斗真&瑛太主演の衝撃作、瀬々監督に訊く

「本番以外ではほとんど口をきいていなかった」(瀬々敬久)
──人間なんてそう簡単に割り切れるものじゃないですものね。でも、演じる側としたら、やり甲斐はあるだろうけど難しい役ですね。
不可解な部分をずっと残したいというのは瑛太くん自身の希望でもありました。彼がそうしたいと言ってくれたので、「うん、それでいこう」という感じでした。
──この役に瑛太さんをキャスティングしたのは監督の考えですか?
そうですね。彼には『64−ロクヨン−』にも出てもらっていて、とても魅力的な俳優だというのはわかっていましたから。本番前にテストを重ねるのですが、彼は毎回違った演技をするんです。引き出しの多い、信頼のおける俳優です。

──もうひとりの主演、生田斗真さんはどうでしたか? 生田さん演じる役も、ずっと罪の意識を背負ったまま生きていて、たまたま心ふれあった人間に連続殺人犯ではないかと疑念を抱く、これもかなりの難役です。
彼は普段は全然オーラを感じさせないんです。あの世代の俳優は、カメラが回っていてもいなくても関係なくオーラ全開という人が多いのに、彼はカメラが回る寸前までまるで普通の佇まいなんです。それが、カメラが回ったとたんおそろしいほどのオーラを感じさせる。撮影しながら「すごいな、こいつ」と思いながらやっていました(笑)。演技についても、これまでの作品を観ていて、とても振り幅の広い演技力を持っているのは知っていたので、安心していました。
──2人の息も合っていますね。夜の公園で2人がお酒を飲みながら、それぞれの秘密に迫るシーンは観ていてドキドキしました。
直感的な演技をする瑛太くんを、生田くんが生真面目に受け止めて芝居を絡めていく。あのシーンは流れを決め、打ち合わせは綿密にしましたが、芝居そのものは2人にまかせてアドリブでやってもらいました。2人とも役柄をよく理解した迫力ある演技をしてくれました。そうそう、息もぴったりだったと言ってもらいましたが、実はあの2人、本番以外ではほとんど口をきいていなかったですね。
──えっ、そうなんですか。
ええ。もともと2人とも無口ではあるんですが、おそらく意識して口をきいていなかったと思います。現場では、生田斗真と瑛太としているのではなく、益田と鈴木という映画のなかの役柄の人間としてその場にいたかったんでしょう。こっちもそれがわかるので放っときましたけど(笑)。

──なるほど。それを聞いてうかがいたくなったのですが、映画のなかのあのふたり、益田と鈴木はほんとうに友達と言っていい関係なのでしょうか?
うーん、それは難しいところですね。ただ、2人がともに心開きあった部分はあったと思います。その関係を友達と言うかどうかですが。少なくとも2人にはつながったところはあって、ダッシュ付きの友情というか、こういう気持ちは友情(といっていいかもしれない)、みたいなカッコ付きの友情というか、それに近いものがあったとは言えると思います。
──つながっているといえば、ラストシーンがそうですね。生田さん演じる益田の独白に、どこにいるのかわからない、瑛太さん演じる鈴木の映像がつなげられている。
あれはね、かつて鈴木清順監督の映画であったじゃないですか。あるシーンに突然違うシーンをぶつけるようにつなぐ手法。
──ありました。いわゆる清順美学的表現のひとつで。
あれを鈴木監督はモダニズムでおこなっているわけだけど、今回、僕が意識したのは鈴木監督ではなくて、渡辺護監督なんです。
──あぁ、ピンク映画の巨匠だった?
そうです。あの渡辺監督です。渡辺監督の作品にあるんですよ、あのように時空間をつなげる手法が。それを鈴木監督のようにモダニズムでおこなうのではなく、渡辺監督はもっと情念のなせる技として見せるんです。脚本が大和屋竺さんで、その影響も大きいと思うんですが『女地獄唄 尺八弁天』なんかがまさしくそうで。僕はあの手法は、映画が奇跡を見せることができる表現だと思っています。ラストシーンで益田は自分の過去と向き合っているわけですが、その声は離れた場所にいる鈴木にも届いているのではないかという奇跡ですね。
──それは2人にとって「救い」と考えていいのでしょうか?
救いと言っていいかどうかはわかりませんが、少なくとも2人にはカッコ付きではあっても、友情らしきものがあったことの証しであり、人が生きるにはああいうつながりが不可欠だろうという僕の思いですね。
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