【光る君へ】下ネタやトラウマ、源氏物語につながる試練

『光る君へ』第7回より、道長からの和歌を燃やしてしまうまひろ(吉高由里子) (C)NHK
平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。2月18日放送の第7回「おかしきことこそ」では、まひろが初めて物語を発表したり、上級貴族の男たちの本音に触れるという、のちに『源氏物語』につながると思われるさまざまな試練が描かれた(以下、ネタバレあり)。
■ 第7回あらすじ「おかしきことこそ」
自らに使命を持たせることで、藤原道長(柄本佑)への思いを振り切ろうとしたまひろは、直秀(毎熊克哉)の散楽の一座に、右大臣家を笑い者にする物語を提案。それは大いに評判となるが、右大臣家の武者たちの殴り込みに遭ってしまう。それを知った道長はまひろを救い出すとともに、彼女の作った散楽を観たかったと告げて別れた。

その頃、漢詩の会で出会った藤原斉信(金田哲)が、まひろを打毬の見物に招待する。道長の活躍にひそかに心を踊らせるまひろだったが、控室で藤原公任(町田啓太)や斉信たちの「家柄のいい女は嫡妻にして、あとは好いた女子のところに通えばいい」という、貴族の男たちの本音を耳にしてしまう。その晩まひろは、道長から届いた恋文をひとりで焼き捨てるのだった・・・。
■ 「馬糞を頭に乗せる」下ネタに走った理由
学校の古典で初めて触れたときは「全54帖・・・長いな・・・」ぐらいにしか思わなかった『源氏物語』。しかし改めて考えると、あれほど鋭い人間考察と、読者を最後の1巻まで惹きつけ続けるストーリーテリングが、基本的に外の世界を自由に知ることができなかった、当時の貴族の女性から出てきたというのは、相当奇跡的なことに思える。

しかしこの『光る君へ』では、それが机上から生まれたものではなく、実はこんな背景の積み重ねがあったのでは・・・という想像を「いやいや、それはないやろ!」となる、ギリギリのラインまで膨らませていくつもりだということを、多くの視聴者がわかってきたことだろう。この第7回では、ついにまひろが作家デビューを果たすという、大きな第一歩が描かれた。
しかしその1作目は小説ではなく、散楽の原案。それも「おかしきこと」に特化したコメディで、しかも「全員が馬糞を頭に乗せる」という下ネタなのが、生真面目なまひろから生まれたというのは一見意外に思える。しかし『源氏物語』より前に誕生した小説『うつほ物語』『落窪物語』などには、多分笑いを取るために、直球の下ネタが結構出てきているので、おそらくこれらの小説を読んでいたまひろも、「笑いを取るにはこうするのか」と倣ったのかもしれない。
結果的には、笑いものにした当事者からの武力行使でワヤになってしまったが、自分が作った作品で見知らぬ人々が笑顔になっているのをその目で見たのは、クリエイターとして忘れがたい、貴重な経験となったに違いない。『源氏物語』のエンタテインメント性の根源として、なかなかに説得力のある解釈だった。
■ 「雨夜の品定め」を想起、トラウマになりそう
そしてもうひとつ、このうれしい経験とは逆に、トラウマとして残りそうな出来事が、藤原公任や藤原斉信らが、「女は家柄が大事、身分が低い女はどんなに好きでも正妻にはなれない」という現実を突きつけたこと。この会話によって2人のイメージはダダ下がってしまったが、通い婚が主流だった当時、男性は生活基盤を盤石にするためにも、できるだけ良い家の娘を見つけるのが、メジャーな生存戦略だったというのは、2人のために弁護しておきたい。

しかしこのときの、打毬の見物に来ていた女性たちを好き勝手に評価する男性たちの口ぶりたるや、少しでも『源氏物語』に触れたことがある人なら、重要なエピソード「雨夜の品定め」を100%想起しただろう。当時の男性の美意識や恋愛観を雅やかに描いたシーンかと思いきや、作家本人は案外「本当に男って奴は・・・」などと、恨みを込めながら書いたのかもしれないと思うと、グッと人間味が増してくる思いがした。
しかし、まひろ&道長カップルにとって不幸だったのは、公任&斉信から同意を求められた道長が、上の空で適当に応えた「ん?」という返事が、影から声だけ聞いていたまひろには、同意に聞こえてしまったことだ。その足で道長からもらった大事な和歌を、暗い目で燃やしてしまったまひろ。この闇落ちの感情もまた、『源氏物語』の大事なパーツになりそうだけど、むしろ次回辺りで誤解が早々に解けてくれることを祈りたい。
『光る君へ』は、NHK総合では毎週日曜・夜8時から、NHKBSでは夜6時から、BSP4Kは昼12時15分からの放送。2月25日放送の第8回『招かれざる者』では、道長の父・兼家(段田安則)が病に倒れる一方で、道長の兄で、かつてまひろの母を殺害した道兼(玉置玲央)が、まひろの家を訪ねてくる様子が描かれる。
文/吉永美和子
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