松平定信政権の寿命縮めた…3つの出来事が登場【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第37回より。紀州藩主・徳川治貞と話す老中・松平定信(井上祐貴)(C)NHK
江戸時代のポップカルチャーを牽引した天才プロデューサー・蔦屋重三郎の劇的な人生を、横浜流星主演で描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。9月28日の第37回「地獄に京伝」では、松平定信が恋川春町の死によって、ますます自分の政をかたくなに貫いていく姿が描かれたが、実は定信政権の終わりを決定づける出来事が、立てつづけに見受けられた。
■ 倹約政策の推進で吉原は…第37回あらすじ
松平定信(井上祐貴)は倹約の政策を推し進め、武家の借金を帳消しにする「棄捐令」を実行すると同時に、田沼意次(渡辺謙)の時代に作られた歓楽街「中洲新地」の取り壊しを命じる。その結果吉原は、棄捐令で打撃を受けた札差たちが寄り付かなくなり、働き口をなくした女郎たちが街角で安く身を売るようになるなど、りつ(安達祐実)いわく「でかいだけの地獄」のような有り様となっていた。

紀州藩主・徳川治貞(高橋英樹)は、物事を急に変えるのはよくないと定信に忠告するが、定信は自分に諫言した恋川春町(岡山天音)に腹を切らせたことを悔やみ、だからこそ自分の信じる所をなし得ねばならないと返答。そして大奥老女・大崎(映美くらら)を罷免したことを「田沼も真っ青な一存ぶり」と呆れる一橋治済(生田斗真)に対して、いつでもお役を辞する覚悟だが、山積みの懸案を引き受けられる者が他にいるかと牽制するのだった。
■ 恋川春町、頭を抱える!?蔦重&松平定信の暴走
重三郎は「最後まで田沼派」という田沼意次との約束+春町の死にとらわれて、「ふんどしを批判する本以外は認めねえ」という、編集方針としてそれはどうなんだ? という状態になった。一方、定信は定信で、春町の「世の中は自分の思い通りに動くものではない」という渾身のアドバイスをきちんと読み取ったものの「だからこそ信じた道を突き進みます!」という、なんでそうなった? という方向に受け取っていた。恋川春町、マジで草葉の陰で頭を抱えているに違いない。

今回定信が手掛けた「棄捐令」は、武士の借金を帳消しにするという法令。むしろ「徳政令」と言えば、某電鉄ゲームをやっている人ならピンとくるだろう。旗本・御家人の5年以上前の借金を帳消しにし、近年の借金も利子を下げるという、あまりにも一方的な「武士ファースト」な政策だった。ちなみにドラマで定信が言っていた「札差が倒れたり、貸し渋りを起こさぬための仕組み」は、幕府から補助金を出すということで、実際に札差からの抗議はこれで引っ込められている。

ただこの棄捐令、その後やっぱり貸し渋りが起こってしまい、定信の反発が強まる結果となってしまう。これがまず、定信政権の寿命を縮めるきっかけの一つ。もう一つは、大奥を敵に回してしまったことだ。第33回で定信が逆転で老中の座に付けたのは、幕府の裏番長とも言える、大奥の許可が下りたため。しかもその手引をしたのは、現老女の大崎だった。ただでさえ敵にしてはいけない組織の、そのトップの恩を仇で返した形になる。どこまでそれを自覚していたのかはわからないが、これで定信は幕府の支持を半分ぐらいは失ったと考えてもいい。
■ 政権の寿命を縮めた、3つ目の出来事は…
そして彼に追い打ちをかけることになったのが、途中で語られた「尊号一件」の出来事だ。このとき帝位についていた光格天皇は、先の帝に子どもがいなかったため、養子という形で帝位についた。そうなると帝の父・典仁親王が、息子より身分が低くなってしまうので「太上天皇(上皇)」という扱いにできないか・・・という提案だ。帝位に付いてない皇族を太上天皇とする例は過去にいくつかあったけど、定信が猛反対。結局、典仁親王の待遇を改善するという形で決着が着いている

しかしこの「帝位に付いてない父親を天皇同等の扱いにする」という考えは、そのまま幕府にそっくり返ってくることになる。あの一橋治済を、将軍の位を退いた者に送られる「大御所」にすることを、現将軍で治済の息子・徳川家斉(城桧吏)が画策していたからだ。定信は「尊号一件」の件もあってこれも拒否したため家斉の不興を買い、一気に立場を悪くすることになる。彼が徳川治貞の忠告「己の物差しだけで測るのは危うい」を聞いていれば、その政権はもう少し長くつづいたのかもしれないが・・・。

はからずも恋川春町の死が、ジャンルは違えども、2人の人並み外れた男の人生を狂わせることになってしまった。とはいえ、出版という新陳代謝の激しい世界にいる重三郎は、心変わりさえすればワンチャン逆転を見せる可能性は高い。しかし政治という、日本国全体に影響を与える世界は、「しまった」と思っても舵を切り替えても、なかなか簡単に方向転換できるものではない。そう考えると春町、なかなか罪な男である。
■ 次回、鱗形屋&西村屋が再登場!激おこか?
次回からはついに、出版統制がはじまってしまうわけだが、どうもその件で昔の地本問屋仲間が久々に一同に介するようだ。しばらくご無沙汰だった西村屋与八(西村まさ彦)に、てっきり退場したと思い込んでいた鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)までが、重三郎にどのような反応を見せるのか。絶対西村屋さんは激おこだと思うけど・・・出版の本格的な冬の時代の到来を、彼らがどのように乗り越えるのか。それは現代を生きる私たちの、教訓ともなりそうな気がする。

ちなみにこの「尊号一件」に関わった、関西人ならば非常に馴染み深い人物がいる。京阪三条駅前の「土下座像」(実際は御所に向かって拝礼)として親しまれる銅像の主・高山彦九郎だ。すでに尊皇思想家として有名だった彼は、この件で公家のブレーンを務めたり、広報活動的なことを行ったために、幕府から処罰を受けている。今度京阪三条駅付近を通るときは「あれに関わった人だったんだ」ということを思い出してもらいたい。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。10月5日の第38回「地本問屋仲間事之始」では、ケンカした重三郎と北尾政演(古川雄大)の間を鶴屋喜右衛門(風間俊介)がとりなしてくれる一方、松平定信がついに出版統制をおこなう姿が描かれる。
文/吉永美和子
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