小吹隆文撰・おでかけアート、6/15〜

2016.6.15 22:00

©HARUTO MAEDA

(写真3枚)

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「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、個性ある写真の展覧会を紹介します。

 

激動の南アフリカ史、もう一つの側面
『前田春人写真展「Quiet Life」』
@Kobe819ギャラリー

神戸出身、明石在住の写真家・前田春人は、1992年〜1994年の3年間、報道写真家として南アフリカに滞在しました。当時、同国では史上初の全人種参加の総選挙が行われ、ネルソン・マンデラ議長が大統領に就任。アパルトヘイト政策は廃止され、新しい時代が幕を開けたのです。前田は取材の合間に、ある小さな村に赴き、そこでの静かな日常生活を撮影しました。それが今回展示される「Quiet Life」です。

この村にはアパルトヘイトで故郷を追われた人々が住んでいました。彼らの貧しくも牧歌的な生活を見ると、住む場所や文化は違っても人間の生活風景は普遍だと分かります。同時に、非人道的な政策で苦しんできた人々の歴史も写し出されているのです。

2016年6月18日(土)〜6月26日(日)
展覧会情報はこちら

 

開拓生活が育んだ人間と自然への賛歌
『大原治雄写真展〜ブラジルの光、家族の風景〜』
@伊丹市立美術館

ブラジルではすでに高く評価されているのに、日本ではまだ知られていない写真家・大原治雄(1909〜1999)を紹介する大規模展。

「朝の雲」1952年、パラナ州テラ・ボア ©Haruo Ohara/ Instituto Moreira Salles Collections
「朝の雲」1952年、パラナ州テラ・ボア ©Haruo Ohara/ Instituto Moreira Salles Collections

高知県出身の大原は、17歳(1927年)で神戸港からブラジルに移住、南部パラナ州で農園を経営しながら、アマチュア写真家として写真を撮り続けました。新天地で過酷な開拓生活を送りながら撮影をしてきた大原ですが、作品は嘆きや告発調のものはなく、日常のささやかな喜び、自然の美しさ、人間賛歌が満ちています。作品を見た人はきっと、明日を生きる希望を抱くでしょう。ブラジルのモレイラ・サーレス財団が所蔵する大原コレクションから、約180点のモノクロ作品が並ぶ本展で、この類まれな写真家を知ってください。

2016年6月18日(土)〜7月18日(祝・月)
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気鋭写真家が奈良で大規模個展を開催
『浅田政志展「ほぼ家族。」』
@入江泰吉記念奈良市写真美術館

自分の家族をモデルに、消防士やロックバンドなど様々なシチュエーションの写真を撮影、それらをまとめた写真集『浅田家』で2009年の木村伊兵衛写真賞を受賞した浅田政志。

『浅田家』より
『浅田家』より

彼はその後、兄の結婚と子どもの誕生を期に制作した『NEW LIFE』、東日本大震災で被災した写真・アルバムの救済現場を取材した『アルバムのちから』、同じく震災からの復興に汗を流す人々を捉えた『みんなで南三陸』などの作品を次々に発表しています。「家族の愛」「地域の絆」をテーマに精力的な活動を続ける浅田政志の仕事を概観する、待望の大規模展が実現しました。小難しい理屈は一切抜き。一目で笑って感動できるそれらの作品には、写真の根源的な力が詰まっています。

2016年6月18日(土)〜8月4日(木)
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