「辞めた方がいい・・・」の末に掴んだ、植村花菜が歌いたいこと

「『トイレの神様』以降は、ほぼ詞先ですね」
── 『トイレの神様』の大ヒット後、初のアルバムとなった4枚目の『手と手』でインタビューさせていただいたとき、「シンガーソングライターとして、ひとつカタチを見つけましたよね」ってお話しさせていただいたんですね。『トイレの神様』で掴んだ曲作りのヒントが、カタチとして結実したのが『手と手』というアルバムじゃないか、と。このとき、歌いたい対象とか、何を歌いたいかが劇的に変わりましたよね。
はい、変わりましたね。
── 今回のベスト盤で改めて昔の曲も聴かせていただいて、昔の曲もすごくいいんですよ。いいんですけど・・・リスナーに気を遣った曲作りになってるというか。「みんなにはどう聴こえる?」「みんなはどういう風に捉えてくれる?」というところに、やっぱり比重が偏ってたのかな、と。
スゴイですね、エスパーですか!? 読まれてるような・・・。
── エスパーですよ(笑)。
ハハハ(笑)。おっしゃられた通りで、昔は聴いてくれる人がどう思うかってことをすごく気にしてました。今は全然気にしてない。自分が「これ書きたいねん!」ってことだけを曲にしてるから、そこはすごく大きな差ですね、ホントに。

── とある映画監督の言葉に、「ローカルで撮れば撮るほど、ユニバーサルになる」というのがあって。今の植村さんのシンガーソングライターとしての姿勢というか、取り組みというのも、それと同じだな、と。
ホント、そうです。もうね、『トイレの神様』で気付かせてもらったのは、「みんな一緒なんや」ってことで。というのは、『トイレの神様』って、ストーリー自体は全部私の個人的なことじゃないですか。小学校3年生でおばあちゃんと暮らして、吉本新喜劇を録ってくれなかったとか、思い出が鴨南蛮とか、五目並べしたとか、ひとつひとつ、私と同じ経験をした人なんて、まずいないと思うんですね。それやのに何でみんな感動してくれたんやろうって、最初はすごい疑問だったんです。
── 植村さんとおばあちゃんだけの思い出ですからね。
そう。だから、私や家族が泣くならまだしも、何で全然知らん人がこの歌を聴いて泣くの?っていうのが、最初は分からなくて。でも、いろんな感想を聞くうちに、みんな自分に置き換えて、たとえば、私は鴨南蛮やったけど、ある人はオムライス、というか。なんか、「私、おばあちゃんとこうでね」って話したら、「うちはこうやったよ」みたいな感じで、みんながすごく思い出を重ね合わせてくれる。
そういう風にみんな聴いてくれるんやって、それがすごく発見で。エピソードは違えど、その奥にある私的な感情を素直に書き綴れば、「そうそう!」って思ってくれる人はいっぱいいるんやなって。そういう人がひとりでもいるのであれば、曲を作る価値があるというか。
── なるほど。
今はそう考えて、すごく狭いところで曲を作っているんですけど、でも、実はその狭いところからすごく広がるというか。それがね、どんどん広がってくれたら、すごくありがたい話で。だから今は、自分のことを書きすぎて、歌いながら泣きそうになったりするときがあって。その感情コントロールが大変なぐらい、自分を削って書いてる感じですね。

── これは想像ですけど、『トイレの神様』までは曲先(歌詞より先にメロディを作ること)だったのでは? と思うんですが。
それまでは、ほぼ曲先です(笑)。『トイレの神様』以降は、ほぼ詞先ですね。作りたいテーマでバーッと作文を書いて、そこから歌詞になりそうなモノを抜粋して、歌詞をおおまかに作ってから、メロディを作るというのが一番主流ですね。もちろん、歌詞とメロディが同時に浮かんでくることもありますけど、基本は完全に詞先ですね。
── そんな、シンガーソングライターとして自らのスタイルを確立した植村さんにとって、最新曲となるのが、息子さんのことを歌った新曲『なんてことない日々』です。
息子が生まれてから、毎日同じことの繰り返しなのに、なんでこんなに幸せなんだろうって作った曲で。今まで、毎日違う現場、毎日違う仕事、それはそれで刺激的で充実してたんですけど、そうではない、この曲の通り、「何にもない日」も、息子と2人っきりで過ごしている瞬間も、人は幸せを感じることができる。それを息子から教えてもらったんですよ。
── 日常の生活にある「ふとした感情」を丁寧にすくい上げる、実に植村さんらしい曲だと思います。
そうですね。ママになったから・・・と思って書いたわけでなく、日々過ごしていくなかから自然に生まれた曲です。息子が産まれてから必然的に生活スタイルは変わったけど、『トイレの神様』以降、ずっとそれを歌にしてきているつもりなんですね。私はそういう、日常に根ざした曲を作るシンガーソングライターとして、日々うれしいこと、悩んだりすることを、自然と曲にしていけたらなあと。それに共感してくれる方がいるのであれば、すごくありがたいなと思います。
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