一橋治済と松平定信が導く、田沼意次の終わりの始まり【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第30回より。知保の方と話す松平定信(井上祐貴)(C)NHK
江戸時代のポップカルチャーを牽引した天才プロデューサー・蔦屋重三郎の劇的な人生を、横浜流星主演で描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。8月10日の第30回「人まね歌麿」では、将来「寛政の改革」で重三郎を苦しめることになる松平定信が登場。さらに一橋治済の政への野望が本格的に動き出し、田沼意次の天下の終わりがついに見えてしまった回となった。
■ 松平定信が政治に参加…第30回あらすじ
『江戸生艶気樺焼』が、仇討ちの意味を込めていると見抜いた松平定信(井上祐貴)の元に、一橋治済(生田斗真)から、御公儀の政に関わらないかという誘いが入った。定信は、治済の息子・家斉が将軍になった際には、実家・田安家を復活させるという条件で、これを引き受けた。田安家をいったん取り潰すのと引き換えに、白川松平家の家格を上げることで、定信は溜間(たまりのま)に並ぶことを許される。

田沼意次(渡辺謙)をはじめとする老中たちに意見ができる立場となった定信は、「黒ごまむすびの会」という派閥を作り、意次に反発する人間たちを仲間につけていく。意次は幕府の財政を確保できるよう、本を作るために入銀を求めるという重三郎のやり方を参考にした「貸金会所令」を布告。そのあまりにも型破りなシステムに定信らが反発するなか、大雨により利根川が決壊したという衝撃の報告が入った・・・。
■ 粘着質な知性でクセ者?松平定信が登場
少しでも歴史に詳しい人なら「ついにこいつが来てしまったか・・・」と、腹をくくったに違いない。田沼意次が失脚したあとに幕府の実権を握って「寛政の改革」を行い、その一環で厳しい出版統制をして、重三郎たちを追い詰めることになる松平定信だ。老中としては悪評がやや高めだけど、白河藩の藩主としては、あの天明の大飢饉でも餓死者を1人も出さなかったなど善政をおこなった。彼に優れた政治家の素質があることを、田安家から追い出す方便にした意次の判断は、結果的に間違ってなかったわけだ。

そして今回が初登場となった、井上祐貴が演じる成長後の松平定信。前回重三郎が、花魁・誰袖(福原遥)の仇討ちとして作った『江戸生艶気樺焼』の主人公の名が「仇気屋」なのを見て「山東京伝(北尾政演/古川雄大)先生にはなにか考えがあるのでは?」と勝手に妄想。多分現代に生きていたら、ブログとかnoteとかで好きな作品の裏読み考察を延々と記すに違いない、分析好きのオタク気質を冒頭の1分で見事に発揮してしまった。
そしてこの、良くも悪くも1つのことを粘着気味に考えて、持論を延々と展開するという性質は、政治の世界に生かされたらさらに面倒なものだった。ドラマではまるっとカットされたけど、田沼意次を「これって幕府の財政の無駄遣いですよね?」と論破するために、おそらくあれやこれやの理屈をバンバンぶつけた姿が容易に想像できる。知性とクセ者感をハイレベルで見せてきた井上の定信、今後も重三郎たちの好敵手として期待できそうだ。
■ 生まれるのが早すぎた…田沼意次の失策
その田沼意次を引きずり下ろす、絶好の機会としてやってきたのが「貸金会所令」の布告。大名が領民たちから徴収したお金を幕府に預け、それを大名たちの貸付金とし、そこで発生した利息を最終的に領民に分け与えるシステムだ。意次の部下・三浦庄司(原田泰造)が、お金を払ったら人気の狂歌師たちと同じ本に、自分の歌を掲載できるという「入銀製」のシステムを、重三郎に教えてもらったことがヒントになった。重三郎の仕事がここまで政治の方にも影響するとは、なかなか想像ができなかった。

この貸金会所、今で言うところの銀行や国債の先取りのようなものなので、現代を生きる私たちのほとんどは「まあ、悪くないんじゃない?」と考えそうなところ。しかしこのコラムで幾度か触れた通り、この当時は米の価値をもっとも重視する石高制がメインで、意次が推し進めている貨幣制は、ほとんどの大名にとってはまだまだ未知の世界だった。大名が領民たちに頭を下げて、金を収めてもらうと読めてしまうこの制度は、意次を敵視する定信でなくても、抵抗が大きかっただろう。

しかもこの制度は武士だけでなく、大名貸を行っている商人たちにも脅威だったよう。幕府の貸付金の利子はそこまで高くなかったので、いわば幕府が絶対太刀打ちできない商売敵になってしまうことになる。来週でおそらく詳しく描かれるだろうけど、誰も得をしないと思われてしまった貸金会所は、すぐに撤回されてしまう。ちなみに日本で初めて銀行ができるのは、ここから約80年後の明治時代となってからなので、つくづく田沼意次は生まれるのが早すぎたと思う。
■ 「時が…来た!」一橋治済の野望の幕開け
この「貸金会所令」の失敗で、田沼政権の寿命は一気に縮まってしまうわけだけど、この状況を裏ですべて操ってるのが、今や全視聴者を敵に回していると言ってもいい一橋治済だ。これまで好意的に接していた意次に見切りをつけ、有力な対抗馬となることが期待される松平定信に目をつけた。彼に恩を売ることができれば、息子・家斉が次期将軍となった暁には、御三卿は関わることができないとされた政の世界にも、影響力を持てることになる。

そのお膳立てがすべてでそろって出てきたのが、雨の中で踊りながらの「時が・・・来た!」発言だろう。最後の方で、将軍・徳川家治(眞島秀和)が側室・知保の方(高梨臨)に呼び出されていたが、知保の側には治済の身内・大崎(映美くらら)がいる。彼女を通じて毒でも盛るんじゃないか? いやそこまでする? とハラハラしてしまう。いやもしかしたら利根川決壊も、あの丈右衛門だった男(矢野聖人)を使ったんじゃないだろうな・・・。意次の終わりの始まりと同時に幕を開けた、治済の野望の始まり。当分は胸中の怒りを沈めながら見る展開となることを、ちょっと覚悟しておこう。

◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。8月17日の第31回「我が名は天」では、利根川の堤防決壊で江戸の町が大洪水となる一方、田沼意次を重用していた徳川家治に思いがけない事態が訪れるところが描かれる。
文/吉永美和子
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