重三郎の3人目の「女」の正体に、SNS同情【べらぼう】

7時間前

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。挿し絵を描く絵師・喜多川歌麿(染谷将太)(C)NHK

(写真8枚)

横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。7月6日の第26回「三人の女」では、重三郎の母が登場し、ビジネス夫婦だったていとの仲が大きく進展するという展開に。さらにもう一人の「女」には、SNSに同情と励ましの声が多数上がっていた。

■ 1人目は母、2人目は妻、3人目は…第26回あらすじ

日本橋に進出した蔦屋に、重三郎を捨てた母・つよ(高岡早紀)が転がり込んできた。重三郎はつよが髪結いをしている間に、本を売り込むという商法を思いつき、女将・てい(橋本愛)はそれを誰でもできるよう「品の系図」を作ることを申し出る。喜多川歌麿(染谷将太)のアイディアも取り入れて、完ぺきな系図を完成させたていは、置き手紙を残して蔦屋を出てしまい、重三郎は出家しようとしていたていを追いかける。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。日本橋の町を歩く重三郎(横浜流星)(C)NHK

ていは、自分のようなつまらない女は「江戸一の利者」と言われる重三郎の妻にふさわしくないと、家を出た理由を語る。しかし重三郎は、ていは非常におもしろいし、自分と同じ考えと辛さを持っていて、この先を一緒に歩きたいと思える人だと告白。これをきっかけに、2人は本当の夫婦となった。その一方で歌麿は、新しい本であえて女性の名前を名乗った理由を重三郎に聞かれて「生まれ変わるなら女がいいからさ」と答えるのだった。

■ 「この親にしてこの子あり」蔦重の母、登場

日本橋の本屋を買い取ったことで、一流の本屋の証となる「日本橋出店」を実現した重三郎。これとちょうど同じぐらいの時期に、疎遠だった産みの母と一緒に住むようになったという話が伝わっている。ということで重三郎の母親が、今回初登場となったわけだが、特に人物像がわかってないというのを利用して、毒親ギリギリのずうずうしさを持ち、さらに重三郎に負けないぐらいの人たらしという、かなり強烈なキャラクターを持ってきた!

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。「耕書堂」に上がり込み食事する重三郎の母・つよ(高岡早紀)(C)NHK

これにはSNSも「突然の蔦重マッマ!」「おっかさん、ぬらりひょんくらい自然に上がり込んでいた」「毒親をやらせたら右に出るものなしの高岡早紀が、満を持して出てきたよ」「儲かったと思ったら出てくる縁遠い親族・・・ただでさえうっとおしいだろうに血のつながった親か」などの驚きと悪態の声が並んだが、一方で「人の懐に入るのが上手い・・・蔦重のかあちゃんだな」「間違いなくおつよさんの遺伝子をバリバリ受け継いでるよ、蔦重」などの「この親にしてこの子あり」的な言葉も多数。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。母・つよが髪を結う間に、本を売り込む重三郎。写真左から、重三郎(横浜流星)、妻・てい(橋本愛)、母・つよ(高岡早紀)(C)NHK

そして髪結いの腕を活かして、タダで髪を結う代わりに、蔦屋の本をいろいろセールスするという新たな商法を開発した! 今現在でも美容室にはいろんな雑誌が置いてあり、それを帰りに買って帰る・・・ということも珍しくないから「美容院の雑誌戦法だこれーーーー!!!!」「髪切る間に雑誌読ませるやつも蔦重んちが始めたんかい」「これは間違いなく親子ですね。なんだかんだタッグを組んで儲けている」と、親子そろっての商売上手ぶりにふるえるコメントが多く見られた。

■ シゴデキな妻・てい、しかし自己肯定感が低く…

そんな台風のような母親を「親孝行大事」的な格言付きで迎え入れたのが、重三郎の妻・てい。家の食料の在庫をしっかりと管理し、出入りするお客さんの格式を即座に察知し、ほかの従業員も接客が楽になるように「品の系図」(今で言うマニュアル冊子か)をみずから作り上げた。この品の系図、美術スタッフ数人がかりでも作成に相当苦労したことが公式サイトで語られていたので、ていさんのシゴデキぶりは我々の予想以上だった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。本の繋がりを示した「品の系図」を作成する重三郎の妻・てい。写真左から、絵師・喜多川歌麿(染谷将太)、妻・てい(橋本愛)、使用人・みの吉(中川翼)(C)NHK

