ウォーリー木下「小劇場がなかったら、演劇をやっていない」

演出家・ウォーリー木下(8月下旬・神戸市内)
『東京2020パラリンピック』開会式の演出を務めた、演出家・ウォーリー木下。2018年には、神戸市の公立劇場「神戸アートビレッジセンター(以下KAVC)」のプログラム・ディレクターに就任し、現在は12月から始まる企画『KAVC FLAG COMPANY』をはじめ、地元の演劇シーンを盛り上げる活動に精を出している。そんな木下に、その想いや今後の意気込みについても訊いた。
取材・文/吉永美和子
──ウォーリーさんが演出に目覚めたのは、「KAVC」のイベントがきっかけだったそうですね。
2001年に、いろんな劇団が短編芝居を上演するイベントの、ディレクターをやったんですね。その頃の僕は、脚本を書く方に力を入れてたんですけど、それに行きづまってた時期だったんです。でもいろんな劇団の作品に触れることで、演出のおもしろさに目覚めて、さっそく名刺に「演出家」って刷りました(笑)。
──このコロナ禍で、小劇場演劇の存在意義について、当事者でも悩んだ方が多かったはずです。今回のように、地方の小劇場でコツコツ実力を付けていけば、国際的なイベントにも関われる可能性があるという前例を作れたことは、大きな意味があったと思います。
僕は80年代の小劇場ブームに影響を受けて演劇を始めたし、小劇場という場所がなかったら、演劇をやってなかったと思います。演劇が社会に与えるものって、たとえば数値化であるとか、目に見える形で提示するのは難しいけど、実際はいろんな人を助けていると思うんですよ。それは演劇に限らず、音楽や芸術だってそう。小さなシーンでも絶対不要不急じゃないと思うし、僕もやり続けなくちゃいけないという使命感を持っています。
──ウォーリーさんがディレクションした『KAVC FLAG COMPANY』が、まもなく始まります。今注目しておきたい5劇団が、「KAVC」を自由に使って公演ができるという(注:その後1劇団の公演中止が決定し4劇団に)、これもまた「楽しく自由にやれる環境を作る」の精神を反映した企画ですね。
今年で3年目ですけど、今まで出てくれた人たちが戯曲賞を取ったり、大きな舞台の演出に抜擢されたりして、うれしいですよね。何を表現するかも自由だし、この企画を通して何を目標にするのかも自由。演劇って、本当にいろんな道があるんですよ。僕も20年前には、自分が2.5次元※の演出をしてるなんて、想像もしていなかったし。いろんな表現のセレクトができる場所に、どんどんみんなが行ってくれるきっかけになったら、本当にステキだなあと思います。
※編集部注/人気バレーボール漫画の世界を、プロジェクションマッピングで見事に立体化した『ハイキュー!!』(2015年)をはじめ、「2.5次元モノ」舞台も数多く手掛けている
──観客にとっても、完成されたものというより、可能性の萌芽を見に行くという楽しさがありますよね。
たしかにそれはあります。あのとき自分が「おもしろい」と思った小さな芽が大きくなって、世の中に広く「おもしろい」と思われるときって、めちゃくちゃグッと来ますもんね。
──パラリンピック開会式を通してのウォーリーさんに、それをすごく感じました。この経験をきっかけに、今後取り組んでいきたいことはありますか?
式に出演したパフォーマーの方たちと、また何かやりたいって気持ちはもちろんあります。今後彼らがカウンターカルチャー化していくという気が、僕はすごくしているので、そのお手伝いが少しでもできればと思います。
──片足のダンスとか、盲人だからこその独特なギター奏法とか、本当にカッコいいパフォーマンスを世に知らしめただけに、どんどん続けていきたいですよね。
そうですよね。でも本当にステキなのは、たとえば群像劇とかで、障がい者の俳優さんが普通に入っている世界になることじゃないかと。開会式の最後に、中村一義さんの『世界は変わる』のストリングス・バージョンを使ったんですけど、やっぱり「世界は変わる」と信じないと、何も変わらない。あの片翼の飛行機の少女が感動を呼んだのも「ここから何かが変わるかもしれない」と思わせる力が、(演じた)和合(わごう)由依さんにあったからなんです。小さいきっかけかもしれませんけど、この機会に日本の社会が、障がい者や健常者の垣根を壊していく時代に変わっていってほしいと、本当に思っています。
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