かつての教え子が作品分析、関西の小劇団

壁ノ花団 『ニューヘアスタイルイズグッド』初演より 写真/平野愛
【連載】舞台上等、どうぞご贔屓に vol.6
関西を拠点に活動する劇団・役者・カンパニー・団体・演出家・脚本家は数知れず。舞台・演劇関係者が自分たちのご贔屓をプレゼンテーションする本企画。今回は、「プレゼンテーション返し」。前回ご紹介した匿名劇壇を主宰する福谷圭祐が、大学時代の恩師である水沼健の演劇ユニット「壁ノ花団」と、水沼健自身について語る。
叙情的かつ動物的な作風
「壁ノ花団」とは、京都の劇団「MONO」で俳優としても活躍し、近畿大学文芸学部で准教授も務める水沼健先生が立ち上げた演劇ユニットです。静かで知的なトーンを感じさせながらも、実に生々しく動物的な作風であることが特徴。牧歌的にも見える人間の営みや街の風景から、登場人物たちの隠れた本音や闇の部分などの「実」をえぐり出すけれども、あくまでも台詞はポエティックに紡がれていきます。また、Aさんの気持ちをBさんが独り言のように語り、逆にBさんがAさんの心情を解説するなど、登場人物同士の境界線を曖昧にしながら、それぞれの人物像を構築していく演出も独特です。叙情的でありながらも、本能的な「人、そして街」の多面性を豊かに表現するのが「壁ノ花団」の世界なのです。
待つ、そして任せることができる
過去2回、先生の作品に出演しましたが、何度も稽古して作り上げたシーンが、ある日まったく違う演出に変更されることがしばしば。役者の個性や持ちうる表現手段によって、フレキシブルに「見せ方」を工夫していきます。また、水沼先生は実に気が長く(呑気で)、俳優からにじみ出てくるものを「待つ」、そして「任せる」ことができる人間です。「壁ノ花団」の作風にも、「観客の反応をあせって獲得しようとしない」という形で現れていると感じます。じっくりと世界に染み渡らせるように、作品を置く。そんなクリエイターではないでしょうか。

大学の舞台芸術専攻の卒業公演でも、それまで既成台本で担当の先生が演出するのが通例でしたが、私の在籍した21期は、私の作・演出で上演されました。これも、その期の担当教員の水沼先生が「待つ・任せる」ことを選んでくださったからだと強く感じます。強く背中を押し、送り出してもらえたと感謝しています。
壁ノ花団は10月、第57回岸田國士戯曲賞最終候補に選ばれた作品『ニューヘアスタイルイズグッド』を「近畿大学内11月ホール」(大阪府東大阪市)で再演。水沼先生が、今なお教鞭を振るう学び舎でいかに生まれ変わるのか。私も久しぶりに、近畿大学へ足を運び、目撃したいと思います。公演は10月19日・夜7時半からと、20日・昼3時からの2回(入場無料)。
構成/吉永美和子
壁ノ花団 『ニューヘアスタイルイズグッド』
日程:2018年10月19日(金)・20日(土)
会場:近畿大学 11月ホール(東大阪市小若江3-4-1)
料金:無料
電話:075-525-2195
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