ドイツの巨匠、京都で32年ぶり! 日本独自の美術展が二条城で開幕

手前から《マアト=マニ》(2018ー24)、《スルムス・コルダ[心を高めよ]》(2018ー24)、《ボソン開放弦》(2023)
戦後ドイツ最大の芸術家と称される、現代美術の巨匠によるアジア最大規模の展示『アンゼルム・キーファー:ソラリス』が、世界遺産「元離宮二条城」(京都市中京区)で3月31日に開幕。京都では約32年ぶりという貴重な機会で、世界的にも注目されている。
世界第二次世界大戦が終結した1945年生まれ、80歳のアンゼルム・キーファーは、歴史・神話・文学・哲学・科学・天文学などを探求し、反戦への思いが作品に込められていることでも有名だ。
1993年の「京都国立近代美術館」以来となる京都での展示、作風の変化などについて29日の会見では「私は作る、あなたは観る、そこでどう思うか、考えるかだ。ドイツの作家ゲーテは、こう語った。アーティストは話さず、やるだけ」とキーファー。
同展の作品選定にもキーファーは一切関わらず、ニューヨークと東京でギャラリーを主宰する、主催者のファーガス・マカフリーに一任したという潔さ。「気づいていないような接点、脈絡を見いだしてくれたことに大変うれしく思っている。これまで行ってきた展覧会とは全く異なったものだ。この会場は自然光が多いため、パッとすべてが見えるのではなく、自然を介しながら、全体像を発見していくものになっている」と説明した。

同展は、作品名や説明の案内が一切なく、タイトルの「ソラリス(ラテン語で太陽に関係するもの)」、描かれているモチーフや使用されている素材、作品に書いてある文字などを通じて、その空間とともにどう感じるかは観客に委ねられている。キーファーの望みを意識するなら、音声ガイドは観終えてから聞くのがいいかもしれない(あえて、ここで読むのを止めるのもひとつの手だ)。
■二条城、日本だからこその展示
今回の展覧会が実現した背景も興味深く、マカフリーがキーファーのある作品を観て、「日本の紺碧障壁画を意識したものか?」とたずねたことがきっかけに。「知らない」と答えたキーファーに、狩野派や琳派の画集などの資料を次々と送付。そして、昨年にキーファーが二条城を約30年ぶりに再訪することで企画展を着想。1年後の実現に向けて具体的にプロジェクトが動き始めたのだという。
ちなみに今回の展示作品は、30年前の展示と比べると「金」を使用している作品が大変多く、「もともと金は作品に使っていたが、日本のギャラリーや美術館を訪ねたことを機に、大量に金を使うようになった」とキーファーは作品の変化について振りかえった。

そして、さらに興味深いのは、キーファーのインスピレーションの源として公言しているヴィンセント・ヴァン・ゴッホの影響だ。日本美術からの多大なる影響を認めているゴッホ、そのゴッホの作品を通じて、キーファーの中で日本が息づいているのではないかと思われる面も。部屋一面を覆う麦畑《モーゲンソー計画》(※1)は、ゴッホが描いた「麦」を想起させるとともに、共に敗戦したドイツと、日本のつながりも感じられるものとなっている。

入り口の真正面で出迎える《オクタビオ・パスのために》。今回のために描かれたこの作品は、原爆投下が題材に。同じ空間にある2019〜22年作の《オーロラ》も、1945年に広島で撮影された1枚の写真がきっかけとなっている。江戸時代の尼僧・歌人による大田垣蓮月の詩から生み出された《月のきるかさの雫や落つらん》などもあり、日本のこの場所だからこその油彩画・インスタレーションの33点が展示されている。
◇ ◇
展示は「元離宮二条城」内の二の丸御殿台所、御清所など。ショップでは、展覧会カタログ7800円、扇子や法被、トートバッグなどを販売。音声ガイド(800円)は、キーファーとの親交が深い田中泯が担当している。期間は3月31日から6月22日、9時〜16時半。チケット一般2200円(別途入城料800円)ほか、事前にネットでの購入が必要となっており、日時指定制。
また、役所広司のカンヌ最優秀男優賞の受賞作監督でもあるヴィム・ヴェンダースが、キーファーの生涯と現在を追ったドキュメンタリー『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』(2023)が関西の映画館「アップリンク京都」にて再上映される。4月25日〜5月1日と短い期間なので、お見逃しなく。
(※1)モーゲンソー計画…「第二次世界大戦中に、先勝後のドイツの占領政策として合衆国財務長官のヘンリー・モーゲンソーが立案したもので、工業国としてのドイツの再興を阻むため、脱工業化を進めて国中を農地化するというもの」(展覧会カタログ『アンゼルム・キーファー:ソラリス』の「キーファー作品の層の下から覗く日本(著:馬淵明子)」より
『アンゼルム・キーファー:ソラリス』
期間:2025年3月31日(月)〜6月22日(日)・会期中無休
時間:9:00〜16:30(最終入場は16:00)
時間:元離宮二条城 二の丸御殿台所、御清所など(京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
料金:一般2200円、京都市民割・大学生1500円、高校生1000円、中学生以下無料。以上別途二条城の「入城券」(一般800円ほか)が必要
※入場制限あり、事前にネットでのチケット購入必要
関連記事
あなたにオススメ
コラボPR
-
大阪アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
NEW 6時間前 -
話題の宇治・小倉エリアでハシゴ酒してみた[PR]
NEW 2025.12.19 19:00 -
関西の「縁起が良すぎる」手土産、新年のスタートに [PR]
2025.12.18 07:00 -
「初めてスナック行くなら宮崎」ってほんま?現地へ![PR]
2025.12.17 20:00 -
華やかスイーツ!大阪のいちごビュッフェまとめ・2026年版
2025.12.17 16:00 -
大阪のクリスマスディナー&ランチビュッフェ特集、ホテルで食べ放題・2025年版
2025.12.15 16:00 -
街歩きしながら再発見、OMOろい旅 in 小樽[PR]
2025.12.14 17:00 -
大阪・関西ランチビュッフェ2025年版、ホテルの食べ放題を満喫
2025.12.11 12:30 -
大阪スイーツビュッフェ・リスト2025年版、ホテルで食べ放題
2025.12.11 11:30 -
華やかスイーツ!京都のいちごビュッフェまとめ・2026年版
2025.12.5 14:00 -
大阪クリスマスケーキ2025年、高級ホテルから百貨店まで
2025.12.5 10:30 -
京都クリスマスケーキまとめ2025年、百貨店から高級ホテルまで
2025.12.4 11:00 -
独自の進化を遂げた「宮崎うどん」3つの謎に迫る[PR]
2025.12.3 08:00 -
京都アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.12.2 09:00 -
クリスマスはコスパ良く!ケーキやチキンをテイクアウト[PR]
2025.12.2 07:30 -
神戸を代表する4軒のバーで楽しむ『碧Ao』カクテル[PR]
2025.12.1 09:30 -
やなせ先生ゆかりの地で、「土佐弁」に触れる旅[PR]
2025.11.28 20:00 -
神戸アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.11.28 10:00 -
狙うなら今!北海道の穴場スポットへ[PR]
2025.11.28 07:30 -
街を丸ごと遊び尽くせる、OMOろい旅 in 旭川[PR]
2025.11.23 11:00 -
Osaka Pointでおいしくたのしく大阪めぐり[PR]
2025.11.21 17:00


トップ
おすすめ情報投稿
Lmaga.jpとは
ニュース
まとめ
コラム
ボイス
占い
プレゼント
エリア
































人気記事ランキング




写真ランキング






ピックアップ






エルマガジン社の本

