戦後一大旋風となった美術展、京都で

2016.8.11 09:00

ジャン・フォートリエ、サム・フランシス、ジョルジュ・マチューなど、ミシェル・タピエが紹介した海外作家たちの作品

(写真3枚)

1950年代に、日本画、陶芸、生け花、漆芸、染織などの伝統的なジャンルも巻き込んで、美術界に爆発的なブームを巻き起こしたのが「アンフォルメル(未定形なるもの)」。その現象を約100点の作品で振り返り、日本の戦後美術に「アンフォルメル」が果たした役割を考えるのが本展です。

「アンフォルメル(未定形なるもの)」という欧米の最新美術を日本にもたらしたのは、1956(昭和31)年に来日した美術評論家のミシェル・タピエ。その特徴は、作者の行為(アクション)の痕跡が露わで、鮮烈な色彩を持ち、素材の生々しい物質感を強調していることです。日本の美術家たちはアンフォルメルに大きな衝撃を受けました。

岡本太郎《燃える人》(向かって右)、森野泰明《WORK60-13》(手前の陶立体)など
岡本太郎《燃える人》(向かって右)、森野泰明《WORK60-13》(手前の陶立体)など

展覧会は、タピエが紹介した海外の作家から始まり、アンフォルメルに影響を受けた日本の作家へと移ります。吉原治良、白髪一雄、元永定正など関西ではお馴染みの「具体美術」の作家たち、東京で活躍した岡本太郎、篠原有司男などがいる一方、富本憲吉、熊倉順吉、八木一夫などの陶芸家、井上有一、森田子龍などの書家、堂本尚郎などの日本画家、番浦省吾などの漆芸家がラインアップされており、その多様性に改めて驚かされます。

嶋本昭三《作品》(中央)、今井俊満《WORK1958》(向かって右)など
嶋本昭三《作品》(中央)、今井俊満《WORK1958》(向かって右)など

1956(昭和31)年といえば、敗戦から約10年しか経っていません。日本はまだ貧しかったものの、高度経済成長が始まろうとしていました。また、戦争のため海外の情報が長らく滞り、多くの人が最新の文化に飢えていました。そこに火をつけたのが「アンフォルメル」だったということです。あらゆる分野で高度化と細分化が進んだ今の日本で、このように全ジャンル的なブームが起こる可能性はほとんどないでしょう。みんなで熱く燃え上がることができた時代に、ノスタルジーとうらやましさを覚えました。

文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『あの時みんな熱かった! アンフォルメルと日本の美術』

期間:2016年7月29日(金)〜9月11日(日)
時間:9:30〜17:00(金曜〜20:00) ※入館は閉館30分前まで 月曜休
会場:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)
料金:一般900円、大学生500円 ※高校生及び18歳未満、心身に障がいのある方と付添者1名は無料(要証明)
電話:075-761-4111
※会期中に関連イベントあり。詳細は公式サイトにて

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