象に残ったのが、放射能汚染によって立ち入り禁止区域にされた場所にお墓があると、そこから骨を移すこともできないという事実でした。新しい場所に新しいお墓を建てても、そこに先祖伝来のお墓に眠る骨を持って行けないんです。劇中でも「そんな新しい墓になんの意味があるんだ」と麿(赤兒)さん扮する老人が怒るシーンがありますが、まったくだと思います。

──あと、観ていて腹立たしかったのが、卒論のためだかなにかで、他府県からやってきて「実際に津波を目の当たりにしてどう思いましたか?」なんて平気で訊く女子大生。あれで自分は、社会的な「いいこと」をしている気になっている。
あのシーンは撮っていて面白かったですね。女子大生役の小篠恵奈が役にハマっていて。質問を受ける側の柄本時生の芝居も良かった。目が点になっててね(笑)。
──今回の『彼女の人生は間違いじゃない』では、主人公・みゆきが、普段は市役所で働いているのだけれど、週末には東京に出てデリヘルで働くという設定になっています。監督の映画『さよなら歌舞伎町』にも、よく似た設定の少女が出てきます。
主人公の妹が週末ごとに上京してAV出演していて、ラブホテルで働く兄と偶然会ってしまうというお話だったんですが、(脚本の)荒井晴彦さんに「この子は東北出身っていうことにしましょうよ」って提案したんです。そのときには、今度のヒロインを同じような設定にしようという考えはありました。

──なぜ、彼女はそんなことをするのか、ですよね。『さよなら歌舞伎町』の少女は経済的な理由ですが、今度のヒロインは違う。答えは映画を観て考えることだと思いますが、ひとつ言えるのは、彼女にはそうしないと収まらない気持ちがあったということですよね。
そうだと思います。彼女は、愚痴まじりに震災のことを口にして働こうとしない父親を「いいかげんにして!」と非難しますが、実は震災にとらわれ、そこから一歩を踏み出せないでいるのは彼女も同じなんです。
──演じた瀧内公美さんは熱演しています。
難しい役なんだけど、一生懸命やってくれました。
──デリヘル従業員役の高良健吾さんを相手に、「どうしても働きたいんです」って怒ったような思いつめた顔で言うシーン、印象深かったです。
あそこは確か一発OKだったように思います。(高良)健吾がうまかったよね。瀧内の芝居をうまく受け止めてくれて。
関連記事
あなたにオススメ
コラボPR
-
大阪アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
NEW 4時間前 -
大阪・関西ランチビュッフェ2025年版、ホテルの食べ放題を満喫
NEW 6時間前 -
京都アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
NEW 6時間前 -
【大阪・関西万博2025】最新情報まとめ!地元編集部が取材してわかった、人気グルメから穴場スポットまで
NEW 7時間前 -
現地取材で発見!知らなかった宇治の魅力【2025年最新版】
NEW 2025.9.14 08:30 -
「何度も見たくなる」ファン続出、宇治×京アニ秘話[PR]
2025.9.12 17:00 -
万博・ポーランド館で人気、現地さながらの体験とは?[PR]
2025.9.12 13:30 -
万博で日本一やかましい祭!?三重の魅力を1日で堪能[PR]
2025.9.12 07:00 -
カード利用で街がもっと便利に。アメックスで繋がる輪[PR]
2025.9.8 07:00 -
大阪スイーツビュッフェ・リスト2025年版、ホテルで甘いものを満喫
2025.9.1 10:00 -
グラングリーン大阪で食べる、買う、楽しむ! 14選[PR]
2025.8.29 10:00 -
神戸アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.8.29 10:00 -
関西人なら違和感に気付く!? 8コの異変探し[PR]
2025.8.28 08:00 -
新しいものを全力で楽しむ!OMOろい旅 in 熊本[PR]
2025.8.25 09:00 -
大阪ビアガーデン2025年版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.8.22 12:00 -
京都・滋賀のおすすめビアガーデン2025年最新版
2025.7.23 13:00 -
奈良のおすすめビアガーデン2025年最新版
2025.7.15 15:00 -
関西のおすすめ音楽フェス・2025年最新版
2025.7.9 09:00 -
【カメリア・マキの魔女占い】2025年下半期の運勢は?
2025.7.1 00:00 -
神戸のおすすめビアガーデン2025年最新版
2025.6.30 11:00 -
京都・貴船&高雄のおすすめ川床、ランチからカフェまで【2025年】
2025.6.19 12:00