大地の力が育む、雲仙野菜 大地の力が育む、雲仙野菜

島原半島の中央にそびえる普賢岳。
度重なる火山活動から生まれた肥沃な土壌と豊かな水は大きな恵みとなって、
島原半島は長崎県が誇る一大農業地に。
こだわりを持って農業に取り組む生産者の努力もあり、大きな生命力を宿す
雲仙の野菜は特別なおいしさを持っていると多くの料理人からも注目されている。
季節ごとに色とりどりに実る野菜を味わい、大地のパワーを感じる雲仙を旅してみよう。

取材・文/澤村美紀 写真/池田清太郎

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島原半島の中央にそびえる普賢岳。
度重なる火山活動から生まれた
肥沃な土壌と豊かな水は大きな恵みとなって、
島原半島は長崎県が誇る一大農業地に。
こだわりを持って農業に取り組む
生産者の努力もあり、
大きな生命力を宿す
雲仙の野菜は特別なおいしさを持っていると
多くの料理人からも注目されている。
季節ごとに色とりどりに実る野菜を味わい、
大地のパワーを感じる雲仙を旅してみよう。

取材・文/澤村美紀 写真/池田清太郎

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妙見岳と野岳の鞍部(あんぶ)に位置する標高1079mの仁田峠。東側にある平成新山展望地からは約30年前に大噴火を起こした普賢岳と、その際にできた巨大な溶岩ドームから生まれた平成新山の荒々しい姿が眼前に広がる。

仁田峠・普賢岳

雲仙市仁田峠

TEL/0957-73-3434(雲仙観光局)
営業時間/仁田峠循環道路の開放時間=8:00〜18:00(11〜3月は17:00まで)
アクセス/「雲仙」バス停からタクシー約20分

湧水庭園 四明荘

雲仙山系の伏流水が随所から湧出し、古くから水の都と呼ばれてきた島原市。市内中心部に静かに佇む[湧水庭園 四明荘]は、1日に約3,000tの水が湧き出す池に色とりどりのコイが泳ぎ、まるで池に浮いているような母屋が印象的。座敷や縁側からみずみずしい庭園美を堪能できる。

湧水庭園 四明荘(しめいそう)

島原市新町2-125

TEL/0957-63-1121
営業時間/9:00~18:00 無休
料金/入館料=大人310円、高校生以下150円
アクセス/「島原」駅下車、徒歩約15分

雲仙地獄

火山活動によって地表の至る所から高温の熱湯と蒸気が激しく噴き出し、辺りには強い硫黄臭が漂う、まるで地獄のような景観の雲仙地獄。雲仙温泉街の中心にあり、火山活動が五感で体感できる雲仙観光の定番名所で、2021年11月には新しい地獄が「いぶき地獄」と命名された。

雲仙地獄

雲仙市小浜町雲仙

TEL/0957-73-3434(雲仙観光局)
営業時間/散策自由
アクセス/「雲仙」バス停下車、徒歩すぐ

火山が生んだ島原半島の土壌 火山が生んだ島原半島の土壌

島原半島 島原半島

 長崎県南東部にある島原半島は、もともと火山の島。約430万年前の火山噴火に始まり、度重なる噴火や隆起で現在のような半島になった。その中央にそびえる普賢岳も活動を止めることなく、寛政4年(1792)の大噴火・地震で山体崩壊し、平成3年(1991)に起きた噴火によって平成新山が誕生したことはまだ記憶に新しい。そうした火山活動による災害は甚大だが、一方で多くの恵みをもたらしてくれる。土石流や火山灰が肥沃な土壌を生み、地域それぞれの地形や地質に適した農業が盛んに行われているのだ。例えば、北東部は黒ボク土と呼ばれるやわらかく保水性が良い土なので、地中に深く根を張るダイコンやニンジンなどの根野菜をはじめ、葉にたくさんの水を含む葉物野菜、米作りにも最適。南部の酸性で鉄分の多い赤黄色土は、全国屈指の生産量を誇るジャガイモの大産地になっているなど、島原半島内だけであらゆる種類の野菜が生産されている。長崎県の農業生産額の約4割を島原半島が占めており、その形から「一億人のいぶくろ」と呼ばれていることが豊かさの証しだろう。そして、水もまた火山の恵み。普賢岳は雨水をたっぷりと吸収して、山麓へと水を届けてくれる。中でも島原市は1日の湧水量が約22万tにも及ぶ水の都。ここに住む人々は日々の暮らしや農業に水を役立ててきた。

雲仙つむら農園

大空を背に普賢岳がそびえ、眼下に有明海が見わたせる絶景地にある[雲仙つむら農園]。山がたっぷり蓄えた水が絶えず地下に流れ、海から吹き上げてくる風がミネラルも運んできてくれる。野菜をおいしく育ててくれる最高の環境だ。

