お酒のおつまみ、何と言う? 関西人が使う「アテ」に意外な由来

2025.5.31 17:00

アテって関西弁?(写真は「キャプション by Hyatt なんば 大阪」のソーセージ盛り合わせ1300円)

(写真4枚)

お酒を飲む際、一緒に食べる軽食のことをなんと呼ぶだろうか。この時、「おつまみ」や「肴」ではなく「アテ」という呼び方を使う人は関西人である可能性が高い。

かくいう筆者も関西人なので前述の2つにくわえ「アテ」という言葉を使うこともあるが、どういった意味があるのかわからないまま使っていることに気づいた。そこで、「奈良大学」(奈良市山陵町)の総合研究所で方言の研究をしている岸江信介特別研究員に訊いてみることに。 

■ 実は隠語だった? 奥が深い「アテ」の由来

岸江氏によると、一般の国語辞典に「アテ」の説明はほとんど掲載されていないものの『三省堂国語辞典』(第八版)には、「あて(当て)」の説明として「〔大阪などの方言〕おつまみ。『酒の-』」という記述があったという。「他の辞典にはこの種の説明はありませんでした。したがって『アテ』は大阪方言というか、関西方言だと思います」と岸江氏。

さらに『新版 大阪ことば事典』(牧村史陽編)には「酒やビールのさかな。または、食事の副食物」と書かれており、現在使われている「お酒の肴」という意味だけでなく「おかず」という意味合いでも使われていたことが分かった。

ではこの「アテ」はどういった由来があるのかを岸江氏に尋ねてみると、「『近世上方語辞典』(前田勇編)によると『アテ』は『あてがう』からきたことばで、江戸時代の大工や操り浄瑠璃、芝居者(おそらく役者のこと)が使う隠語だったようです」と意外な事実を教えてくれた。

文政(1818-1831)の時代に刊行された『新ばん普請方おどけ替詞』という書物には大工が使う隠語として「おかずヲ、あて」というフレーズが登場しており、おかずのことを「アテ」と表す文化が存在していたことが分かる。そして文化(1804-1830)から天保(1831-1845)にかけて、現在使われている「酒の肴」という意味の「アテ」が流行したそうだ。

つまり、先に「おかず」の意味の「アテ」が一部の人々の間で隠語として使われており、その後に「酒の肴」という意味の「アテ」が流行語として広く使われるようになった・・・ということになる。

「もともとの語源は『主食にあてがう』という意味のようですが、さらに範囲が拡大し『酒にあてがう』という意味でも用いられるようになり、そこから『酒の肴』に定着したのだと推測できます」と岸江氏が話す通り、実は「酒の肴」という意味の「アテ」は後発ということがわかった。

■ 大阪・裏なんばでは「アテ」にちなんだ取り組みも

何気なく目にしていた「アテ」にも、意外な由来や歴史があるようだ。そんななか、6月12日に開業1周年を迎えるライフスタイルホテル「キャプション by Hyatt なんば 大阪」(大阪市中央区)では、この「アテ」にちなんだユニークな取り組みを実施している。

「裏なんば 食べ飲み歩きステッカーラリー」に、アテの文字が!
「裏なんば 食べ飲み歩きステッカーラリー」に、アテの文字が!

飲食店店主の「オモロイなんばを楽しんで欲しい」という思いのもとスタートした『裏なんば 食べ飲み歩きステッカーラリー』企画(9月30日まで開催、台紙・ステッカーが無くなり次第終了)。

同ホテルのカフェ&バー「トークショップ」に設置されている台紙を手に入れ、二次元コードを読み取って対象店舗を巡るというものなのだが(2店舗分のステッカーを集めるとオリジナルグッズを獲得できる)、お店側にオーダーする際、「アテちょーだい!」が合言葉として使われているのだ。

この取り組みは海外の観光客に向けても実施しているそうで、上方言葉として古くから使われている「アテ」がワールドワイドに広がっていると思うと感慨深いものがある。

取材・文/つちだ四郎

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