万博で日本初上演…60周年記念小さな「サウンドオブミュージック」

4時間前

「サウンド・オブ・ミュージック」のストーリーが精巧につくられた約30センチのマリオネットたちによって進んでいく.。人形劇ならではのドリーミーな演出も(9月24日 大阪・関西万博)

(写真20枚)

開催中の「大阪・関西万博」に、映画公開60周年を記念して『サウンド・オブ・ミュージック』が登場。ユネスコ無形文化遺産に登録されている、オーストリアの「ザルツブルク・マリオネット劇場」が、9月25日に2公演を上演した。当日は、観覧希望の来場者たちが、会場の「フェスティバル・ステーション」に詰めかけた。

当日は観覧希望者が殺到(9月24日 大阪・関西万博)
当日は観覧希望者が会場に殺到(9月24日 大阪・関西万博)

現在、万博会場では、『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台となったオーストリアが、五線譜をモチーフにしたユニークな外観が目をひくパビリオンを出展。音楽にまつわる展示や、イベントを数多く開催している。

オーストリア館は五線譜がモチーフ(9月24日 大阪・関西万博)
オーストリア館は五線譜がモチーフ(9月24日 大阪・関西万博)
オーストリア館では現地の老舗ベーゼンドルファー社のピアノの自動演奏も(9月24日 大阪・関西万博)
オーストリア館では現地の老舗ベーゼンドルファー社のピアノの自動演奏も。映像には「エリザベート」=フランツ・ヨーゼフ1世の皇后シシィも登場(9月24日 大阪・関西万博)

◆ アカデミー賞で5部門を獲得、不朽の名作『サウンド・オブ・ミュージック』

そんな音楽の国・オーストリアを舞台にした、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』は、1959年に初上演。その後、1965年に同名のミュージカル映画が、ロバート・ワイズ監督、ジュリー・アンドリュース主演で公開されると、世界的に大ヒット。第38回アカデミー賞で5部門を獲得するなど、不朽の名作として知られる。

会場には映画ポスターが飾られたザルツブルグの展示コーナーも(9月24日 大阪・関西万博)
会場には映画ポスターが飾られたザルツブルグの展示コーナーも(9月24日 大阪・関西万博)
表題曲「サウンドオブミュージック」とともに主人公マリアが登場シーンから感動(9月24日 大阪・関西万博)
表題曲「サウンドオブミュージック」とともに主人公マリアが登場する冒頭シーン。映画やミュージカルのポスターに使用される有名シーンを衣装も含めおしゃれに再現(9月24日 大阪・関西万博)

物語の原作は、マリア・フォン・トラップによる自叙伝『トラップ・ファミリー合唱団物語』。日本では、同じ原作を持つ作品として、アニメ『トラップ一家物語』(フジテレビ系列「世界名作劇場」17作目)が、1991年に放送され、また過去には、「劇団四季」や「東宝」による日本版のミュージカルも数多く上演されているので、ストーリーになじみのある人も多いはず。

人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形たち一体一体表情が異なる。伝統衣装もかわいい(9月24日 大阪・関西万博)

そんな『サウンド・オブ・ミュージック』、本国オーストリアでもやはり大人気。112年の歴史を持ち、モーツァルトのオペラ『魔笛』など、数多くのレパートリーを持つ「ザルツブルク・マリオネット劇場」の上演演目の中でも、特に人気の高い公演のひとつだ。

「魔笛マジック・フルート」のマリオネットを持つ、劇場代表(9月24日 大阪・関西万博)
「マジック・フルート(魔笛)」のマリオネットを持つ、劇場の代表がエスコートしてくれた(9月24日 大阪・関西万博)

万博での公演は、「ザルツブルク・マリオネット劇場」にとって、久しぶりの日本公演。大阪では、1958年以来と、67年ぶりの公演。さらに、『サウンド・オブ・ミュージック』は、日本では初上演という大変貴重な公演となった。

◆ 「まるで小さな人」50体の人形が小さなステージで繰り広げる、壮大な物語

人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)

