三谷幸喜が「一番やりたい人たち」で魅せる新作、大阪が笑いの渦に

舞台『オデッサ』より、(左から)警部役:宮澤エマ、旅行者役:迫田孝也、青年役:柿澤勇人(写真/宮川舞子)
脚本家・演出家の三谷幸喜の3年ぶりとなる新作舞台『オデッサ』大阪公演が、現在絶賛上演中。三谷が「今、一番やりたい人たち」と明言した柿澤勇人、宮澤エマ、迫田孝也が繰り出す、ときにおかしくときにスリリングなやり取りに、笑いとハラハラが止まらない世界だった。
■ これぞ三谷コメディの真骨頂!
アメリカの田舎町・オデッサで起こった殺人事件の容疑者として、英語が話せない日本人旅行者・児島(迫田)が拘束される。日系人だが日本語が話せないカチンスキー警部(宮澤)は、現地で働く日本人・スティーブ日高(柿澤)を通訳にして取り調べようとするが、児島とスティーブはどちらも鹿児島出身ということで意気投合。「自分が犯人だ」と言い張る児島に、なにか事情を感じたスティーブは、児島の自供をことごとく別の話に「通訳」してごまかしていくが、それが意外にも事件の隠された部分を暴いていき・・・。

「言葉、言葉、言葉!」というセリフが劇中に出てくることが象徴するように、まさに言葉のトリックで遊び倒した作品だ。一番の見どころは、互いの言語がわからないのをいいことに、嘘の通訳を重ねていくスティーブの奮闘。「児島が自白している」ということがカチンスキー警部に伝わらないよう、さまざまな難題を力業ですり抜けていく姿は、これぞ三谷コメディの登場人物の真骨頂だ。
■ 「字幕」を使った新しい言葉の使い方
楽しいのは、この迷通訳ぶりだけではない。英語が飛び交うシーンで登場する字幕も、これまでの演劇の字幕にはない、「4番目の役者」とも言うべき良い仕事をしている。これもまた三谷が目指した、新しい言葉の使い方の提示だろう。一方「音」の部分では、近年の三谷作品に欠かせない荻野清子のピアノ生演奏が、随所で絶妙な効果となっている。

ディスコミュニケーションを巧みに笑いにしたコメディは、次第に日米の差別などのセンシティブな話題に触れ、少しずつ深度を増していく。そして登場人物たちも観客たちも、予想し得なかった「真相」に直面することになる。

笑いあり、ミステリーありと、新作を3年も待たせただけのことはあると思えるほど、三谷の神技的な作劇術がふんだんに盛り込まれた世界。それをコメディもシリアスも自在でありつつ、そろって人間的な愛嬌にもあふれた柿澤、宮澤、迫田の3人が、英語や鹿児島弁などのスキルを生かしながら、これ以上はない形で体現した。そしてやはり三谷作品は、映画もドラマもいいけれど、やっぱり演劇が一番だということを、しっかりと確認できるはずだ。
『オデッサ』は2月12日まで「森ノ宮ピロティホール」(大阪市中央区)で上演。チケットは1万1000円で一部完売回あり。毎公演若干数の当日券(立見席7000円を含む)が発売されるので、詳しくは公式サイトやSNSなどでご確認を。
取材・文/吉永美和子
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