生田斗真がまた口出し!「尊号」にこだわる理由は?裏に思惑が…【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。「尊号」について老中・松平定信を説得する一橋治済(生田斗真)(C)NHK
江戸時代のポップカルチャーを牽引した天才プロデューサー・蔦屋重三郎の劇的な人生を、横浜流星主演で描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。
10月26日の第41回「歌麿筆美人大首絵」では、松平定信が権力を維持するために、思い切った行動を起こすことに。その背景には、幕府と朝廷の間で根強く残るいざこざや、いよいよ油断できなくなった対外情勢などの事情も絡んでいた。
■ 松平定信が辞職を願い出るが…第41回あらすじ
重三郎の師となっていた書物問屋・須原屋市兵衛(里見浩太朗)は、現在の海外情勢を記した本を販売した罪で身上半減となり、それを機に引退する。この処分を決めた老中・松平定信(井上祐貴)に対して、幕府内でも反発が広がるなか、定信は将軍・徳川家斉(城桧吏)に、複数の役目の辞任を願い出る。しかし尾張藩主・徳川宗睦(榎木孝明)は定信なくして今の時局は乗り切れないと反対し、奥勤めのみ辞することになった。

しかしこれは、定信がまだ政をつづけるために宗睦と仕組んだ狂言だった。依然として改革を進める定信は、「尊号一件」(光格天皇が父・閑院宮典仁親王に太上天皇の尊号を送ろうとしたこと)について勝手に承諾の返事をした家斉の父・一橋治済(生田斗真)を諌めるとともに、尊号を取りやめるよう、朝廷に対して長文をしたためた。それと同じ頃、オロシャ(ロシア)の船が日本にやって来たという知らせが、定信のもとに届く。
■ 現代に伝わる「傑作」誕生、蔦重のプロモーションは
今回ついに蔦屋から売り出された、喜多川歌麿(染谷将太)の「婦人相学十躰」。この絵は実物が展示される機会も多いので、実際に見たことがある人も結構いるんじゃないだろうか。
この第41回では、演出家や撮影スタッフが雲母摺の効果をがんばって映像で表現しようとしていたのに感心したのだけど、実物は本当に上品な艶があるだけでなく、描かれた女性がわずかに浮き上がって見えるという、視覚の効果に驚かされる傑作だ。

実際このアイディアは重三郎か歌麿か、あるいは摺師から出てきたのか。それは定かではないけれど、『べらぼう』ではやはり主役の重三郎の発明ということに。さらに発売するときに有名な人相見を招へいして、相学に興味がある人が立ち寄るようにした。
このプロモーション方法が実際にあったかどうかは不明(多分ドラマオリジナル)だけど、重三郎だったらやりかねないというのは、10ヶ月間彼に付き合ってきた視聴者なら考えることだろう。
■ 「知らないことは怖いこと」須原屋が処分…
こうして重三郎の逆襲の序幕が上がったのと同時に、冒頭では須原屋市兵衛の身上半減(畳を半分持っていったりはされなかった模様)からの引退宣言、という悲しい出来事もあった。
須原屋の処分対象となった林子平『三国通覧図説』は、朝鮮・琉球(沖縄)・蝦夷(北海道)の三国の状況を記した本。さらに会話に出てきた『海国兵談』は、ロシアが日本に攻めてくる可能性を説き、幕府の海防政策の問題点を指摘する画期的な本だった。

ただし、ドラマでも幾度か語られた通り、当時政治を直接的に批判・批評する本を刊行するのはご法度のため、『海国兵談』は当然発禁。さらに、普通の学術書的な『三国通覧図説』まで発禁となるのは、市兵衛が指摘した通り、一般庶民に海外の事情を知られれば、幕府にとっていろいろ都合が悪くなるのが理由だろう。
市兵衛の「知らねえってことはな、怖えことなんだよ。物事知らねえとな、知ってるやつにいいようにされちまう」という言葉は、まがうことなくお上の意図するところだと思われる。

政を行っていたり、その近くにいる人たちだけがすべての知識と情報を握り、一般市民はなにも知らないまま、気づいたら大きな変化に巻き込まれる・・・という状況は、まさにここから数十年後の幕末で起こるわけだし、太平洋戦争時にも同じことが起こった。
『べらぼう』ではしばしば、江戸時代の出来事や考え方が、現代でも繰り返されていることに驚かされてきたが、これもまた油断したら、いずれ「繰り返される」歴史となるかも。しっかりと、胸に刻んでおきたい。
■ 「尊号一件」はなぜ問題に?裏に一橋治済の思惑
さてこんな風に、国防に対して不穏な空気がただよいはじめた頃に、幕府・・・というか松平定信はなにをしていたかというと、仕事辞める辞める詐欺を働いたり(徳川家斉の顔が明らかにウキウキなのが笑った)「尊号一件」について朝廷にいろいろ脅しをかけるなど、完全に内輪の問題ばかり。
これが田沼意次(渡辺謙)だったら、林子平を罰するどころか、海防対策のアドバイザーに取り立てていただろうに。子平、あと10年早く本を書いてたらよかった。

しかし、この「尊号一件」のなにがややこしかったかというと、儒学における「忠(君臣の信頼関係や社会秩序)」と「孝(親子の道徳関係)」は、どちらを優先するべきか? という、昔から議論の的となった問題に大きく抵触するからだ。定信が推奨する儒学の一派「朱子学」は、特に「忠」を重視すると言われている。「父親の地位を上げたい」という「孝」の気持ちより、古来からつづく朝廷の基本ルールと秩序を遵守させる方を選んだわけだ。

それに対して「孝の方を優先したらいいじゃない!」と、勝手に朝廷に許可を入れたのが、キングメーカー・一橋治済だ。あのキャラクターだから、深く考えずに返事したんだろうと思われそうだけど、治済も帝の父・閑院宮と同じような立場。
自分の息子が前将軍・家治(眞島秀和)の養子となり、将軍の実父という地位を手に入れたけど、そこにはなんの権威もない。ただし閑院宮が「太上天皇」という帝同等の立場を手に入れることができたなら、治済も将軍同様の立場である「大御所」になれる可能性が浮上する。

治済はその願望をあからさまには口にしないけど、定信はその狙いをきちんと察して、この件に強硬に反対しているわけだ。ただでさえ、政治素人のくせにちょこちょこ口をはさんでくるウザい存在なのに、大御所になったら定信以上の力を持つことになってしまう。
日本が内外ともに大変な状況になっているなか、きちんと政をわかっている人間が幕府の舵を取れるようにしないといけない。徳川宗睦までもが、接待で質素すぎる御膳(さすが倹約の鬼)を出されたにも関わらず「お役目辞退」の茶番に参加したのは、それが大きな理由でもある。
そんな折りにタイミング良く(?)飛び込んできたのが、オロシャ船到来のお知らせ。明らかな一大事ではあるけど、定信にとっては絶好の機会かもしれない。
国難とも言うべきこの事態を上手く収めれば、改めて自分の実力を幕府内に示すことができるし、治済もこんなゴタゴタの最中には、ひとまず傍観者の立場をキープすると思われるからだ。まずはオロシャがなんの目的でやってきたのか、次回の行方を見届けよう。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。11月2日の第42回「招かれざる客」では、重三郎の妻・てい(橋本愛)が懐妊するという嬉しい知らせの一方、歌麿に鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)の息子で西村屋の跡継ぎ・万次郎(中村莟玉)が接近するところが描かれる。
文/吉永美和子
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