『ばけばけ』が描き出す明治の『光と闇』、メイクはほぼ「すっぴん」

3時間前

『ばけばけ』第1回より。外国人の夫・ヘブンに怪談を話す主人公・トキ(髙石あかり)(C)NHK

(写真4枚)

今週から放送をスタートした連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合ほか)の10月3日放送第5回から、主人公・松野トキ役が少女時代の福地美晴から本役の髙石あかりへとバトンタッチした。

父・司之介(岡部たかし)がウサギの商いに失敗して多額の借金を抱えた松野家は、それまで暮らしていた武家屋敷とは松江大橋を挟んだ反対側、長屋が建ち並ぶ「天国町」で貧しい暮らしを送っていた。

18歳に成長したトキは、親戚の雨清水傳(堤真一)が経営する織物工場で織子として働き、わずかながら家計を助ける日々だ。最近あった「よかったこと」といえば、新しい怪談を聞かせてもらったことと、幽霊の夢でうなされたこと、金縛りにあったことぐらいで、相変わらず「うらめしい」日々を送っている。

『ばけばけ』第5回より。(C)NHK
『ばけばけ』第5回より。内職をする母・フミ(写真左、池脇千鶴)と話すトキ(写真右、髙石あかり)(C)NHK

傳は時代の波に乗って商売を起こし、成功している。片や司之介は牛乳配達で糊口をしのぎ、その父・勘右衛門 (小日向文代)はいつまでも武士の魂を捨てられない。雨清水家と松野家が、明治を生きるの人々の格差を浮き彫りに。このドラマはコミカルでほのぼのとしたトーンでありながら、底流には当時の市民たちのシビアな現実が横たわっている。

第1週の放送を終えたところで、あらためて「明治」という時代をテーマに選んだ理由について、制作統括の橋爪國臣氏と、チーフ演出の村橋直樹氏に話を聞いた。

◾️ 江戸末期の混沌が残る明治のはじめを描く

『ばけばけ』は「偉人の成功譚」ではない。

橋爪氏は、制作発表の段階から変わらず「江戸から明治へと時代が変わり、世の中の激流に呑まれてうまくいかなかったり、取り残された人たちはたくさんいたはず。そういった市井の人たちの生き様を描くことで、現代社会の混沌のなかで『生きづらさ』を抱える人たちにも届くものがあるのではないかと考えました」と語り続けていた。そのうえで、こう話す。

「近年の朝ドラで、江戸末期の混沌が残る明治のはじめを描くのは『あさが来た』(2015年後期)以来。これは結構チャレンジなんです。10年前のセットはもちろん残っていないので一から組まなければならないし、カツラや衣装や持ち道具にも予算と時間がかかります」と、ハード面からの難しさを語る。

『ばけばけ』第1回より。(C)NHK
『ばけばけ』第1回より。丑の刻参りをする、主人公・トキの父・松野司之介(写真右、岡部たかし)ら松野家の人びと(C)NHK

◾️カメラ、メイクにも強いこだわり

『ばけばけ』は映像の質感も独特だ。このシネマライクな映像を作るための工夫を橋爪氏は、「朝ドラでは初めての使用となるSONYの『VENICE』というシネマカメラを導入しています。被写界深度が浅いため背景がボケて、柔らかくて繊細な映像が撮れます。撮り上がった映像に、さらにカラーグレーディング(色調補正)をかけて、『光と闇』を際立たせています」と明かす。

「市井の人々のリアル」を映し出すため、俳優たちのメイクも極限まで「自然」にこだわったという。

橋爪氏は「俳優さんと事務所さんに了解を得たうえで、ヘアメイク部のスタッフに協力してもらい、自然な肌の質感に近づけています。『いかにも撮影用のメイクをしています』というものではなく、極限まですっぴんに近づけたメイクを施してもらっています」と語る。

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