巨匠イエジー・スコリモフスキ監督が描く不条理な現代社会

初の群像劇『イレブン・ミニッツ』を撮ったポーランドの巨匠、イエジー・スコリモフスキ監督
カンヌ、ベネチア、ベルリン。世界三大映画祭すべてで主要賞を獲得するポーランドの巨匠、イエジー・スコリモフスキ監督の最新作がついに公開された。本作『イレブン・ミニッツ』は、大都会に暮らす人々の午後5時から11分間のドラマをモザイク状に構成した、監督初の群像劇。
人々のありふれた日常が突如変貌してしまう奇妙な物語を、テロや天災に見舞われる不条理な現代社会の比喩として描いた本作について、来日したスコリモフスキ監督を映画評論家・ミルクマン斉藤が直撃した。
取材・文/ミルクマン斉藤
「大事なものは撮られてもいない」(イエジー・スコリモフスキ)
──監督は今まで、さまざまな国で、さまざまなジャンルの映画を、あるいはどのジャンルにも属さない映画を撮ってこられたわけですが、今回はいきなりヴィデオの手持ち映像であるとか、監視キャメラの映像であるとか、疑似ドキュメント的映像の連続から始まりますね。
基本的にこの映画は、午後5時前と5時以降との2つの部分に分かれます。5時前の部分、いわばプロローグは偶然に撮られたものを集めただけ、という具合にしたかった。脈絡もなくバラバラに見えますが、結局私たちの人生が残ってしまうのはこういうものしかないんですよ。
誰かが偶然に撮ったか、自分が撮ってしまったものしか残りようがない。しかも、それが人生にとって一番大事な部分かというとそうでもなく、本当に残すべき大事なものは撮られてもいない。そんな事実を少し考えてもらうための工夫なんです。

──この映画は数人の人生の断片が螺旋構造のように語られるわけですけれども、とても重要なこととどうでもいいようなことがほとんど同価値に並べられています。
それらを同じ画面で見せる、表現するということは、すべてを同じレヴェルで扱うという意味ではあります。私たちは自分の人生を、とても素晴らしく締めくくりたいという気持ちがあるでしょうけど、ありていに現実を見ると、いたってつまらない形で最後の11分を終えてしまうというのがありますよね。
──そうなんですよ。ある種の、ちょっとおかしみを込めた諦念のようなものがドラマにあるように思います。タイトルが『イレブン・ミニッツ』なので、まあ、だいたいそれぞれのエピソードは11分くらいなんだろうとは思うのですが(笑)、映画を観ている限りさほど厳密な縛りは感じられないですよね。例えば時計を画面に出すとかして、もっとかっちりと11分を限定した作りも監督はできたと思うのですけれど、敢えてそれを選ばなかった気がしますが。
実際に計ってもらうと分かるんですが、ほぼ1秒くらいの誤差で11分ちょうどにしています。ただ、11分にこだわりすぎてはいません。結局、最終的な編集段階で上手くバランスをとりながら編集しました。

──どうしても「11」という具体的な数字が出てくると数秘的なものを思ってしまうんです。11階の11号室も出てきますし。
11人か12人ぐらいの物語を、75分から100分くらいの映画としてまとめようと考えると、一人あたりの時間が10分前後という計算になります。「10」という数字は完璧すぎるきらいがあるし、いろいろと象徴的な意味も絡んでくるのであまり望ましくない。「12」もいろんな連想がありますね、12カ月とか十二使徒とか。さらに「13」というのは縁起がよろしくない(笑)。で、「11」はグラフィック的にもいちばん綺麗な数字ということもあって、それに決めたんです。
映画『イレブン・ミニッツ』
2016年8月27日(土)公開
監督:イエジー・スコリモフスキ
出演:リチャード・ドーマー、ボイチェフ・メツファルドフスキ、ほか
配給:コピアポア・フィルム
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