盗難で唯一戻った仏像の右手、特別公開

東京文化財研究所の化学分析の結果でも「白鳳時代の金銅仏として矛盾がない」という結果が出たという香薬師像の右手。高さ8.6センチと小ぶりで可愛らしい
長らく所在不明になっていた「新薬師寺」(奈良市高畑町)の香薬師像(国指定重要文化財・銅造薬師如来立像)。2015年に発見されたその右手が、約70年ぶりに同寺で公開されている。
白鳳時代(美術史の時代区分で645~710年頃)の仏像のなかでも傑作と名高い香薬師像は、新薬師寺創建に由来し、光明皇后が念持仏としてあつく信仰したと伝わる美仏。明治期に2度の盗難で両手足が切り離され、3度目の盗難(1943年)で行方知れずになった受難の仏像として知られている。
これまで、ノンフィクション作家・貴田正子さんと新薬師寺・中田定観住職の調査により、同像の右手だけが盗難を免れていたことが判明。しかし、その右手も寺から流出しており、長らく所在不明になっていた。その後、右手は鎌倉の東慶寺で保管されていることがわかり、2015年に確認。奇跡の大発見として話題になった。

寺に戻された右手は、安全のため「奈良国立博物館」へ寄託。今回は『正倉院展』の期間にあわせ、本来安置されていた新薬師寺で約70年ぶりの特別公開となる。「香薬師様は、光明皇后の一番大事な念持仏なので、聖武天皇と光明皇后ゆかりの正倉院御物と同じ価値があるもの。(右手だけではあるが)正倉院展期間中に参拝できるのは本当に意味がある事です」と中田住職。
群馬県から訪れた女性(60歳)は、「戦時中という時代もあり、お寺の善意が裏切られる形で盗まれ、残念な気持ちですが、貴田さんの尽力や、多くの善意でようやく右手が姿を現されたのでうれしい。本当に本体が出てきて下さったらいいなと思う」と熱心に右手を見つめた。
公開は11月12日まで、ご本堂(国宝)内一角のケースにて、朝9時から夕方5時まで。拝観料は大人600円、中高生350円、小学生150円。
取材・文・写真/いずみゆか
『香薬師像右手 特別公開』
日程:2018年10月27日(土)〜11月12日(月)
時間:9:00~17:00
会場:奈良市高畑町1352 新薬師寺ご本堂内一角
電話:0742-22-3736
拝観料:大人600円、中高生350円、小学生150円
関連記事
あなたにオススメ
コラボPR
-
京都「オーバーツーリズムって何?」#空いてる国宝萬福寺[PR]
NEW 8時間前 -
【大阪・関西万博2025】最新情報まとめ!地元編集部が取材してわかった、人気グルメから穴場スポットまで
NEW 2025.10.13 11:00 -
淡路島の「日本酒」に注目!秋の旬と味わう旅へ[PR]
2025.10.10 17:00 -
大阪アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.10.8 11:00 -
京都アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.10.8 11:00 -
港町の心地よさに浸る、OMOろい旅 in 函館[PR]
2025.10.7 16:00 -
大阪・関西ランチビュッフェ2025年版、ホテルの食べ放題を満喫
2025.10.7 11:00 -
大阪スイーツビュッフェ・リスト2025年版、ホテルで甘いものを満喫
2025.10.6 00:00 -
現地取材で発見!知らなかった宇治の魅力【2025年最新版】
2025.10.1 08:30 -
なぜこんなに「宇治抹茶」が世界的に人気なのか?[PR]
2025.9.30 08:00 -
写真を撮って…豪華賞品ゲット!期間限定コンテスト[PR]
2025.9.29 19:00 -
話題の新作ノンアルビール、飲んでみた[PR]
2025.9.24 11:30 -
OsakaPointでおいしくたのしく大阪めぐり[PR]
2025.9.22 17:00 -
万博・ポーランド館で人気、現地さながらの体験とは?[PR]
2025.9.12 13:30 -
万博で日本一やかましい祭!?三重の魅力を1日で堪能[PR]
2025.9.12 07:00 -
神戸アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.8.29 10:00 -
大阪から行く高知のおでかけ・グルメ2025最新版
2025.8.22 17:00 -
大阪ビアガーデン2025年版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.8.22 12:00 -
京都・滋賀のおすすめビアガーデン2025年最新版
2025.7.23 13:00 -
奈良のおすすめビアガーデン2025年最新版
2025.7.15 15:00 -
関西のおすすめ音楽フェス・2025年最新版
2025.7.9 09:00