ちゅらさんから20年、感じ続けた沖縄の念…大友監督『宝島』に至るまで

映画『宝島』左から、大友啓史監督、妻夫木聡、窪田正孝
妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太らが出演する映画『宝島』(9月19日公開)。その合同インタビューが大阪市内で開かれ、メガホンをとった大友啓史監督が同作に込めた想いを語ってくれた。
■ 構想に6年、二度の撮影延期を経て…
原作は、第160回直木賞を受賞した真藤順丈の同名小説。映画化の構想には6年が費やされた。ただ、コロナ禍などの影響で二度の撮影延期を経験。ようやく劇場のスクリーンに映し出されるときがきた。
物語の舞台となったのは、戦後の沖縄・コザ。米軍基地から物資を奪って住民に分け与えるグループ「戦果アギヤー」のメンバーだった、グスク(妻夫木)、レイ(窪田)らは、ある夜の米軍基地襲撃で、リーダーであり英雄的存在だったオン(永山)が姿を消したことをきっかけに、それぞれ別の道を歩み始める。そして、鬱屈した環境のなかで彼らは、オンの影を追い求めながら、自分自身と沖縄の未来を切り拓くために奮闘する。
同作で忘れられないのが、アメリカ統治下でさまざまな真実が握りつぶされ続けてきた沖縄の人々の苦しみの数々。どれだけ声をあげても抑圧され、なかったことにされる。そんななか、グスクは「我慢にも限度があんどー」と怒り、レイは「俺は言いたいことを言って死にたい」と口にする。
大友監督は1990年にNHKに入局したとき、先輩から「ジャーナリズムというのは声にならない声を届けること」と言われ、その信念をもとさまざまな映画、ドラマなどを制作してきた。この『宝島』はそんな大友監督の根幹がはっきりあらわれたものではないだろうか。

■「『ちゅらさん』から20年、沖縄の念を感じ続けてきた」
大友監督はまず、「たとえば『龍馬伝』(NHK大河ドラマ/2010年)では、作家の司馬遼太郎さんの「残念」という言葉を基に演出のベースを想定しました。日本には死しても念が残る、という考えがあります。武市半平太の三文字切腹などを撮っていると、彼らのそういった念に浸されていくようなコンディションに襲われることがあった。ドラマを作っていたこちらも、体にダメージがくるほどでしたから。そして沖縄もまた、僕らの世代にとってはさまざまな念が感じられる場所。それは『ちゅらさん』(NHK連続テレビ小説/2001年)で何度も沖縄へ行っていたときから、痛感していましたね」と、『宝島』に至るまでの記憶の糸をたどる。
続けて「『ちゅらさん』から20年、ずっとその感覚は残っていたんですね。沖縄の声なき声をどのように届けるのか、誰にも届けられなかった声をどうしたら届けられるのか。悔しさ、悲しさ、その声を、無念を世の中に届けられずに亡くなった方はたくさんいる。もし自分が死んだら、そうやって感じてきた念はどこへ行ってしまうんだろう。そんな想いに取り憑かれていました。それがこの『宝島』で、大きな熱量としてあらわれたように思います」と語る。

同作では、1970年のコザ暴動も描いている。米兵の運転車両が沖縄県民をはねてケガを負わせたことを発端とする、一夜限りの大きな騒乱だ。沖縄の人々の“声”がここで一気に溢れ出る。
大友監督は「あの時代の沖縄のことを調べれば調べるほど、信じられないことが起きていた。沖縄の公民館や図書館で地元に残る資料を調べると、そこには歴史として語られていないような“声”がたくさん残っています。僕はNHKの秋田放送局に赴任した新人時代、放送部長に『ジャーナリズムというものは、声にならない声を届けること』と言われましたが、この『宝島』は自分にとってまさに初心に戻るところがありました」と、原点に返って制作できたそう。
そして最後に「思い残すことはないように、すべてのシーンに念を込めながら、この映画を作りました」と、同作への思い入れの強さを明かしてくれた。映画『宝島』は9月19日より全国公開。
取材・文/田辺ユウキ 写真/バンリ
映画『宝島』
2025年9月19日(金)公開
原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
監督:大友啓史
出演:妻夫木聡 広瀬すず 窪田正孝 永山瑛太
Ⓒ真藤順丈/講談社 Ⓒ2025「宝島」製作委員会
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