森田剛の怪演、吉田恵輔監督「俺はジャニーズでこれをやる」

「生理的にイヤなものをいっぱい入れてやろうと」(吉田監督)
──音楽の使い方も面白いですよね。前半は音楽そのものがないし、居酒屋でもカーステレオでも音が鳴ってるはずなのにノイズみたいに処理されてる。後半になって音楽も大きく出てくるけれど、1曲ごとにトーンが違いますよね。
今回は割とちょこちょこと細かく指示をしましたね。使う楽器はこれとこれで編成してくれとか。最初、野村卓史さんからはデモで、東南アジアというか、ちょっと仏教チックな音楽が上がってきたんですね。その辺りはセックスのカットバックだとかで使って、あとは「ハッハッハ」みたいな、ブレス(呼吸)の感じにしたかったんですよ。切ないところでかかる音楽はいつもの俺のパターンですけど。
──ムロさんが入院して、ちょっとメランコリックになるシーンのことですよね。でもその音楽が鳴ったまま、森田が凶行に及んだあと、空っぽになった銃を放り捨てるというシーンに繋がっている。
あそこで初めて森田の心情を、「あれ、もしかしてこいつ悲しい奴なのかな?」って匂わせたんです。ひとつの音楽のなかにふたりを対峙させることで、これは森田と岡田の物語なんだ、と位置づけたいなと思いました。

──森田剛さんが演じるサイコパスは、原作の方がむしろ快楽殺人の匂いが強いですよね?
ええ。それでしか性的な欲求を感じないみたいな。それは実事件で言うならば、酒鬼薔薇聖人なんですよね。漫画ではサイコパスの葛藤を丁寧に描いて、そこがテーマではあるんですが、下手に描くと中二病と思われる可能性が高いかと思いまして。でも、我々でも例えばなにかにすごく絶望して、どうでもいいやとなったとき、逆になんでもできちゃう気がするじゃないですか。
そうなると、目の前の欲望というのは、ただの動物的な欲でしかない。そう考えると、俺もやっちゃいそうだなと。その感覚の方がリアルで、怖いと思ったんですよ。何するか分からないのって怖いですよね? だから、そういうところで性的欲求感覚に従わせようと思って。
──でも監督らしく意地悪なのが、レイプしようとした女性が生理だったっていう。
レイプされる映画いっぱい観たことあるんですけど、生理だったためしがないんですね。だけど、月に1回来るものだから、誰か生理中の奴いるだろうとずっと違和感を覚えていたんですよ。だから、俺の映画くらいは生理中にしよう、みたいな感じで。なんか今回は自分で感じる生理的にイヤなものをいっぱい入れてやろうと思って。
──でもそれって、監督にしてみりゃいつものことじゃないですか(笑)。
まあ、そうなんですけれど(笑)。『銀の匙』があまりにもピュア過ぎたので、ちょっとやそっとじゃ物足りなくなって。

──あのピュアさは突き抜けていて、それはそれですごく良かったんですけどね。でも、そういうところも中二病的なところに通じると思うし、岡田(濱田岳)や安藤(ムロツヨシ)も全然成長してない。中学や高校のトラウマが元凶になって起こる惨劇というのも、まんざらリアリティがないわけじゃないという。
そうですね。でもなんか俺自身も、自分の思ってた40オーバー、俺も実際に40歳を超えて、こんなだなんて夢にも思わなかったですけど(笑)。
──私も50歳を超えてそう思います(笑)。
あれ、こんなにもまだ子どもなんだって。結構自分のなかで衝撃というか。小学生くらいの時は23、4のお兄さんお姉さんって、すっげえ大人に見えていたのに。
──だって俳優の顔も違いますもん、昭和と平成では。だって『太陽にほえろ!』のボス役の石原裕次郎さんなんて、当時まだ40前だから(笑)。
なんかちょっとね。最近の日本人は幼稚化してきたなという感じはしていますけど、いろんな意味で。僕も自分のことすごく幼稚だなと思いますもん。だから安藤さんみたく、恋をしたいという感覚は常に持ってますよ。なんかキラキラした感じ。俺もいい年なのに、女の子と手をキュッと掴んでドキッとしそうな自分がいますもん、まだ。

吉田恵輔(よしだ・けいすけ)
1975年5月5日生まれ、埼玉県出身。映画監督、脚本家。東京ビジュアルアーツ在学中から自主映画を制作、同時に憧れでもあった塚本晋也監督作品で照明などを担当。2007年、『机のなかみ』で映画監督デビュー。2008年には小説『純喫茶磯辺』を発表し、同年自ら映画化。2013年には『ばしゃ馬さんとビッグマウス』と『麦子さんと』と立て続けにオリジナル作品を発表。2014年には初の原作モノ『銀の匙 Silver Spoon』を手掛けた。
映画『ヒメアノ〜ル』
2016年5月28日(土)公開
監督:吉田恵輔
出演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ、ほか
配給:日活 R15+
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