小吹隆文撰・週末アート、8/10〜

2016.8.10 20:00
(写真3枚)

「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、文人の水滴、日本近代洋画の巨匠、世界の巨匠の青春時代の作品展を紹介。

 

小さくともキラリと光る、陶芸の精華
『朝鮮時代の水滴−文人の世界に遊ぶ』
@大阪市立東洋陶磁美術館(大阪市北区)

水滴とは硯に水を注ぐ道具で、筆、墨、硯、紙の文房四宝と共に文人の書斎を飾ってきました。朝鮮半島では、朝鮮時代(1392〜1910)の18世紀に文人趣味が流行し、19世紀には数多くの水滴が作られています。

青花鉄砂 葡萄山水文 八角形水滴「葵卯六月日分院」銘 朝鮮時代・1783年 写真/六田和弘 大阪市立東洋陶磁美術館蔵
青花鉄砂 葡萄山水文 八角形水滴「葵卯六月日分院」銘 朝鮮時代・1783年 写真/六田和弘 大阪市立東洋陶磁美術館蔵

動物、果実、家形、山形などの形に、様々な文様や銘文を施したそれらには、高潔、清貧、子孫繁栄、富貴長命といった文人の理想・願望が込められているのです。本展では、「大阪市立東洋陶磁美術館」の館蔵品から厳選した水滴126点と、筆筒、紙筒、硯などの文房具、燭台、煙管などにより、当時の文人たちの精神世界を紹介。また、日本人が水滴に注いだ情熱にも触れています。同館で水滴展が行われるのは約30年ぶりであり、その意味でも貴重な機会です。

2016年8月13日(土)〜11月27日(日)
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これぞ正しく日本近代洋画の王道
『日本近代洋画の巨匠 和田英作展』
@神戸市立小磯記念美術館(神戸市東灘区)

農作業を終えた一家が、夕暮れの川のほとりでたたずむ様子を描いた「渡頭の夕暮」や、日本の歴史に題材をとった大作、数々の肖像画、薔薇を描いた静物画、富士山を描いた風景画などで知られる日本近代洋画の巨匠、和田英作(1874〜1959)。

和田英作《渡頭の夕暮》1897(明治30)年 東京藝術大学蔵
和田英作《渡頭の夕暮》1897(明治30)年 東京藝術大学蔵

彼は鹿児島県出身で、同郷の黒田清輝の画塾で学んだ後、東京美術学校の助教授に招かれるも、一度同校に入り直し、さらに卒業後4年間のヨーロッパ留学を経て教授に就任しました。その後、校長を務めるなど、日本洋画界のメインストリームを歩んだ巨匠です。初期から晩年までの油彩画、素描、下絵など約80点で、その端正な絵画世界をお楽しみください。具象絵画が好きな人なら、堪能できること請け合いです。

2016年8月13日(土)〜10月10日(祝・月)
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覗いてみよう、巨匠たちの思春期を
『世界の巨匠たちが子どもだったころ』
@美術館「えき」KYOTO(京都市下京区)

20世紀美術の巨匠ピカソが、子どもの頃から大人顔負けの絵を描いていたのは有名な話です。ピカソに限らず、有名な画家たちは10代の頃にどんな絵を描いていたのか、誰もが気になるところでしょう。そんな疑問に答えてくれるユニークな展覧会が京都で行われます。

エドヴァルド・ムンク《雪景色の中の少年》1881年 18歳
エドヴァルド・ムンク《雪景色の中の少年》1881年 18歳

この展覧会では、1985年に子どものための本格的な美術館として開館した、「おかざき世界子ども美術博物館」(愛知県岡崎市)の所蔵品より、モネ、ムンク、ロートレック、ピカソ、クレー、岸田劉生、山下清、田中一光、横尾忠則、平山郁夫など、 国内外の73作家が10代の頃に描いた作品118点を展覧。多感な時期の彼らが残した作品を通して、作家の努力や情熱、芸術への真っすぐな思いを感じ取ることができます。

2016年8月11日(祝・木)〜9月11日(日)
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