 近年、食にこだわる料理人や感度の高い美食家たちから注目を集めている雲仙野菜。その土地になじみ育ってきた野菜の種を採って繰り返し栽培し続ける種採り野菜など、雲仙の恵みを生かした農業を志す他県からの移住者も増えつつあるという。5年前に茨城県から移住し、有機農業に取り組む[雲仙つむら農園]のオーナー・津村義和さんもその一人。普賢岳と有明海を望む畑では、緑のナスや白いピーマン、赤のオクラなど少量多品目の野菜が栽培され、四季折々にカラフルな彩りと強い香りがあふれている。もちろん大地の爆発的なエネルギーをルーツに持ってこその力強いおいしさだ。

雲仙つむら農園

土壌が肥沃な島原半島は県内一の農業地。私たちの食卓を彩る一般的な野菜の生産はもちろんのこと、最近では種を採り続けて繰り返し栽培する種採り野菜や、黒田五寸人参などの在来種を栽培する生産者も少しずつ増え、野菜のバリエーションもますます豊富に。雲仙の野菜作りが活気づいている。

  • 雲仙つむら農園
  • 雲仙つむら農園
  • 雲仙つむら農園

[雲仙つむら農園]では農薬や化学肥料、除草剤、動物性堆肥を使わず、野菜の隣でコンパニオンプランツを植栽して害虫予防をして、土のバランスを補正するなど、自然環境を最大限に生かした畑作りにこだわる。70~80種類の少量多品目栽培が特徴で、畑に育つ野菜の彩りも香りも豊か。より良い食材を求める料理人たちから注目の存在だ。

雲仙つむら農園

詳しくはHP(https://tsuku2.jp/tsumura-nouen)を確認

雲仙つむら農園

土地の力を感じる雲仙野菜 土地の力を感じる雲仙野菜

 雲仙の野菜にこだわる一人の料理人がいる。雲仙市の雲仙温泉にある老舗旅館[雲仙福田屋]の料理長・草野玲さんは、関西の割烹やホテルなどで技を磨き、これまでにもさまざまな食材を扱ってきたが、近年は自らが腕をふるう料理には必ず雲仙の野菜を使うという。畑へ出向いて生産者から野菜作りへの思いやこだわりを聞き、時には畑で種採りを手伝うことも。さらに野菜への情熱が高じて自家菜園で畑を耕すまでに。「雲仙で育った野菜、特に収穫したばかりの野菜はそのままでも十分においしい。だから、あれこれと手を掛けると素材の良さを失ってしまう。そんな強さを持っている野菜なんです。以前はメニューを決めてからそれに必要な食材をそろえていましたが、雲仙の野菜のおいしさを知って考え方が変わりました。その日その日、手元に届く野菜を見てからメニューを決める。それもできるだけシンプルに。おいしさを最大限まで引き出す調理をしたい」と草野さんは料理への向き合い方を語ってくれた。そしてベストと考えたのが、素材の良さを引き出す究極の蒸し料理だという天ぷら。衣の中から匂い立つ大地の香りがたまらない。かめば水分がしたたり、しかもそれぞれ力強く個性ある食感が口内を楽しませてくれる。また、料理を提供する際には野菜それぞれにまつわるストーリーを伝えるのが草野さんのスタイル。野菜の特徴や、育った畑の環境のこと、生産者のこだわり、知れば知るほど雲仙野菜への期待は高まるが、味わえばそれ以上の驚きと感動が待っているはずだ。そのほか雲仙市内では小浜のアイスソルベ専門店やスパイスカレー専門店など、雲仙の野菜に魅了された店主たちが雲仙ならではの味わいを展開中。季節ごとにレシピを変えて楽しませてくれる。また小浜温泉では高温の源泉で蒸し料理として味わうのも楽しみ方の一つだろう。まだまだ底知れぬ可能性を秘める雲仙野菜。雲仙を旅して存分に堪能あれ。

天ぷら 香ふく 天ぷら 香ふく 天ぷら 香ふく

野菜が持っている旨みや甘み、水分を逃がさないように、ずんぐりとした黒田五寸人参の皮はむかず、揚げやすい大きさに切ることもしない。野菜を丸ごと衣で包んで、高温と低温の油を使ってカラリと揚げる。「天ぷらは素材のポテンシャルを極限まで引き出す究極の蒸し料理です。味わってみると野菜の常識が変わりますよ」と自信たっぷりの笑顔で話す草野さん。夏はナスやピーマン、オクラ、秋冬はムラサキイモなど、旬の野菜を[雲仙福田屋]内の天ぷら料理専門店[天ぷら 香ふく]で堪能できる。

