松坂桃李主演「あの頃。」・・・今泉監督が描くアイドルの恋愛と卒業

松浦亜弥をきっかけに、主人公・劔が仲間に加わり、後に「恋愛研究会。」として活動していく。(C)2020『あの頃。』製作委員会
松浦亜弥、モーニング娘。などハロー!プロジェクトの所属アイドルに青春を捧げた若者たちの物語『あの頃。』が、2月19日に公開。劔樹人によるコミックエッセイをもとにした『あの頃。男子かしまし物語』の映画化となる、
松坂桃李演じる主人公・劔が、ハロプロヲタクの集まりである「恋愛研究会。」の一員となり、仲間たちと掛け替えのない時間を過ごす姿を描く同作。メガホンをとったのは、大ヒット作『愛がなんだ』(2019年)などで知られ、また乃木坂46のミュージックビデオなども手がけた今泉力哉監督。今回は、そんな今泉監督に『あの頃。』について話を訊いた(一部ネタばれあり)。
取材・文/田辺ユウキ
「松坂桃李さんは、オーラが消せて何者にでもなれる」
──今回、『南瓜とマヨネーズ』(2017年)の冨永昌敬監督が脚本をつとめ、『れいこいるか』(2020年)のいまおかしんじ監督が重要な役で出演。あとエンドクレジットを観て気づいたのですが、山下敦弘監督も出演者に名前が載っていて「え、どこにいた?」となりました。
山下さんは本当に気づかないと思います(笑)。劔が、松浦亜弥の握手会に参加する場面のエキストラに混じっているんで、『ウォーリーをさがせ!』状態です。俺も事前に分かっていなくて、編集していたら「あ、山下さんがいた!」って。
──ハハハ(笑)。今回脚本をお願いした冨永監督、いまおか監督、山下監督は、まさに今泉さんが尊敬していたり、ずっと好きだったりする人たち。そもそも今作は、好きなものが共通している若者たちが集まる物語。今泉さんにとっての『あの頃。』みたいなスタッフ&キャストだなと感じました。
本当にその通りですよね。プロデューサーから企画の話をもらったとき、最初に考えたのが「脚本家をだれにお願いしようか」ということ。大阪の話だし、それこそ大阪芸術大学出身で当事者として知っている人も考えたんです。それこそ山下さんとよく組んでいる向井康介さんとか。
ただ、アイドル周りだけではなく男性ファン同士の距離感や男っぽいことが描けて、さらに下世話なこと、そして下品なことも逃げずにできるような話に・・・と全体の構成も考えていくなかで、プロデューサーから「冨永さんはどうか」という提案がありました。
冨永さんが脚本だけを担当する映画ってなかったから、「やってもらえるかな?」と思ったんですけど、引き受けてくださって。そして結果的に、すごくおもしろい脚本になりました。
──そうなんですよ。原作とはまた違う、実に映画的な物語と展開になっているんですよね。
冨永さんの脚本は勉強になった部分が多いです。特に、劔が大阪から上京するパート。あそこって「一旗あげてやる」という大きな出来事ではないし、意外と作り方が難しかった。ただ、ナレーションと出来事をうまく混ぜることで、とてもスムーズに見せられたんです。
──大げさな別れのシーンもなく、サラッと劔の東京暮らしの話に入っていきましたね。
自分ではきっと長尺を使っちゃうような箇所が、すべて見事にクリアされていて。あと完成したとき「すごい」と気づいたのは、大学での文化祭のシーン。イベント当日の様子と、その準備や前談としてしゃべっている様子がシーンバック(※複数の場面が交互に描かれる)しているんです。
準備の場面で「この曲で盛り上がるのは俺たちだけだろう」とか言うじゃないですか。で、次にイベント当日の場面がきて、その曲を流したらめちゃくちゃ盛り上がるという。

──あの構成はおもしろさが膨らみました。
俺はもともと、時間通りに準備から当日という風に進行した方が良いと思っていたけど、でもそうすると文化祭がただの点描、つまりイベントを飛び飛びに描くことになっちゃう。それを入れ子にすることですごく見やすくなった。全編、ワンシーンワンシーンが長くならないし、その辺が冨永さんの脚本のすごさです。
──いまおか監督もおいしい役で出演しています。今泉さんは『れいこいるか』を絶賛されていましたけど。
そうなんです。この映画の撮影は『れいこいるか』を観る前でしたけど、もちろん面識はあって。あの役は、どんな俳優がやっても「あ、この人なんだ」と色がついちゃう。でも、いまおかさんは先入観を持たれないというか、匿名性もあるし、しかもおもしろい。あと男前だから松坂さんとのリンクもあるんですよね。
──そうそう、横並びで観ると結構似ているんですよね。
絶妙でしたね。でもいまおかさん、すごく緊張されていました。撮影を終えたとき「うわー、めっちゃ緊張した。よっしゃー」って叫んでいましたね。

──そして何と言っても劔役の松坂桃李さん。今回は特に、松浦亜弥さんのMVに釘づけになる場面をはじめ、松坂さんの力量を感じました。
唯一無二の位置にいる、どメジャーな俳優だけどオーラが消せて何者にもなれるのは、ほかの人では難しいかもしれない。もうちょっと俳優さんの色が出ちゃうはずなので。でも劔の目にちゃんと光がなかったり、すごいですよね。
現場に来ていた劔さんを松坂さんが観察して盗んでいたそうですけど、それでも芝居っぽくならずそういうことができる。ご本人はきっと、自分の見た目や俳優としてのポジションについてちゃんと分かっているはずなのに、その上で普通の人がやれるんです。
──そうそう、映画のなかではちゃんと「普通の人間」なんですよね。
それって松坂さん自身が普通の人のように扱われることを気にしていないから、出来るんじゃないかなって。俺も出席した2018年の『映画祭TAMA CINEMA FORUM』のとき、松坂さんが最優秀男優賞を受賞して来ていらっしゃって。
普通、俳優さんは個別の部屋に待機して、映画祭スタッフが進行説明をしに行くんですけど、松坂さんは、俺らが控え室と使用していた大部屋みたいな部屋にいらっしゃって。ちょうど、『カメラを止めるな!』チームもいたんですよね。そういう大勢いる場に現れて。みんなと一緒に全体説明を聞いていて。ああ、いい人だなあと。そういう姿がとても印象的でした。
『あの頃。』
2021年2月19日(金)公開
原作:劔樹人『あの頃。男子かしまし物語』
監督:今泉力哉 脚本:冨永昌敬
出演:松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウ、ほか
配給:ファントム・フィルム
(C)2020『あの頃。』製作委員会
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