聖武天皇は派手好みだった!? 正倉院宝物の再現模造で解明

2020.8.16 10:35

螺鈿(らでん)や玳瑁(たいまい/ウミガメの甲羅)の装飾が華やかな再現模造『螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんのごげんびわ)』裏面

(写真11枚)

「奈良国立博物館」(奈良県奈良市)で9月6日まで開催中の御大典記念特別展『よみがえる正倉院宝物 再現模造にみる天平の技』。

同展では、奈良・正倉院に伝わる正倉院宝物(しょうそういんほうもつ)を、同じ材料・構造・技法で限りなく忠実に制作した「再現模造」を紹介する。

そもそも正倉院宝物とは、聖武天皇(701~756年)の遺愛品や大仏開眼会(だいぶつかいげんえ)などで使用された品々のこと。約1300年もの間、守り伝えられてきたことで奇跡とも言われている。明治期の大規模修理に伴い本格的に始まった模造制作。昭和47年以降は、宮内庁正倉院事務所が伝統工芸技術者と協働して、危機管理や技術継承を目的に、限りなく原宝物に近い「再現模造」を制作している。

再現模造の『酔胡王面(すいこおうめん)』。酔っぱらった胡人(西方の民族)の王の伎楽面。原宝物ではほとんど失われてしまった髭や宝冠の彩色など、奈良時代の様子が分かる

原宝物との違いや魅力はどこにあるのか、毎年秋に『正倉院展』をおこなう同博物館の中川あや学芸員に訊いた。

──オリジナルの正倉院宝物を観ることができる『正倉院展』と「再現模造」の本展とでは、どんな楽しみ方の違いがあるのでしょう?

「正倉院展では目玉となる代表的な宝物は数点の出陳ですが、それとは違い、本展ではすべてが名品(代表的な宝物)という点です。また、再現模造は、奈良時代の色彩感覚が分かります。当時、聖武天皇はこうやって見ていたんだ!という追体験ができるんです」

──確かに。色鮮やかな宝物からは、聖武天皇は派手好みだったのかな?と思いますね。

「そうですね。聖武天皇を含め、当時の宮中の人々が好んだエキゾチックな文様やデザインが、いわゆる今の日本人が好む『わび・さび』とは違うので、派手好みだったと言えるかもしれませんね」

──わび・さびの文化やシンプルさとは一線を画している宝物(再現模造)が多いですね!

ミュージアムショップで人気の「模造 螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)エコバッグ&ポーチ」2700円(税別)と6種類のアメが入った再現模造「螺鈿箱(らでんのはこ)」

「そうなんです。実際、本展のミュージアムショップで販売されているカラフルな『模造 螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)エコバッグ&ポーチ』の売れ行きが好調なんです。再現模造『琵琶袋(びわのふくろ/四弦の琵琶を収める錦の袋)』に見られる自然の染料を使用した緑の鮮やかな色合いやエキゾチックな文様は、今の日本人にもウケているんだなと分かります」

ミュージアムショップで売れ行き絶好調というエコバッグの柄になったのは、再現模造『琵琶袋』(びわのふくろ)

──ちなみに従来の『正倉院展』と大きく違う点はありますか?

「(本展は)制作過程にもフィーチャーしているので、どうやって造ったんや? 約1300年前の匠はすごいな! というのが分かります。秋の正倉院展ではどう使われていたか、どういう役割のものだったのかに話が及びやすいですが、当時の作り手に焦点を当て、さらに、当時の作り手と現代の作り手、1300年の時を超えた匠達の共演を観ることができます」

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