楽屋

こちらが僕が使っている楽屋です。太夫が２人、三味線弾きが５人の７人部屋です。楽屋に置いているのは、三味線や、舞台衣装などですね。これは僕の三味線ケース

旅行カバンみたいですね。カジュアルというか、イメージと違う

僕のはちょっと変わっていて、ライフルケースなんです。三味線って湿気に弱いから、防水仕様のライフルケースを使っています

こっちの三味線ケースには、いろんなステッカーが貼ってありますね

友だちのバンドのステッカーなどたくさん貼っていますね

わ、島耕作！

これは三味線の皮を保護するための物で、胴板（どういた）と言います。作者の弘兼憲史さんと母が知り合いなので、書いていただきました。文楽の三味線弾きはここにサインを書いてもらうことが多いですね

こっちにもサインがありますね

これはウェブ漫画でよく文楽を取り上げてくださっている漫画家の上島カンナさんのサインです

楽屋では何をされているんですか？

舞台の三味線の準備や、舞台衣装への着替え、舞台や稽古の合間には師匠、先輩方の着替えの手伝いをしたりしています

三味線について

文楽の三味線は、伴奏だと思われがちなんですが･･･

え、違うんですか？

太夫が、男だったり女だったり子どもだったり、いろんな登場人物を語り分けているように、三味線弾きも、それぞれの登場人物を弾き分けているんです。例えば、太夫が「怒っている」表現をしたとき、三味線も同じように「怒っている」演奏をしています。わかりやすく言えば、LINEの文字のあとにスタンプを押すような感じですね

すごく分かりやすい！　太夫さんが文字で、三味線がスタンプというわけですね

そうです。怒っているのに笑顔のスタンプは押さないでしょ？ 　それと同じように喜怒哀楽をいろんな音色で表現しているんですよ。ほかにも、例えば、町人と武士では同じメロディでも弾き方が変わってきたりします

ずいぶん印象が変わりますね！

感情表現や人物像以外にも、川の流れや天候なども音で表現します

三味線で多種多様な表現をしているんですね

そうですね。三味線の皮に撥（ばち）を激しく叩きつけることで太鼓のような音を出して、怒りや勢いなどを表現する技法もあります

そんな事をして皮が破れたりしないんですか？

下手な角度でやるともちろん破れます（笑）。だから新人の頃はよく破ってしまってました･･･

いろんな音で物語全体を表現しているんですね

はい。太夫がピッチャーだったら、三味線弾きはキャッチャーという関係なんです。太夫が思い切り語れるように三味線弾きがアシストする、これが三味線弾きの仕事です

人形遣いはどうなんですか？

人形遣いは、もちろん太夫・三味線の演奏を聞いているんですが、基本的に頭のなかに入っている文章に合わせて動いているので、太夫に合わせて動くわけではないんです。それぞれが、物語に全力で芸の力をつぎ込んで、太夫・三味線・人形が三位一体で作り上げる総合芸術、それが文楽なんです