「嘘だろ?」蔦重の善意が仇に…最強の鬱展開にSNS悲鳴【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第31回より。強盗に殺害されたふく(小野花梨)(C)NHK
横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。8月17日の第31回「我が名は天」では、吉原から足抜けをしてから、農村や江戸の片隅へと流浪をつづけてきた新之助&元女郎のうつせみ(現在はふく)夫婦に、誰も予想できなかった悲劇が。あまりにも鬱なラストに、SNSは沈痛な空気がただよっていた。
■ 浅間山噴火の次は大洪水…第31回あらすじ
利根川の堤防の決壊で大洪水が起こり、江戸の街は住まいを失った者たちであふれかえっていた。被害が少なかった重三郎は、子どもが生まれたばかりの小田新之助(井之脇海)とふく(小野花梨)の夫婦に、米と仕事を与えて支えていた。しかし重三郎が、老中・田沼意次(渡辺謙)の政策を擁護すると、ふくは田沼は考えているフリをしているだけで、自分たちのように地べたを這いつくばってる奴が、結局はツケを回されると批判する。

将軍・徳川家治(眞島秀和)が逝去したちょうどその頃、新之助が留守にしている間に、ふくと子どもが殺害されているのが発見される。下手人は、重三郎が持ってきた米の噂を聞きつけた、妻子持ちの飢えた男だった。新之助は「この者は俺ではないか。俺はどこの何に向かって怒ればいいのだ!」と葛藤する。重三郎は、自分の元に来るよう新之助をうながすが、彼は「もはや逃げてはならぬ気もする」と、妻子の墓の前で語った・・・。
■ 長谷川平蔵が再登場!「鬼平」に一歩近づく
天明の大飢饉と米騒動を乗り越えたかと思ったら、次は江戸に大洪水。立てつづきの凶事に、登場人物だけでなく視聴者も「いい加減にしてくれ!」という気分が高まったところで、冒頭から嬉しい再登場があった。そう、我らが「カモ平」こと長谷川平蔵(中村隼人)だ。性に合わない内向きの仕事から、市中を舞台に活躍できる「先手弓頭」への配置転換が実現。これで「鬼平」に一歩近づいたわけだ。

さっそく生き生きと市中見廻りに出かけるところを、重三郎に目撃された長谷川様には、SNSで「来たーー! 平蔵が来たーーー!」「待たせたな。ここからが鬼平の出番だ」「平蔵くんの手下たちもお元気そうで何より」「市中を見回りつつカッコつける平蔵。立ち去り方が忍者走りみたいでちょっとおもろい平蔵。全部好き」「長谷川さま、仕事はきちんとしてんのに・・・何でこうも三枚目なんだろ」などの喜びの言葉がノンストップとなった。
■ 当時の庶民の代弁者…新之助&ふく夫婦
しかしこの31回は、結論から言うと「長谷川様しか救いがない」とSNSが絶望するほど、悲劇的な回となった。まずこの洪水が、新之助やふくたちが隠れ住むエリアを直撃。ふくとのバイオレンスな足抜けエピソードだけでも十分つらい話だったのに、農村に逃げおおせたと思ったら浅間山の噴火で江戸に逆戻りとなり、今は洪水で困窮する・・・って、当時の庶民の辛さを全部詰め込んだような状況だ。

次々に追い打ちが来るこの2人に対しては「しんさん、ふくさん、行く先々で酷い目にあってるな・・・」「足抜けできた代わりに、この時代の天災被害描写人員にされていない?(涙)」などの同情の声が寄せられたが、重三郎が救援物資を送ることで、なんとか持ちこたえるように。

しかし重三郎が「しょせん恵まれた側」と言わんばかりに、「経済重視な田沼の政策は貧乏人ほど苦労するシステムになっている」と訴えるふくの言葉には、視聴者も考えさせられることになった。

SNSでも「一番弱いものが苦しくなる。おふくさんずっと貧しく苦労してきたから弱い人達の気持ちがわかってる」「女郎に水呑百姓に、常にどん底の生活を体験してるからなぁ。言葉の重みが違う」「なんやかんや言って余裕のある蔦重とその日暮らしがやっとの新さんおふくさんとでは田沼様を見る目もそりゃ違うよね」「やっぱり本物の貧しさへの想像力が欠落するから、どうしてもおふくさんとは分断しちゃう」と、重三郎とともに田沼贔屓となっている私たちに対して、当時の庶民の率直な感情を伝える役割を果たしていた。
■ 蔦重とふくの善意が「最悪なシナリオ」へ
このときのふくは、乳が止まった母親たちのために、もらい乳を積極的に引き受けていた。このときの表情があまりにもやつれていたので、もしかしたらこの無理がたたって亡くなってしまうという話になるのでは・・・と危惧していた。しかし相手は、どうせ地獄に落とすならどん底まで落とす脚本家・森下佳子。この家に米があると聞いた男が強盗に入り、子どもともども殺害されるという、10段階中10レベルで最悪なシナリオを用意していた。

