大阪・御堂筋線のシャンデリア、その魅力は「真の遊び心」

2023年3月にリニューアル工事が完成した「Osaka Metro」御堂筋線・心斎橋駅のシャンデリア
大阪の大動脈として毎日多くの人が利用する「Osaka Metro」御堂筋線の駅に、インパクト抜群の「蛍光灯シャンデリア」が設置されていたことを知っていますか?
たとえば、以前の「心斎橋駅」には、むき出しの蛍光灯が42本もならべられた照明器具が10基、ホーム階の大空間に吊られていました。そして、2023年3月にリニューアル工事が完成した心斎橋駅にも、「蛍光灯シャンデリア」と同デザインの照明器具が、光源をLEDに換えて残されています。
そもそも、なぜあんなユニークなデザインの「蛍光灯シャンデリア」が、地下鉄の駅に設置されたのか。また、リニューアル後も心斎橋駅に同じデザインの照明器具が残された理由は? 謎を解明すべく、「Osaka Metro」(本社:大阪市西区)と、大阪公立大学教授・建築史家の倉方俊輔さんに訊きました。
■ はじまりは「大大阪時代」を反映する豪華絢爛な地下鉄の大空間

御堂筋線は、1933年5月20日に日本初の公営地下鉄として開業。関一大阪市長のもと、御堂筋の道を拡幅し、その下に地下鉄を造るという難しい大工事の末に、まず梅田駅から心斎橋駅が開通しました。
地下鉄以前の市電開業から始まる大阪市営交通の100年間の歴史をまとめた「大阪市交通局百年史」(2005年発行)には、「当時関市長は、『世界に恥じないものを造れ』との指示があったと伝えられている。そこで、ホームの天井高を大きく取り、構造もアーチ型(梅田・淀屋橋・心斎橋)として、雄大かつ壮麗な感じをもつ駅を設計した」との記述がありました。
「Osaka Metro」の広報・角野功さんは、「当時大阪は発展して活気があった。そのような時代のなか、将来を見越して長編成列車にも対応できるよう、開業当時は1両編成であったにも関わらず今とほとんど変わらない長さのホームを造りました。すでにエスカレーターもあって、とても豪華だったんです。昭和初期の時代にあれだけの高いアーチ天井を作った地下鉄の駅は、おそらく日本にはなかったと思います」と、開業当時の御堂筋線の壮大さについて語ってくれました。
開業当初、照明器具は行燈デザインで、当時一般的だった光源・白熱灯が使われていたそう。その後、時代が白熱灯から蛍光灯に移ったのに合わせて、淀屋橋は1952年、心斎橋駅は1953年、梅田駅は1967年に、蛍光灯シャンデリアに変更されています。「Osaka Metro」には「ホーム階のアーチ天井に負けない立派なシャンデリアを目指した」との記録があるようです。
■ 「制約があるからこそデザインが花開く」シャンデリアに隠された遊び心

注目したいのは、蛍光灯シャンデリアのデザインが駅によって異なる点。たとえば心斎橋駅は円錐形に、梅田駅は3本ブーメランのようなベースに直管の蛍光灯が縦にならべられていました。
倉方さんは「規格品の蛍光灯を使って、駅ごとにそれぞれ違った形にデザインする共通性と多様性という別々の要素がひとつになっているところが、蛍光灯シャンデリアの面白いところです」と魅力を語ります。
「蛍光灯シャンデリアは、光源そのものを見せることで、メンテナンスが容易になって合理的だし、今見ても新しいですよね。照明器具のフードのデザインではなくて、棒状の規格化された蛍光灯をお題として与えられて、そのなかでどれだけデザインできるかという、ある種の制約があるからこそデザインが花開く。そういう真の遊び心というものを、当時の地下鉄に関わる人たちは持っていたんだと思います」(倉方さん)
リニューアルした心斎橋駅で、蛍光灯シャンデリアのデザインを踏襲した理由について、「Osaka Metro」は「空間全体として開業当時のアーチ構造を活かし、シャンデリアは元の佇まいを生かしながら、最新のLED技術で復元することで長い歴史を感じていただける空間としました」と、発表しています。
開業当時の蛍光灯シャンデリアのデザインコンセプトについて、残念ながら「Osaka Metro」に資料は残っていませんでした。それでも、大阪が大きく発展した「大大阪時代」に進められた御堂筋の整備によってホームに大空間ができ、大阪の遊び心を象徴する唯一無二の「蛍光灯シャンデリア」が生まれたことは間違いないでしょう。
取材・文/太田 浩子
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