レトロ建築の再生で「価値に気づいた」若者たち、変わる姫路

夕方から開催された、若手メンバーを中心とした交流会。網干地域のこれからについて、さまざまな意見が飛び出した(6月4日・姫路市)
大正時代に建てられた、レンガ建築を活用したレストラン「旧網干銀行 湊倶楽部」(兵庫県姫路市)。「網干銀行」として竣工(完成)した1922年から今年5月で100年になるのを記念して、6月4日に『あぼし百年祭』がおこなわれた。
実は、このレストラン。2019年11月にオープンした背景には、まるで映画のような感動エピソードがある。
■偶然が重なって生まれたレストラン

銀行としての役目を終えた後、近隣の住民が買い取って2015年まで服飾店となっていたこの建物。だが、持ち主も高齢になり「建物の外観を活用してくれる人に譲りたい」と、しばらく売り手を探していた。
2018年、ある大学院生の行動が転機となる。当時、京都大学大学院で景観設計学を専攻していた網干出身の河北咲良(さくら)さんだ。彼女は帰省中に散歩をしていたとき、この建物が売られているのを見つけ、ツイッターに投稿した。
とはいえ、フォロワーしか見られない「鍵つき」の投稿。拡散目的ではなく本当に「つぶやき」だったのに、それをきっかけに河北さんの知人で会社役員の鵜鷹(うたか)司さん(現レストランオーナー)が、建物に魅せられ購入したのだ。
鵜鷹さんは、このときのことを「建物に召された」と表現。東京でパン職人をしていた息子の絢(けん)さんとその友人の濱田大規さんを姫路に呼び戻し、自身の会社の1事業として、レストランを開くことにした。
■網干の「これから」を考える若者たち

当初から建物を「網干のみんなのもの」と言い、単なるレストランにとどまらず網干地域の活気につながれば、と考えていた鵜鷹さん。そして河北さんもその思いを受け、大阪の建築会社に就職した現在、休日を利用して網干でまちづくり活動を始めている。
偶然が重なったレストラン誕生から2年半経ち、百年祭では姫路市長も参加した記念式典や内覧会が実施。その後は、河北さんが立ち上げた若者中心のまちづくりグループ「汀(みぎわ)ラボ」による交流会もおこなわれ、網干にゆかりのある人ら約20人が参加した。
「古くて魅力的な建物がたくさん残っている」「まちの人の情が厚い」と網干の魅力が語られた同会。さらに、「商店街で飲食できるようになってほしい」「コワーキングスペースがほしい」「高齢者が安心して免許を返納できる交通の仕組みができれば」など、課題や今後に期待する意見も多数寄せられていた。
■レトロ建築の再生を機に、商店街にも入居者が

秋祭りが盛んな網干地域は住民は少なくないものの、商店街の多くは空き店舗となり少しさみしい雰囲気があるのも否めない。そんななか、このレトロな建物をきっかけに、商店街の空き店舗に入居した人がいる。
設計デザイン事務所「RECORD(リコード)」の金谷考祐さんだ。網干出身の金谷さんだが、服飾店だったころの建物は存在自体を知らなかったといい、レストランになった後に知ると河北さんに連絡し、網干のまちづくり活動に関わるようになった。
地域のいろんな人とつながるうちに商店街の空き物件を紹介され、今年1月にはインテリアショップを兼ねた事務所をオープン。金谷さんは、「新築で家を建てる側だったけれど、地元の歴史ある建物や街並みを活用することの価値に気づきました」と話す。

ほかにも、建築写真家がアトリエを開いたり、店主が病気で閉鎖した喫茶店を若者が再開したり。少しずつではあるが、商店街に新しい火が灯りつつある。
■そして、河北さん自身は・・・

こうした網干のムーブメントのきっかけとなった河北さん自身は、旧網干銀行がレストランに生まれ変わる前後で、どんな変化があったのだろうか。
「この建物に関わるまでは、地域の人とコミュニケーションを取ったことがありませんでした。でもレストランをきっかけに、輪が広がっています」とのこと。
実は河北さん、人に頼るのが苦手なタイプだという。「つい自分で抱えてしまうんです。けれど今日のイベントも、仲間が手伝ってくれました。周りに頼れるようになれば、もっと大きいことができるかなと思います」。
仕事では大阪や三重のまちづくりに携わり、若者が地域に関わることの大切さを実感。だからこそ「本業がどれだけ忙しくなっても、網干の活動は続けます」と話す彼女の表情はすがすがしく、頼もしさが感じられた。
取材・文・写真/合楽仁美
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