幕開き直後、修道女たちの掃除のシーンから、びっくり。膝まずいて「ぞうきんがけ」をしている様子は、とてもなめらかで、ぱっと見では人形とは思えない。人形も、そのドレスや、アクセサリーや小物まで、全て劇団で手作りしているというから驚きだ。

笑い、泣き、踊り、歌う約30センチの小さな人形たち。10名の人形遣いたちが、50体を操って繰り広げる、壮大な物語に、集まった観客たちは、真剣に見入っていた。

人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)

この日の公演は、2幕約2時間(途中休憩あり)、全編英語での上演だったものの、筆者は映画やミュージカル版を過去に観ていることもあって、内容は全く問題なく理解できた。

人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)

時代に翻弄されながらも、逆境に立ち向かう主人公マリアの活躍とともに、何度もリプライズされる表題曲『サウンド・オブ・ミュージック』や、『すべての山に登れ』などの美しいナンバーに感動。また、あらすじを知っていても、どんどんストーリーに引き込まれてドキドキの連続で、『ドレミの歌』や、『エーデルワイス』『私のお気に入り』『もうすぐ16歳』など、いずれのナンバーも一緒に口ずさみたくなってしまう。

人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形劇のワンシーン、思いがけず実際の人が出てきてびっくり(後から『ハッチポッチステーション』(NHK教育)でもパペット人形とグッチ裕三が共演していたことを思い出しました…)(9月24日 大阪・関西万博)

途中、マリア(人形)と、修道院長(人形でないリアルな人)が、向かい合ってセリフを交わす、修道院のシーンもあり、とても良いアクセントに。

人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)

人形一体一体が、子どもは子どもらしく、老人は老人らしい、リアルな動きでお芝居をする。終盤には、マリオネットが、マリオネットをさらに手元で操るという、すごいシーンも。一人前の人形使いになるには、最低8年くらいはかかると言い、さすがユネスコ無形文化遺産。すごい職人技だ。

人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)

こだわりを感じる背景やセット、そして空を舞ったり、飛び出てきたりといった、実写のミュージカルや映画よりさらに自由度の高い、人形劇ならではの、演出も楽しい。人形劇と聞くと、子どものためのもの、というイメージがあったが、老若男女誰でも満足できる内容だと感じた。

人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)

ラストシーンでは、人形たちを上部から、巧みに操る人形遣いたちの姿をお披露目。「こんな形で、人形を操っていたのか!」と、観客たちがどよめき、その後、ステージ前に現れたスタッフたちに、スタンディングオベーションが送られた。終演後は「本当にすごかったね~」と言う声があちこちで上がっていた。

人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
人形劇のワンシーン(9月24日 大阪・関西万博)
超絶技巧を持つ劇団員たち(9月24日 大阪・関西万博)
超絶技巧を持つ劇団員たち(9月24日 大阪・関西万博)

「ザルツブルク・マリオネット劇場」は、この万博での公演以外に、長野県松本市でも公演。「松本市音楽文化ホールメインホール」 では、9月29日、30日に3公演を開催。大人(高校生以上)当日4500円、中学生当日2500円、大人同伴の小学生以下は無料。(0歳から入場可能)

ザルツブルグの展示コーナーに、マリアになりきれる顔出しパネルが(9月24日 大阪・関西万博)
ザルツブルグの展示コーナーに、マリアになりきれる顔出しパネルが(9月24日 大阪・関西万博)

「ザルツブルク・マリオネット劇場」の常設劇場のある、オーストリア・ザルツブルグでは、映画公開60周年の今年、多数のイベントを開催し、盛り上がりをみせているという。映画のロケ地となった「ヘルブルン宮殿公園」に、2026年夏頃「サウンド・オブ・ミュージック博物館」が開館されることも発表されている。根強い人気のモーツァルトや、ハプスブルク家ゆかりのスポット巡りに加え、そちらにも注目だ。

取材・文・写真/Lmaga.jp編集部

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