神戸で、4人の現代美術家に迫る展覧会

泉茂の1980年代のリトグラフ作品。雲形定規は泉の晩年を特徴づけるモチーフ
1951年に結成された前衛美術グループ「デモクラート美術家協会」。当時の既成画壇、特に公募展組織への批判・反抗から生まれた彼らのグループは、大阪や東京で盛んに展覧会活動をおこないました(1957年に解散)。そのメンバーのうち4人の作家にフォーカスした展覧会が「BBプラザ美術館」(神戸市灘区)で9月17日までおこなわれています。
展覧会は「デモクラート美術家協会」時代の彼らの作品に始まり、その後のそれぞれの仕事を、泉、山中、吉原、吉田の順に紹介しています。作品の比率は、同館が豊富なコレクションを有する泉と山中が大半を占め、吉原と吉田の作品は少なめですが、見応えがあります。
泉の作品は、初期の銅版画時代は詩的な情緒を帯びていますが、1960年代以降はシルクスクリーン(版画技法の一種)が中心となり、幾何学形態や雲形定規をモチーフにしたシャープな作風に移行します。一方、山中の作品はほとんどがシルクスクリーンで、コラージュや加筆のある作品も見られます。彼の作品もシャープな形態と色面分割が特徴ですが、キャリアを重ねるにつれ色遣いがやわらかになり、温かみのある作風へと変化しました。

吉原の作品は、初期の油彩画やリトグラフ(版画技法の一種)にダイナミックな傾向が見受けられるのに対して、1970〜80年代のリトグラフはトリッキーでエレガントな性質を持ち、その対比が興味深いです。吉田は炭鉱労働者を力強い筆致で描いた油彩画、銅版画、木版画などが展示されており、ほかの3人とは異質な雰囲気を漂わせています。今後の再評価が待たれる作家のひとりです。
この4作家は関西の現代美術史を語る上で欠かせない存在ですが、一般的な認知度はまだまだ低いかもしれません。本展を通して、多くの人に彼らの作品をもっと知ってほしいと思います。また、本展のような地元の現代美術史を掘り起こす企画が、もっとおこなわれててもよいのではないでしょうか。期間は9月17日まで、料金は一般400円。
取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)
『コレクションを核に 関西ゆかりのデモクラートの作家たち 泉茂・山中嘉一・吉田利次・吉原英雄』
期間:2018年7月3日(火)~8月5日(日)、8月7日(火)~9月17日(祝・月)※月曜休(7/16、9/17開館、7/17休館)
時間:10:00~18:00 ※入館は17:30まで
会場:BBプラザ美術館(神戸市灘区岩屋中町4-2-7 BBプラザ2F)
料金:一般400円、大学生以下無料
電話:078-802-9286
関連記事
あなたにオススメ
コラボPR
-
華やかスイーツ!神戸のいちごビュッフェまとめ・2026年版
NEW 2025.10.20 14:00 -
華やかスイーツ!大阪のいちごビュッフェまとめ・2026年版
NEW 2025.10.20 11:00 -
大阪アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.10.16 11:00 -
大阪・関西ランチビュッフェ2025年版、ホテルの食べ放題を満喫
2025.10.16 10:00 -
京都「オーバーツーリズムって何?」#空いてる国宝萬福寺[PR]
2025.10.15 18:15 -
【大阪・関西万博2025】半年間ありがとう!地元編集部が取材した人気グルメから穴場スポットまとめ
2025.10.13 11:00 -
淡路島の「日本酒」に注目!秋の旬と味わう旅へ[PR]
2025.10.10 17:00 -
京都アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.10.8 11:00 -
港町の心地よさに浸る、OMOろい旅 in 函館[PR]
2025.10.7 16:00 -
大阪スイーツビュッフェ・リスト2025年版、ホテルで甘いものを満喫
2025.10.6 00:00 -
現地取材で発見!知らなかった宇治の魅力【2025年最新版】
2025.10.1 08:30 -
なぜこんなに「宇治抹茶」が世界的に人気なのか?[PR]
2025.9.30 08:00 -
写真を撮って…豪華賞品ゲット!期間限定コンテスト[PR]
2025.9.29 19:00 -
話題の新作ノンアルビール、飲んでみた[PR]
2025.9.24 11:30 -
Osaka Pointでおいしくたのしく大阪めぐり[PR]
2025.9.22 17:00 -
万博・ポーランド館で人気、現地さながらの体験とは?[PR]
2025.9.12 13:30 -
万博で日本一やかましい祭!?三重の魅力を1日で堪能[PR]
2025.9.12 07:00 -
神戸アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.8.29 10:00 -
大阪から行く高知のおでかけ・グルメ2025最新版
2025.8.22 17:00 -
大阪ビアガーデン2025年版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.8.22 12:00 -
京都・滋賀のおすすめビアガーデン2025年最新版
2025.7.23 13:00