映画「杉原千畝」、もうひとつの顔

チェリン・グラック監督
──今回の『杉原千畝 スギハラチウネ』の企画はどういったところからきたのですか?
『太平洋の奇跡・・・』を製作しているときから、次はこれをやりたいというのがプロデューサーの頭の中にはあったようです。主演は『太平洋の奇跡・・・』でも主役の1人を演じていた唐沢寿明さんで。僕とのつながりは唐沢さんですね。企画が進んだとき、唐沢さんが、監督はチェリンでいこうと言ってくれたんです。いつか一緒にやろうと言っていたのを覚えていてくれたんですね。
──監督ご自身は、杉原千畝という人物を描くことはどう思われました?
難しいなと思いました。杉原千畝については以前から知ってはいたのですが、ナチから逃れようとする人たちにヴィザを発給して多くの命を救ったというだけでは、もはや知られた話でもあるし、それだけではあまり面白くないなと思ったんです。実際に寸暇を惜しんで発給したようですが、結局その期間はひと月あまりのことですし、それで映画になるのかなと。また、杉原は自分が英雄になろうとヴィザを発給したわけではないですから、それを単純に美談として描くのも違うのではないかと思いました。
──確かにそうですね。
それに『シンドラーのリスト』(1993年)によって、オスカー・シンドラーのことが知られるようになると、実は『日本のシンドラー』だけじゃなくて、『中国のシンドラー』もいれば『マルセイユのシンドラー』みたいな人も現れてきたりするんですよ(笑)。
──なるほど、そこで杉原のこれまでに知られていない一面を描こうとされたわけですね。
外交官というのはもともとそのような仕事でもあるのですが、杉原という人は諜報員、スパイとしてかなり優秀だったのではと思えてきたんです。そこを足掛りにして、あのとき杉原はいったい何を観て、何を考えていたのか探ることにしたんです。
──そういう描き方にして、唐沢さんが杉原を演じる意味がさらに深まったように思います。ポーランド・ロケによる当時の空気感の再現もすばらしいのですが、日本とポーランドの俳優陣のキャスティングもよかったですね。
これはほんとうに恵まれたと思っています。杉原の片腕的存在の男を演じたボリス・シッツはポーランドを代表する人気俳優だし、アンジェイ・ワイダ監督の作品でヒロインを演じたアグニェシュカ・グロホフスカや、クシシュトフ・キエシロフスキ監督作品の常連だったズビグニェフ・ザマホフスキなど錚々たる顔ぶれを集めることが出来ました。日本側も唐沢さんや小雪さんはもちろんのこと、『サイドウェイズ』でご一緒した小日向文世さんにもぜひ出てもらいたかったんです。
──戦時下の駐ドイツ日本大使だった大島浩役ですね。
僕は小日向さんに軍服を着てもらいたかったんです。大島は外交官だから、軍服を着る機会は少なかっただろうけど、軍人でもあったので、ヒトラーに会いに行ったときなどはきっと軍服だろうと。映画のなかで、杉原とともに車から軍服で降りてくるシーンは、実はヒトラーに会った後だったんだという、僕らだけの勝手な設定です(笑)。
──雰囲気出てましたよ(笑)。ただ、怖いのは、映画の杉原は情報分析に優れた人物で、世界大戦の勃発や日本が負けることまでを予見し、それを避ける努力を必死でするけれど結局流れを止められません。それがなんだか現在の状況と似ている気がすることです。
この映画は先の戦争の戦後70年記念作品として製作されたわけですが、後の世から見たら、次の戦争の戦前ウン年前の作品になってしまったなんて、そんなことは絶対にあってはいけません。あまりいいことではないけれど、杉原のような人物がいまこそ必要な時代なのかもしれません。
──このあと撮ってみたい題材とかありますか?
やはり、僕にしかできないものがやりたいですね。僕は日本とアメリカの双方が絡むストーリーが好きで、これまでにアメリカで日本映画『サイドウェイズ』を撮り、今回の作品はポーランドで撮った日本映画だったので、今度はアメリカ映画を日本で撮りたいですね(笑)。というか、日本とアメリカの関係を題材にした物語を日本で撮りたい。例えば、日本が初めて近代の西洋文化に触れた幕末から明治維新を舞台にしたものとか。あるいはテレビの連続ドラマで、日本とアメリカを1話ずつ行き来するストーリーとか、やってみたいですね。主演はもう一度、唐沢さんで。
取材・文/春岡勇二
映画『杉原千畝 スギハラチウネ』
12月5日(土)公開
監督:チェリン・グラック
出演:唐沢寿明、小雪、ボリス・シッツ、小日向文世、ほか
配給:東宝
2時間19分
TOHOシネマズ梅田ほかで上映
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