ポップで過激、本谷有希子のあたまの中

「演劇は『作りたい』より、お客さんを意識したい」(本谷有希子)
──その時期の鬱々とした気持ちが、作品の原動力ですか?
うーん。正直、なぜこんな物語を書くのか自分のなかでも説明がついていない(笑)。ダークな作品を書くにふわさしい過去や経験もなくて。なのに、いったん筆に乗せると徹底してこだわらないと気がすまないタイプなので、どんどん突き詰めていくと、たまたまこういう形になる。自分の内側からくる衝動としては、すごくシンプルに「現実を見たい」ということなんです。
──現実を見たい?
テレビドラマも映画もハッピーエンドで溢れているけど、それだと納得できない自分がいるんです。絶対現実には酸いも甘いもあって、逆にもっと魅力的だろうと。キレイじゃないものが知りたい、それを教えてくれるものがあれば良いなという気持ちが、作品に向かわせるのかも。

──本谷作品には熱量を感じさせる舞台が多いですが、作業中は身を削るような感覚ですか?
自分では全く意識はできないですけど。第三者が見ると、とってものめり込んでいるらしい。そう聞くと念を入れるような重苦しいイメージがあるけど全く逆かな。自分の中のものを全部捨てていくとある瞬間、自分以上の存在が書いてる! と思える瞬間があって。後から読んでも、とっても面白い。頭で考えてない、身体で書いている感じ。とってもニュートラルなんですよね。過去にはフルマラソンを走りきるような感覚もあったけど、最近は書くことで身軽になることが多くなったかな。
──それでも、作品と見た目のギャップが凄いと言われませんか?
多分、それと同じ意味だと思うのですが。先日書店にサイン本を作りにいったら店員さんに「本谷さんが何でこんな作品を書くのか、訳がわからない!」と言われました(笑)。濃くて激しい女を書いてた初期のパブリックイメージが先行しているのかな? 新刊とかは割とニュートラルな作風に変わってきているので。最近は濃さみたいなものを、だんだん手放せてきていますね。

──11月に大阪で再演される舞台『遭難、』は初期の代表作ですね。
2011年の『クレイジーハニー』(出演:長澤まさみ、リリー・フランキー、ほか)のあと、ちょっとシンプルじゃなくなってきたなと思ったんです。このままだと難解な芝居を作り始めそうで・・・。高いチケット代を貰って本当に見せたいか。突き詰めた話は1300円の小説の方がいいんじゃないかとか、いろいろ考えて。演劇は作りたいよりは観てもらいたい、お客さんを意識したものにしたいので。劇団の転機として少し硬派なメンバーと私自身、初期の感覚を思い出したいなと。わりと、どなたでも分かりやすく、シンプルな作品だと思います。
──悲惨なほど可笑しくなってくる、本谷流シリアスコメディの決定版です。
主人公の女教師・里見がトラウマを解消することで、生きて来た道を見失い「遭難」する話。初演では残酷なセリフになるほど笑いが起こる、笑っていいかどうか、ふわふわした浮遊感が面白い。自分を探すことは多いけど手放す、見失う体験は得がたいもの。この2時間は里見先生と一緒に、見失う快感を味わって欲しいですね。
本谷有希子(もとや・ゆきこ)
1979年、石川県生まれ。2000年に「劇団、本谷有希子」旗揚げし、主宰として作・演出を手掛けるようになる。2006年『遭難、』で第10回鶴屋南北戯曲賞を受賞。2008年『幸せ最高ありがとうマジで!』で第53回岸田國士戯曲賞を受賞。小説家としても活動し映画化もされた「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」が三島由紀夫賞候補、「生きているだけで、愛。」は同賞および芥川賞候補となる。
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