しかし自己肯定感の低いていは、接客の鬼・つよや、さまざまな狂歌や絵を次々に生み出すクリエイターの皆さん、さらにそんな人たちを上手く差配して、すぐにヒットしそうな本を企画して売りさばく重三郎の働きぶりに圧倒され、重三郎から離れようとしてしまう。「自分は帳簿付けしかできない」と言うていに対して、SNSは「帳簿つけられるのが一番有用やが!?」「事務所で1人だけエクセルでマクロ組める事務員なのに『営業で仕事取ってくることも現場で働くこともできないし・・・』とか言い出した」と即座に応援の声が。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。家出した妻・てい(橋本愛)を迎えに行く重三郎(横浜流星)(C)NHK

でも重三郎は、ていが欠点だと思っていたことを全部肯定し、その上で「俺が目利きしたたった一人の女房」と断言! この一世一代の告白に、SNSは「そうだよ! おていさんは、おもしれー女だよ!!」「うわ鈍いくせに言う時は一番ズギャンと刺す言葉を相手に伝える男だぜ」「蔦重は色恋に関しては鈍チンだけど、絶対に裏表がなく自分に正直だから、ここぞという時に100点満点出せるんよね」「2人が同じ気持ちでいることが、互いに伝い合えて嬉しいよー!」という祝福の言葉が並んだ。

■ 3人目の「女」=歌麿、失恋にSNS同情

こうして晴れて夫婦となった2人だけど、その陰で泣いていたのが喜多川歌麿だ。もともと重三郎がていと結婚することに難色を示したり、「お前は義弟だから」という言葉にちょっと悲しげな顔で応えたりしていたから「あれ・・・これって嫉妬?」というモヤモヤが。そして2人が夫婦として結ばれた夜に、隣の部屋で涙ながらにお祝いの言葉をつぶやく姿が、これ完全に失恋の構図だった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。重三郎(写真右、横浜流星)に肩を組まれる絵師・喜多川歌麿(写真左、染谷将太)(C)NHK

さらに新しい本『歳旦狂歌集』では「歌麿門人 千代女」の名前でクレジット。この女性は短期間の間に数冊の本に関わり、その後すぐに消えていることから、歌麿の妻か、あるいは歌麿本人という説も出ている。それが同性ゆえに重三郎の人生のパートナーにはなれない、女性になりたかった・・・という、歌麿の切ない思いを込めた雅号だったということに。それを蔦重ママ&ていと並べて、今回のサブタイの「三人の女」の1人にするとは、BLネタで上手さが光る森下佳子らしい仕掛けだった。

SNSでも「ビジネス上での夫婦だったおていさんと蔦重がようやく心を通わせて本当に嬉しいのに、それ聞いてる歌が『よかったな蔦重』って完全に失恋してるの、どういう気持ちで見たらいいんだよ」「切ないわね歌ちゃん・・・生まれ変わることでしか叶わぬ思い」「完全に複雑な感情抱いている負けヒロインな歌麿」「なんで大河の染谷将太は毎回毎回重苦しい情念拗らせて最後は失恋するの?!」など、健気な歌麿に同情の声が集まっていた。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第26回より。完成した『歳旦狂歌集』を眺める絵師・喜多川歌麿(写真左、染谷将太)と重三郎(写真右、横浜流星)(C)NHK

ちなみに歌麿役の染谷は、重三郎への感情を「恋愛感情に当てはめることのできないなにか」だと、公式サイトのインタビューで応えていた。こういう「名付けられないなにか」という曖昧な人間のつながりは、お手本のような関係性が安易に見つからない分、演じる側も正解が見えなくてかなりの難関じゃないかと思う。

しかし染谷は、そういうBLの枠を越えた、得体のしれない「男男関係」を、すでに『麒麟がくる』(2020年)の織田信長役で体現していた。信長は明智光秀への激重感情を残忍な行為につなげてしまったけど、歌麿は絵画の才能を花開かせる方へと向かわせるのではないだろうか。生まれ変わった(?)染谷の感情表現に、今後も注目だ。

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。7月13日の第27回「願わくば花の下にて春死なん」では、田沼意知(宮沢氷魚)による花魁・誰袖(福原遥)の身請け話が停滞するところと、意知が関わっている蝦夷地上知の計画に、一橋治済(生田斗真)が介入するところが描かれる。

文/吉永美和子

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