『ばけばけ』が描き出す明治の『光と闇』、メイクはほぼ「すっぴん」

3時間前

『ばけばけ』第1回より。外国人の夫・ヘブンに怪談を話す主人公・トキ(髙石あかり)(C)NHK

(写真4枚)

◾️今だからこそ届けたい、明治の物語

「マニアックすぎる」ともいえるほどにリアリティを追求しながら、明治という時代を描く意義を、橋爪氏は次のように話す。

「日本の近代史には大きな転換点が2つあり、ひとつは第二次世界大戦での敗戦で国の形が大きく変わったこと。もうひとつは江戸幕府が終わり日本が近代化の一歩を踏み出した明治維新です。

これまで第二次大戦前後を舞台とした朝ドラはたくさんありましたが、明治維新直後の庶民の日常を映した朝ドラはほとんどありません。これまで信じてきたものが激変し、何を心の拠り所にしたらいいのかわからないという状況は、現代の状況にとても似ているのではないかと。150年前のお話ではありますが、今の人たちに刺さる物語になっていると思います」。

『ばけばけ』第5回より。(C)NHK
『ばけばけ』第5回より。泥酔した客を迎えに来た遊女・なみ(さとうほなみ)(C)NHK

10月3日放送の第5回では長屋の井戸端での、トキの幼なじみ・サワ(円井わん)と、長屋に隣接する遊郭で働く遊女・なみ(さとうほなみ)のやりとりが印象的だった。

サワ「こげな人からお金もらって生きてくなんて、悲しいなと思っただけです」

なみ「おなごが生きてくには身を売るか、男と一緒になるしかないんだけんね」

◾️「何が正しいのか」とは言いたくない

また同じく第5回で、借金を毎月少額ずつしか返せない松野家に業を煮やした借金取りの善太郎 (岩谷健司)がトキに遊郭で働かないかと打診する場面もあった。

こうした、時代の波に取り残され貧しくも必死に生きる人たち、特に女性にとっての明治の「闇」の部分を、包み隠さず描くことについて橋爪氏はこう語る。

「当時の女性は今とは比べ物にならないぐらい制限があって、でもそれが当たり前だと思って生きていたんですね。女性も、そして男性もですが、選択肢がない時代。それをきちんと描かなければいけないと強く思いましたし、そうした世の中にあって、それぞれがどんな選択をしていくのか、ということがこの作品のテーマのひとつだと思っています。

当時の人たちの生き方を『正しい/正しくない』と断じてしまうのは、あくまでも現代人の価値観だと思うのです。サワを現代人の視点に近い『違う目線』を持つ人物として配置して、当時は『そう生きるしかなかった』人たちを際立たせてはいますが、僕はこのドラマのなかで『何が正しいのか』というようなことは決して言いたくないと思っているんです。

『何が正しいか』ではなく、『かつて、そう生きた人がいたんです』『いろんな人がいたんです』ということを描きたいと思いました」。

  • LINE

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

人気記事ランキング人気記事ランキング

写真ランキング

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本