いい人がバレた銭太郎、放っておくほど輝く!?前原瑞樹の「人間力」のなせる技

7時間前

『ばけばけ』第26回より。毎月一度の恒例行事となっている銭太郎(前原瑞樹)による借金取り(C)NHK

(写真3枚)

今週の連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合ほか)は第11週「ガンバレ、オジョウサマ。」が放送中。ヘブン(トミー・バストウ)は松江に来て初めてのお正月を迎え、初めて目にする日本の新年のしきたりに心が躍っている。

しかし、松江中学の英語教師として1年の契約で赴任しているヘブンは、この年には松江を去ることになっている。そのことにトキ(髙石あかり)と錦織(吉沢亮)は少なからず寂しさを感じ、複雑な思いのようだ。

■「本当はいい人」が「全バレ」してしまった銭太郎

一方松野家では、ヘブンが松江を去るとなるとトキの女中としての収入がなくなってしまうと、戦々恐々だ。そんななか、月に一度の恒例行事、銭太郎(前原瑞樹)が借金取り立にやってくる。

父・善太郎(岩谷健司)の後を継いで第26回で初登場したときから、借金の取り立てのため松野家に入る前に深呼吸をしたりして、悪い人でないことは薄々わかっていた銭太郎。登場を重ねるたびに「根はいい人」であることが徐々に“バレて”いった。

『ばけばけ』第26回より。(C)NHK
『ばけばけ』第26回より。松野家にいるのが楽しくなってしまい、油を売る銭太郎(前原瑞樹)(C)NHK

さらに、トキがヘブンの女中として働くようになってからは松野家が毎月きちんと10円を返済していることに、拍子抜けした銭太郎。第46回では、「こげにようけ返されたら商売上がったりだがね!」と苛立った挙句、寒くなってきたからと、松野家の人たちの身体まで気遣う始末。

12月9日放送・第52回の銭太郎は松野家の台所事情が気になって仕方ない様子で「長い時間をかけてちびちび返せ」と言い、「いつまでも松野家との付き合いを続けたい」という気持ちが抑えきれなくなっていた。

とうとう「いい人」であることを隠さなくなった銭太郎のキャラクター造形と、演じる前原瑞樹の俳優としての魅力について、あらためて制作統括の橋爪國臣さんに聞いた。

■ 人は誰しも悪い人とは言えないし、いい人でもない

橋爪さんは、「前原さんががキャスティングされた時点で、のちのち銭太郎がいい人であるとわかるのがバレバレですよね(笑)」と語り、こう続ける。

「松野家を演じる皆さん揃って、さすが演技巧者。銭太郎初登場シーンのリハーサルの時点から、『前原さんのお芝居は放っておけばいいんだ』と一瞬で察知していました。もちろん『芝居上で』ということですが、銭太郎の役どころは、放置されてこそ輝くといいますか。前原さんもそれを受けて一層素晴らしいお芝居をされていました」。

『ばけばけ』第33回より。(C)NHK
『ばけばけ』第33回より。トキが返済した大金を不思議に思う借金取り・銭太郎(前原瑞樹)(C)NHK

さらに、「どんなに悪いふりをしても悪い人に見えないって、すごいことですよね。それも前原さんの『人間力』のなせる技だと思います。父で先代の善太郎の志を引き継いで、結局、銭太郎も悪人に徹することができない。銭太郎は、ふじきみつ彦さんの書かれる『人は誰しも一概に悪い人とは言えないし、いい人でもない』という脚本を体現しているキャラクターのひとり。前原さんはそれを余すところなく表現してくれる役者さんだと思います」と絶賛した。

また今後、銭太郎に新たな展開があるのかとたずねると、「銭太郎も『ばけばけ』の大事なメインキャラクターのひとりですので、これからも出てきますし、最後にはちゃんと銭太郎の物語が、あるところに帰結します。楽しみにしていてください」とコメントした。

先代の善太郎から銭太郎へと受け継がれた「悪人になりきれない借金取り」。銭太郎の今後の物語からも目が離せない。

取材・文/佐野華英

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