万博人気の傑作が再び…イタリア館の至宝展、大阪を意識した「日本初公開作品」とは

5時間前

『大阪・関西万博』イタリア館で話題となった『ファルネーゼのアトラス』( Lmaga.jp撮影)

(写真13枚)

「万博の感動、再び!」を掲げ、『大阪・関西万博』で人気を博したイタリアの傑作が展示される特別展『天空のアトラス イタリア館の至宝』が、「大阪市立美術館」(大阪市天王寺区)で開催中。本展で日本初公開となるレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿も加わり、内覧会ではより作品の魅力に迫る「見どころ」が解説された。

■ 会期途中から、追加作品も展示予定

特別展『天空のアトラス イタリア館の至宝』開催地である「大阪市立美術館」( Lmaga.jp撮影)

国宝級の「実物」美術品が並び、万博のなかでもトップ人気を誇ったイタリア館。「閉幕後も日本のみなさんに見てほしい」との同館からの提案を受け、同展が開催されることに。10月18日から開始された事前予約ですでに全日程分が完売、チケット販売を中止するほどの反響となっている。

同展の魅力は、贅沢にもイタリア館で展示された作品2点と、日本初公開となるレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿(紙葉2枚)を各展示室で1点ずつ鑑賞できる点。さらに、日伊親善の先駆けとなった天正遣欧少年使節の主席正使・伊東マンショにもスポットをあて、会期途中から、ドメニコ・ティントレットによる『伊東マンショの肖像』の複製画も展示予定だという。

広々と贅沢な空間に展示されている( Lmaga.jp撮影)
日伊親善の先駆けとなった天正遣欧少年使節の主席正使・伊東マンショのコーナー。会期中に、ドミニコ・ティントレット『伊東マンショの肖像』複製画も展示予定(10/25時点では開始日は未定)
日伊親善の先駆けとなった天正遣欧少年使節の主席正使・伊東マンショのコーナー。会期中に、ドミニコ・ティントレット『伊東マンショの肖像』複製画も展示予定(10/25時点では開始日は未定)

■ 宇宙を表す現存最古の天球儀『ファルネーゼのアトラス』

『大阪・関西万博』イタリア館で話題となった『ファルネーゼのアトラス』
『ファルネーゼのアトラス』の天球儀の42星座の彫りは圧巻( Lmaga.jp撮影)

最初の展示室で出迎えるのは、古代彫刻の最高傑作と称され、万博でアジア初公開された高さ約2m、重さ約2トンの大理石像『ファルネーゼのアトラス』。ギリシャ神話に登場する巨人アトラスが天球儀を肩に担ぐ姿は、360度どこから見ても筋肉の力強さや天球儀の42星座の彫りが圧巻。本展を監修した神戸大学の宮下規久朗教授は「宇宙を表す現存最古の天球儀として知られ、現代の観点でも正確なので天文学上でも貴重な作品」と話す。

『ファルネーゼのアトラス』展示は周りをぐるっと1周できるので、天球の星座や身体の筋肉など見る場所により印象が異なるのが興味深い
『ファルネーゼのアトラス』展示は周りをぐるっと1周できるので、天球の星座や身体の筋肉など見る場所により印象が異なるのが興味深い( Lmaga.jp撮影)

続いては、ペルージャの宗教行列のために描かれた15世紀を代表する巨匠・ペルジーノの代表作『正義の旗』が登場。上部には聖母子、下部には守護聖人らが描かれ、高位の存在という大きな顔で表された5体の天使も見どころのひとつ。背景の塔や城壁などから当時のペルージャの街並みをうかがい知ることができる。

ピエトロ・ヴァンヌッチ(通称ペルジーノ)(1450-1523)《正義の旗―聖フランチェスコ、シエナの聖ベルナルディーノ、祈る正義兄弟会の会員たちのいる聖母子と天使》1496年 ウンブリア国立美術館(ペルージャ)
ピエトロ・ヴァンヌッチ(通称ペルジーノ)(1450-1523)《正義の旗―聖フランチェスコ、シエナの聖ベルナルディーノ、祈る正義兄弟会の会員たちのいる聖母子と天使》1496年 ウンブリア国立美術館(ペルージャ)( Lmaga.jp撮影)

■ 大阪を意識? レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿

そして、科学・芸術など万能の天才と称されるレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿は、多分野の研究や発想が書き残されたもの。日本初公開の2枚は、水都・大阪にちなんで「水」に関する装置を描いたものが選ばれ、ネジや巻き上げ機など軍事技術者としての精密な描写が目を引く。宮下教授は「鏡文字は発想を盗まれないように、右から左へ書いてあるのは彼が左利きだったからと言われています」と考察する。

本展で日本初公開となるレオナルド・ダ・ヴィンチの『アトランティコ手稿』2点
本展で日本初公開となるレオナルド・ダ・ヴィンチの『アトランティコ手稿』2点( Lmaga.jp撮影)
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)『アトランティコ手稿』第1112紙葉 表《巻き上げ機と油圧ポンプ》1478年頃 アンブロジアーナ図書館(ミラノ)
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)『アトランティコ手稿』第1112紙葉 表《巻き上げ機と油圧ポンプ》1478年頃 アンブロジアーナ図書館(ミラノ)( Lmaga.jp撮影)
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519) 『アトランティコ手稿』第156紙葉 表《水を汲み上げ、ネジを切る装置》アンブロジアーナ図書館(ミラノ)
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519) 『アトランティコ手稿』第156紙葉 表《水を汲み上げ、ネジを切る装置》アンブロジアーナ図書館(ミラノ)( Lmaga.jp撮影)

いずれもイタリアが誇る至宝を間近で鑑賞でき、写真撮影も可能だが(フラッシュや動画撮影などは禁止)、同美術館の内藤栄館長は「貴重な作品だけに、万博では写真を撮ることに夢中になっていた方が多い印象。せっかくの機会なので、撮るよりぜひ『自分の目で見る』ことも大切に、鑑賞していただければ」と呼びかけた。

古代彫刻の最高傑作と称される『ファルネーゼのアトラス』を間近で鑑賞でき、写真撮影も可能(フラッシュや動画撮影は禁止)
古代彫刻の最高傑作と称される『ファルネーゼのアトラス』を間近で鑑賞でき、写真撮影も可能(フラッシュや動画撮影は禁止)( Lmaga.jp撮影)

同展は2026年1月12日まで開催。広報事務局によれば、すでに全日程分が完売したため、安全面を考慮し、チケットを未購入で、日時指定予約もとれなかった人は無料対象者を含め、当分の間、本展への入場は不可とのこと(10月24日時点)。今後の対応は、随時「大阪市立美術館」公式サイトおよび展覧会公式SNSで発表される。

展示の入口部分( Lmaga.jp撮影)
「ファルネーゼのアトラス」の顔ハメパネルが登場(10月24日 Lmaga.jp撮影)
「ファルネーゼのアトラス」の顔ハメパネルが登場(Lmaga.jp撮影)

取材・文・撮影/塩屋薫

特別展『天空のアトラス イタリア館の至宝』

特別展『天空のアトラス イタリア館の至宝』
期間:2025年10月25日(土)~2026年1月12日(月・祝)
休館日:月曜日(祝日の場合は、翌平日休館)、12月29日~1月2日
時間:9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
会場:大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町1-82 天王寺公園内)
料金:一般1800円、高大生1500円、小中学生500円

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