『ばけばけ』が描き出す明治の『光と闇』、メイクはほぼ「すっぴん」

5時間前

『ばけばけ』第1回より。外国人の夫・ヘブンに怪談を話す主人公・トキ(髙石あかり)(C)NHK

(写真4枚)

◾️明治の陰影を映し出す照明へのこだわり

またチーフ演出の村橋氏は、そうした時代の陰影に付合するように「物理的な陰影」を映し出すための照明に、大変こだわったという。

「蛍光灯で照らされた明るい空間が当たり前の現代と違って、この時代って『暗闇』があったと思うんです。このドラマのテーマのひとつである怪談も、『暗闇への畏怖』があるからこそ生まれた側面もあると思います。

この世には目に見えないもの、自分の手が届かないものがある。自分の力ではどうにもできないことがあるからこそ、昔の人は他者への優しさや寛容さがあったのではないかと想像します。

闇は闇として描く。夜のシーンは、ほんの少しの補助光を入れてはいるものの、ほぼ蝋燭の灯りだけで撮影しているので、炎の瞬きや揺れがちゃんと画面にも出ています。

真っ暗な現場で撮影しているので、俳優さんもスタッフも手探りで入ってきて頭をぶつけたりして(笑)」。

◾️日本家屋の室内の明度をできる限り忠実に再現

村橋氏は、陽の光がある時間帯のシーンにもこだわりを見せる。

「昼間のシーンも、日本家屋の室内の明度をできる限り忠実に再現しています。長屋のセットなどは普通、天井をぶち抜いて照明を吊るして上からも光を当てるんですが、今回は当時のリアルな天井そのままに、上からの光はなし。横方向の窓からしか光が入らず、それが天井や壁に当たって、間接照明のように『もわーん』とした空間になっています。

もう、照明部さんたちも『そんなのできねえよ!』と泣きながら(笑)、通常のドラマの文法からは逸脱した方向で作ってもらっています」。

『ばけばけ』は、「何者でもない」市井の人たちの物語。これから半年間、光と影の中で揺れ動くリアルな人間たちの生き様を通じて、どんな景色を見せてくれるのだろうか。

取材・文/佐野華英

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