「ただいま私たちの故郷」30年目神戸長田に集う人、響く歌

新長田駅前での『1.17KOBEに灯りをinながた』でフリーライブをおこなったソウル・フラワー・モノノケ・サミット(1月17日/神戸市長田区)
1995年1月17日朝5時46分。阪神淡路大震災が発生してから30年をむかえ、全国各地で追悼行事がおこなわれた。「JR新長田駅前広場」(神戸市長田区)には約3000人が集まり、震災の犠牲者を悼んで灯籠に火を灯し、被災地を慰問するために結成されたバンド、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットが『満月の夕(ゆうべ)』などを演奏した。
神戸市長田区は震災により、919人が犠牲となった場所。1万5千棟以上の家屋が倒壊し、多くの人が避難所での生活や、この街を離れる選択を迫られた。

そんな長田区で開催された「1.17KOBEに灯りをinながた」は、震災で亡くなった人への供養、震災当時の記憶を振り返り、復興のへの願いを込めた取り組み。全国へ阪神淡路大震災の記憶を風化させないように、情報発信していくことを目的に1999年よりスタートし、今年で27回目の開催となる。今ではこのイベントを立ち上げた震災を経験した世代の人たちとともに、地元小中学校、大学生のボランティアなどが多数参加し、開催に尽力している。

◆ 長田のまちに響く、30年目の「満月の夕べ」
「ただいま!ここがわたしたちのふるさと。戻ってこれて良かった!」と伊丹英子が集まった観客に呼びかけ、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットのライブがスタート。彼らがこの地で演奏するのは2019年以来。同バンドは30年前の地震直後から、毎週のように長田をはじめ各被災地を訪れ、炊き出しと演奏をおこなっていた。

30年前にこの地で生まれ、ガガガSPやあいみょんなどさまざまなアーティストがカバーする「満月の夕(ゆうべ)」がはじまると、観客も一緒に口ずさみ、合いの手を入れる。いまや阪神淡路大震災の復興の象徴と言っても過言ではないこの曲は、震災発生後の「南駒栄公園」(神戸市長田区)で焚火を囲んで被災者たちと交わした会話をもとに作った曲だが、「あいみょんの曲やと思ったら、関西の変なおっさんの曲やった、とSNS上で書かれた」とボーカル・三線の中川敬は笑いながら語る。

その他『カチューシャの唄』『アリラン』『安里屋ユンタ』・・・当時被災者のために演奏をしてきた歌を長田のまちに響かせた。観客のひとりは「この場所で聴く『満月の夕』は特別」と言い、「彼らは昔からの憧れ、アイドル。こんなに良いライブを見せてもらって、一緒に写真も撮ってもらった。明日死んでもいいと思ったけど、それはあかんな。しっかり生きよう」と話した。

◆ さまざまな人が参加…語り継がれる震災体験
灯籠の点灯前には、日本の大学生や、ペルーやバングラデッシュ出身の若者もマイクを持ち、メッセージを発信。震災や防災についての想い、今後の夢などを語った。また、震災直後から長田エリア中心に多言語放送をおこなったFMわいわいが、サテライトスタジオを設置し複数言語で放送するなど、居住者に在日外国人が多い長田らしい取り組みも。


夜8時の灯りの消灯を前に、実行委員長・金宣吉さんに話を聞くと、今年は30年の節目で、ライブもあったことから、例年より参加者は多く、個人的にうれしい再会もたくさんあったそう。
「発生当時から一緒に活動して、今は長田を離れた人も今回たくさん来てくれた。27回続くとこの1.17の活動は年に1回の同窓会的な部分もある。今日30年ぶりに会った人もいたよ。当時、震災ボランティアで長田に来て、それをきっかけに福祉の仕事に興味をもったと相談してくれた学生さん。今回栃木からきてくれたけど、今は養護施設の施設長やってるって」。
「震災でみんな本当にしんどい、辛い体験をしてきた。でも『縁』やね。人と人が出会って、つながりができた。そのおかげで乗り越えられた。これから世代間での継承をしっかりやっていきたい」と30年目の想いを語った。

ボランティアとして2度目の参加となった神戸大学ボランティアバスプロジェクト代表・井上光起さんは、「無事に灯りがついて、正直ほっとしています。この日のためにずっと準備してきたので。普段は高槻に住んでいて、鷹取エリアに通って慰霊祭を手伝ったり、地蔵盆で子どもたちにお祈りの方法を教えたり・・・多くの人が震災で家族や家をなくし、それまであったコミュニティがくずれてしまった場所。複雑な気持ちを抱えながも、みなさん昔のまま立ち止まらずに、頑張って今を生きている。交流を重ねる中でそんな風に感じます」。

今後の活動について「今、僕たちは東北大学にある東日本大震災の支援をするボランティア団体との交流で刺激をうけ、阪神淡路大震災の体験を語り継ぐ活動をはじめました。30年前、神戸大学では学生と教職員が47人亡くなっています。震災を経験してない自分たちですが、語り部の方を招くなどして、発信をどんどんおこなっていきたい」と力強く語ってくれた。
震災から30年。「震災の記憶を風化させない」という強い想いは、世代を超えて、歌、そして語り、それぞれの形で継承されていく。
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