SNSも、まず「え・・・おふくさん・・・嘘だろ・・・!?」「なんだなんだ突然なんなんだ」と言葉を失い、次に死因が判明すると「蔦重が善意でした食料援助と、おふくさんが善意でした母乳のおすそ分けが仇になって起きてしまった悲劇」「お口巾着しても乳の出が良いって部分から自然と知られちゃったっぽいの、こんな因果があってたまるかよ」「森下佳子名物の、善意が善なる結果を引き起こすとはかぎらない脚本」と、重三郎とふくの優しさと気遣いが、この悲劇を招いたことに頭を抱えるような声が続出した。
その犯人はすぐに捕まったが、新之助は「この者は俺ではないか」と、犯人を責めるどころか、むしろ同調するようなそぶりを見せた。自分たちは重三郎から食料と仕事をもらったから良かったけど、誰からも助けてもらえない状況だったら、妻子を救うために彼と同じような行動を取らなかったと、本当に言えるのか・・・? このわずかな時間でここまで考えて、相手に手を上げなかった新之助の知性と優しさは、レベチ過ぎて理解に苦しむほどだ。

SNSでも「新さんがあそこで怒りと衝動に身を任せずに立ち止まってしまえる善良さが、より苦しみを生むのが地獄」「蔦重が米と仕事をくれなければ、押し込みに入っていたのは新さんだったかもしれない。蔦重に出会っていなければ、ふくさんととよ坊はこんなことにならなかったのかもしれない。それを瞬時に鑑みられる新さんはやはり聡明で、優しすぎる人だ」「今までの蔦重は恩が恩を呼ぶ廻る恩によって大きくなってきたんだけど、今回は蔦重が新さんたちに与えた恩が最悪の形で仇になってしまった」と新之助への同情とともに、重三郎にも大きな影を落としたことを感じる声もあった。
そして凶悪な理不尽さにもだえると同時に、「そうきたか!」と感心せざるをえないほど、見事な因果の完成を描き出した森下には「『俺はどこの何に向かって怒ればいいのだ!』森下佳子だと思う」「あの時代の凄惨な現実を描くため、ここまで冷徹になれるのか?」「人の心がなさすぎる・・・御ぶちのめしたくなるな・・・(最大限の賛辞)」「間違いなく大河史に残るレベルの鬱回だったけど、こういう歴史もあったということを知る意味では見るべき回だったと思う」などの怒りと賛辞の混じったコメントが多数送られていた。
■ 小野花梨「超絶ハッピーエンドだった」
足抜けした2人が最初に農村に逃げ込んだときは「天明の大飢饉で2人を餓死させるとでも?」と身構えたが、そんな安直な予想をはるかに越えて、重三郎に本当に苦しい庶民の実体と、自分が悲劇の引き金を引いたという罪悪感を植え付けるための・・・言い方は悪いが「生贄」のような存在になるとは、本当に言葉が出てこない。こんな社会の実体を目の当たりにして、重三郎にどのような「世の中を明るくする本」が作れるというのだろう? きっとそれに対しても、森下佳子は想像を越えた答えを提示してくれるはずだと期待しよう。

しかし筆者が一番驚いたのは、今回で退場となったふく役の小野花梨が、インタビューで「超絶ハッピーエンドだったと思う。(略)私は森下さんから大きなプレゼントをいただいたなと思っています」と語っていたことだ。子どもも一緒に死んだことは悲しいけれど、最後まで・・・そしていなくなってからも新之助に愛し抜いてもらえたというのは、当人にとっては意外と、そっちの喜びの方が大きいものかもしれないと思ったのだった。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。8月24日の第32回「新之助の義」では、徳川家斉が第十一代将軍宣下を受ける一方で、新之助が変わらずつづく田沼意次の政に反発して、打ちこわしに立ち上がるところが描かれる。
文/吉永美和子
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