天ぷら 香ふく 天ぷら 香ふく 天ぷら 香ふく
雲仙つむら農園 雲仙つむら農園

草野さんは自ら生産者の元を訪ねて畑を実際に見て、野菜作りのこだわりを聞くことも欠かさない。料理を通して作り手の思いを含め、雲仙野菜の素晴らしさを伝えたいという。農業への高い志を持つ[雲仙つむら農園]は頼もしい存在。

雲仙福田屋

雲仙温泉街が一望できる、「民芸×モダン」がコンセプトの宿。源泉掛け流しのにごり湯が自慢で、趣向を凝らした内湯や露天風呂で上質なくつろぎの時間が過ごせる。雲仙の旬の野菜と魚介を堪能できる天ぷら会席プランを夕食に。

雲仙福田屋

雲仙市小浜町雲仙380-2

TEL/0957-73-2151
料金/1泊2食付き・天ぷら会席香ふくプラン(2名1室1人あたり)=26,070円〜+入湯税150円
アクセス/「小地獄入口」バス停下車、徒歩すぐ

アールサンクファミーユ アールサンクファミーユ アールサンクファミーユ アールサンクファミーユ

パティシエ歴30年の職人経験を持つ松尾利博さんが平成30年(2018)にオープンしたアイスソルベ専門店。カボチャやニンジン、ムラサキイモなど地元小浜をはじめ雲仙の季節の野菜や果物をふんだんに使い、ケーキ作りの彩りや技術を駆使して素材の甘みや香り、色、食感を生かした独自のレシピを考案。季節ごとに替わるが常時30種類ほどがスタンバイ。1本350~500円。

アールサンクファミーユ

雲仙市小浜町北本町114-6 新一角楼ビル1F 東1号

TEL/0957-60-4522
営業時間/10:00〜17:00 不定休
アクセス/「平松」バス停下車、徒歩すぐ

カレーライフ カレーライフ カレーライフ

橘湾に面した小浜マリーンパークの向かいにあるスパイスカレー専門店。埼玉県出身のオーナーシェフ・尾崎翔さんが提案するのは、橘湾の煮干しのダシと小浜名物の塩辛を隠し味に使った小浜グリーンカレーや雲仙もみじ豚キーマカレーなど、雲仙の豊富な食材で創作するオリジナル。雲仙野菜を取り入れた副菜4~5種が彩りを添えるカレー2種盛り1,320円。メニューは季節ごとに入れ替わるが、今後はより副菜を充実させることも考案中。

カレーライフ

カレーライフ

雲仙市小浜町北本町905-29

TEL/0957-60-4675
営業時間/11:30〜14:30L.O.
火・金曜休 アクセス/「西登山口」バス停下車、徒歩すぐ

column 島原半島の温泉と地形の関係とは?

島原半島は温泉の宝庫でもある。橘湾の地下に普賢岳へと向かうマグマだまりがあるといわれ、島原半島の地下水や雨水などと混ざり温泉を形成。橘湾に最も近い西海岸の小浜温泉は高温の塩化物泉、中央の高地にある雲仙温泉は硫黄泉、東海岸の島原温泉はやや低温の炭酸泉。それぞれ泉温と泉質が異なる温泉なのは、マグマだまりからの遠近や標高差など地形が関係する。火山ガスが地中を移動する過程で異なる成分の地質と出あい、個性ある温泉が生まれたのだ。

島原温泉

島原温泉

小浜温泉

小浜温泉

雲仙温泉

小雲仙温泉浜温泉
橘湾

橘湾

橘湾に面する小浜温泉では高温の源泉を利用した「蒸し釜」で蒸し料理を味わえ、橘湾の絶景を眺めながら足湯を楽しめる。雲仙地獄が名所の雲仙温泉、水の都と呼ばれ湯量豊富な島原温泉と、それぞれの温泉で火山の恵みを体感できる。

“水の都・島原で、コイや城を愛でて”

島原城 島原城

島原城

島原市城内1-1183-1

TEL/0957-62-4766(島原城天守閣事務所)
営業時間/9:00~17:30(入館は17:00まで) 無休
料金/入館料=大人550円、小中高生280円
アクセス/「島原」駅下車、徒歩約10分

2024年に築城400年を迎えるため、現在外観工事中の島原城。築城当初から残る屏風折れの高石垣が特徴。天守閣内はキリシタン史料が展示される資料館で、最新デジタル技術を使った天草四郎ガイドコンテンツなど新たな取り組みにも注目。

湧水庭園 四明荘

水の都として知られる島原は、湧水が豊富。地域の町内会が中心となって、子どもたちの感性を育み湧き水を後世に残すために、[湧水庭園 四明荘]周辺の水路には、コイが放流されており、その姿に癒やされる。

島原半島広域マップ

島原半島広域マップ

雲仙温泉詳細マップ

雲仙温泉詳細マップ

小浜温泉詳細マップ

小浜温泉詳細マップ

島原詳細マップ

島原詳細マップ

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