三谷幸喜が認めた2人の俳優、25年ぶりに目撃する究極の喜劇

三谷幸喜が作・演出を手掛ける舞台『笑の大学』(撮影/細野晋司)
脚本家・三谷幸喜の名作二人芝居を、内野聖陽・瀬戸康史の出演で25年ぶりに復活した『笑の大学』の大阪公演が、3月23日に開幕。芸達者な俳優2人の演技合戦と、タイトル通り笑いどころにあふれた会話の応酬に、会場は終始大きな笑いに包まれた。
すべての台本は事前に検閲が必要だった、昭和15年の日本。劇団「笑の大学」の座付作家・椿(瀬戸)は、新任検閲係・向坂(内野)の検閲を受けるが、喜劇に一切理解がないという向坂は、いろいろな難癖を付けて、上演許可を出そうとしない。しかし椿は向坂の指摘を逆手に取る形で、台本をどんどん変更し、それは思いがけず「完ぺきな喜劇」になっていく・・・。
■ 再演のきっかけは「内野(聖陽)さんの向坂が見たい」
公演パンフレットで三谷が「内野さんの向坂が見たい」と思ったのが、本作の再演のきっかけというだけあって、とにかく内野演じる向坂のキャラクターが秀逸だ。強面で気難しい人かと思いきや、突然家でカラスを飼い始めた話を始めるなどの天然ボケな面もチラ見せし、でも椿の揚げ足を取りまくる小ズルさもありと、向坂の多面性を巧みに表現する。

対する瀬戸が演じる椿は「とにかく笑いと舞台が好きなんです!」オーラにあふれた、真っ直ぐでピュアな作家として描かれた。向坂のいちゃもんに逐一丁寧に応え、笑えることを証明するために自分で演じて見せるところが、どれもとにかくチャーミング。しかし「笑いがいかに必要か」を語るところでは、一転シリアスな雰囲気となり、向坂すら圧倒する空気に。
そうして検閲→修正→検閲を繰り返すうちに、台本のクオリティだけでなく、向坂と椿の関係も変化。ついには2人で衣装をまとい、実際に演じて試してみるほどになってしまう。このときの内野のめちゃくちゃ素人くさい演技と、女役をやったときの瀬戸の「色っぽいけどおかしい」という塩梅がどちらも絶品で、この2人で再演されて本当に良かったと思ったほどだ。

■ 25年前との違い、書き換えられた「ラストシーン」
25年前の上演では、三谷が考える理想の作家像や、クリエイターは社会の軋轢とどのように向き合うか・・・という部分にスポットが当たりがちだった。しかし実は、笑いを知らなかった向坂という男が、椿を通じて笑いの楽しさと喜びに目覚める話でもあったという側面が、この再演では強調されたように思える。今回の上演用に書き換えられたラストシーンは、まさにその現れで、向坂の心情を思うと目頭が熱くなってしまった。

やはりこれが三谷の代表作ということを再認識させられただけでなく、内野や瀬戸にとっても、代表する役柄の一つになることは間違いないと思える『笑の大学』。
大阪公演は3月26日まで「サンケイホールブリーゼ」(大阪市北区)にて。4月13日~16日には「兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール」(兵庫県西宮市)で上演。前売は完売しているので、当日券の情報は公式サイトでご確認を。
取材・文/吉永美和子 写真/細野晋司
『笑の大学』
大阪公演
会場:サンケイホールブリーゼ(大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー7F)
期間:2023年3月23日(木) ~ 26日(日)
料金:1万円
兵庫公演
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール(兵庫県西宮市高松町2-22)
期間:2023年4月13日(木) ~ 16日(日)
料金:1万円
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