世界が注目する新人監督、奥山大史の魅力

『サンセバスチャン国際映画祭』で最優秀新人監督賞に輝いた奥山大史監督
日本映画界からまたひとり、世界で注目される才能が現れた。長編デビュー作『僕はイエス様が嫌い』が、スペインの『サンセバスチャン国際映画祭』で最優秀新人監督賞に輝いた奥山大史(おくやま・ひろし)監督だ。
同賞は、かつて韓国のポン・ジュノ監督が受賞するなど新しい才能の発見の場として知られる。奥山監督は現在23歳。受賞時は22歳で、史上最年少記録でもあった。撮影も監督本人がおこない、『ストックホルム国際映画祭』、『ダブリン国際映画祭』では最優秀撮影賞も受賞している。
映画『僕はイエス様が嫌い』の主人公は、東京から雪深い地方へ引っ越してきた小学生のユラ。キリスト教系の学校に転入し、それまでにない習慣に戸惑う彼の前に現れたのは、なんと小さなイエス様だった。ほかの人には見えないけれど、なんとなく願いごとを叶えてくれるイエス様を信じ始めた頃、大きな試練が訪れる・・・。日本映画では珍しい、少年と宗教との出会いが瑞々しくユーモラスに描かれ、そしてさらに、ある出来事によって少年の宗教観に変化がもたらされていく。
「初めから宗教をテーマにしようとしたわけではないんです。描きたかったのは少年たちの友情でした。『サッカー好き?』のひと言で始まる子どもたちのピュアな友情、そのなかにある信じることや祈ることを描こうとしたら、この形になったんです。あと、学校はミッション系でも家には仏壇があって、ある意味平気で宗教を越える、日本のそういう文化もそのまま描きたいと思っていました」
「小さなイエス様を出して、キリスト教国で受け入れられるか心配はありましたが、観てくださった方は、あれは主人公の想像の産物だとちゃんとわかってくれていました。むしろ『神の沈黙』について、日本人のあなたがどうして我々と同じ疑義を抱いているのか、といったことを感心したように尋ねられることが多かったです」と、スペインをはじめ、ヨーロッパ各国で受け入れられた様子を話してくれた。

「とはいえ、アメリカでは拒否反応もあって、結局上映させてもらえなかった。難しいところもありますよね」とも言う。多くのシーンが、ワンシーン・ワンカットで撮られているにもかかわらず、出演する子どもたちはとても自然な演技をしていて、監督の優れた演出力を感じさせる。そして、スタンダードの画面構成に迷いがない。
「僕自身の実体験がもとになっていて、少し前の時代の話だからスタンダードを選んだと書かれていることが多いですが、そうではないんです。実体験がベースではあるのですが、それとは関係なく、スタンダードで撮ることは初めから決めていました。スタンダードの画角が好きだし、なにより構図が決めやすい。絵画のような構図を一貫して撮りたいという気持ちが強くあったんです」と、しっかりした作家性も持ち合わせている。

「映画のなかの小さなイエス様は少年の想像ですが、子どもと『小さな生き物』との出会いや絡みは、宮崎駿監督の『となりのトトロ』(1988年)を参考にさせてもらいました。また、物語が引っ越しから始まるというのも、多くのジブリアニメからの影響です。子どもたちを生き生きと捉えるのは、是枝裕和監督の初期作品に学ばせてもらっています。次回作は構想中ですが、少年・少女を撮り続けていきたいと思っています」。
東京ではすでに公開されている同映画だが、関西エリアでは7月5日から「大阪ステーションシティシネマ」(18日まで)、7月12日から「シネ・リーブル神戸」、8月17日から「京都シネマ」で公開となっている。
取材・写真/春岡勇二
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