「わからない」芸術、その意味とは

吉村洋文大阪市長から記念トロフィーを受け取る塚原悠也さん(右)
前衛芸術や現代アートと聞くと「わからない」や「難しい」と感じる人も少なくない。一方で前衛芸術家である草間彌生の水玉は、多くの人に支持されている。人は「わからない」芸術に対して、なぜ拒否反応を示し、また一方でどんな時にそれを面白いと感じるのだろうか。
3月5日から京都市内各所で行われている『KYOTO EXPERIMENT 2016(京都国際舞台芸術祭)』では、舞台芸術の第一人者から新進気鋭のアーティストまでが様々な実験的公演を行っている。セリフも無く人がうごめいている舞台や、静と動が反復するだけのダンスなど、メッセージやコンセプトが素直に伝わりにくい公演がほとんどだ。本芸術祭に参加するパフォーマンス集団・contact Gonzo(コンタクト・ゴンゾ)もまた、体をぶつけ合い、殴り合うパフォーマンスを複数名で行い、観るものには喧嘩なのかじゃれ合っているのかも判断が難しい表現者。そんな「わからない」芸術にはどう向き合えば良いのか。contact Gonzoの塚原悠也さんに話を聞いた。
—「アートわからん」という気分はよくわかる—
大阪市が芸術文化活動を通じて貢献した人に贈られる「咲くやこの花賞」で、平成27年度の美術部門を受賞したcontact Gonzo。贈呈式で見せた激しいパフォーマンスには、実は戸惑う人も多かった。その代表・塚原さんも、もともとは芸術なんてほとんどわからないサッカー少年だったという。「それが今は芸術作品を作る立場にあります。まさか自分がそうなるとはまったく思いもしていなかったです。大学に入って美学や芸術史というものを勉強しはじめ、大学を卒業して劇場で働きはじめ、次はアーティストをサポートする立場になり、いまはプロデュースやディレクションに近いこともやっています」。
そんな彼自身、アートが「わからん」という気分はよくわかると言う。「ノイズミュージック、これが『わからへん』初体験でした。まず、わかりやすいリズムも音階もなにも取っ掛かりがない。テレビの砂嵐のような音が延々続くし、ほとんど変化がない。しかも『これも音楽だ』と教えられる。もうほとんど恐怖というか、なにをどう受け止めて理解したらいいのか不明でした」。ほかにも作家ヘルマン・ニッチの写真集、小説家ウィリアム・バロウズの『ソフトマシーン』や、すべての主題を逆さまに描くゲオルグ・バゼリッツなどにも触れ、「(わからないまま)ある種の感銘を受け自分の固定概念は急速に崩れていった」と話す。
—「わかる」の仕組み—
彼いわく、「わかる」には大きく3種類あるという。 まずひとつ目は、何かしらの絵画を前に「これは人の悩みや苦しみを表現した絵です」と言われて「アァ、なるほど」と思うように、言語的に説明されたものに納得できる「わかる」。ふたつ目は、作家が観客の「わかる」を想定して作品を作っている場合。「これはやればやるほどエンタメ寄りになっていくか、まぁ言えば『売れる』ものですね。今回の議論からは外しましょう」。
そして最後に、もっと直感的に、体験として「なんかわかるわー」というもの。
「これはたくさん作品を見たあとで生まれる状態と言えます。例えばある彫刻を見て『意味わからんけど嫌いじゃないな』という感じを持ったことがあるなら、もうほとんど『なんかわかるわー』状態であると言えます。この状態がピンとこない場合、邪魔をしているのは、それまで受けてきた教育や今自分がいる環境のせいだと思ってください。こういう判断は、自分で行うことになるので、時折自分しかそれをいいと言っていない場合もあります」。
ではどうすればそんな判断ができるようになるのだろう。「ひとつやれることがあるとすれば、例えば美術館に行って、テキストを一切読まずに、全部見てどれが一番好きか、ひとつだけ選ぶというものです。帰りながら、なぜそれが好きか考えてみてください。それはどんな理由でもいいと思います。そのことの繰り返しで、全然大丈夫です」。
『KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING』
期間:2016年3月5日(土)〜27日(日)
会場:ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、ほか
料金:プログラムにより異なる
電話:075-213-5839(平日11:00〜19:00)
『KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING』
足立智美 × contact Gonzo『てすらんばしり』
日程:2016年3月26日(土)・27日(日)※14:00〜
会場:京都府立府民ホール アルティ(京都市上京区龍前町590-1)
料金:一般3,000円、ユース・学生・シニア2,500円、高校生以下1,000円、ほか
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