東急ホテルズの料理人が挑む ホテルシェフの極皿

vol.2

常に美味を追求し、
腕を競い合うホテルのシェフたち。
今回、各レストランで独創的な料理を
生み出す彼らが、それぞれの個性と技を発揮して、
特別な一品を考案。
予約限定で味わうことのできる
「極みのひと皿」の全貌に迫る。

料理人歴35年、廣瀬シェフが料理人を目指したきっかけは?

料理人歴35年、廣瀬シェフが料理人を目指したきっかけは?

幼い頃から、食べるのが好き、作るのも好きでした。衣食住の中でも、命に直結している「食」に重要性を感じました。それと、私が生まれ育った山梨県では、野菜やフルーツは店で買うより、ご近所さんから頂くことが多かった。新鮮な食材を食べ慣れてきたのも、この世界に入るきっかけだったかもしれません。高校卒業後は、当時から有名だった大阪の辻料理師専門学校へ進学し、キャピトル東急ホテルでキャリアをスタートしました。

政財界や海外セレブもご用達のホテルで腕を磨いたシェフのお料理が神戸でいただけるのは、楽しみです!

私が就職した時代、今ほど街場のレストランが成熟しておらず、日本フレンチの創世紀を築かれた一流ホテルの料理人の方々が、第一線で活躍されていました。その一角を担うホテルで長く勤めたことで、最高峰の料理人に師事することができ、料理人としてひと通りのことは鍛錬できたと思います。ほかにも、最高級の食材をはじめ、当時、地方では見ることもないキャビアやフォアグラ、トリュフなどの世界三大珍味を扱えたことなど、目利きの修練にもなったと思います。

神戸に来られて、食材についてはいかがですか?

神戸に来られて、食材についてはいかがですか?

神戸というと「ハイカラな港町」というイメージが強かったのですが、市街地の2~5キロほどの位置に六甲山地が連なり、農業も盛ん。山の幸にも恵まれているのは、驚きでした。但馬、丹波、播磨、摂津、淡路の五国からなる兵庫県は、関西の中で唯一、瀬戸内海と日本海に面していて、食材も肉、魚、野菜、米など、高品質でバラエティに富んでいます。2018年11月に、こちらの料理長に着任しましたので、これからも直接生産者さんを巡って、食材を発掘していきたいですね。

そんな意気込みも込めた今回、メインとなるのは「牛フィレ肉のパイ包み焼き“マリアカラス風”トリュフソース」。シェフのキャリアも生かされた一品ですね!

そんな意気込みも込めた今回、メインとなるのは「牛フィレ肉のパイ包み焼き“マリアカラス風”トリュフソース」。シェフのキャリアも生かされた一品ですね!

地産地消がテーマのコースなので、兵庫県産牛のフィレ肉を使っています。本来、フレンチで「マリアカラス」と言えば、羊肉のパイ包みを言いますが、今回は牛肉なのでマリアカラス“風”に。柔らかく、さっぱりした赤身肉をサクサクのパイで包み、肉汁も旨みも逃さず、じっくりと焼き上げました。ボリュームはありますが、軽く召し上がっていただけます。コクがありながらも甘酸っぱいマデラソースをベースに、刻んだトリュフでふくよかな香りを持たせ、さらにスライスしたトリュフでリッチな香りを際立たせています。

フォアグラとトリュフもたっぷりと使われていて、贅沢です。

フォアグラとトリュフもたっぷりと使われていて、贅沢です。

フレッシュフォアグラに火を入れ、刻んだトリュフとともに、周りを軽くソテーしたフィレ肉で挟んでいます。フィレ肉だけでも十分おいしいのですが、フォアグラのまろやかな食感と濃厚な風味、トリュフならではの独特な芳香を、食べ進めるなかで変化に富んだアクセントとして楽しんでいただけたら。日本フレンチが花開いた時代のクラシックなレシピをベースに、フォアグラやトリュフを初めて体験した時の思い出も込めた、特別感ある一品です。

デザートの「クレーム・ダンジュ」は、口どけが軽やか。

デザートの「クレーム・ダンジュ」は、口どけが軽やか。

こちらは、神戸市北区にある弓削牧場のフロマージュ・フレをふんだんに使用して、甘さを控えめに、さっぱりと軽やかな口どけのよいデザートが完成しました。一見、ボリュームがありますが試食でも好評で、女性でもペロリと食べてくださいます。ソースは、淡路島産の淡路みかんを皮ごとピューレにしました。後は砂糖とレモン汁の酸味だけで、シンプルに仕上げています。爽やかな甘酸っぱさの奥に、ほろ苦さも感じるソースを、たっぷりとまとわせてお召し上がりください。

兵庫県の美味が厳選されたコースですね。

兵庫県の美味が厳選されたコースですね。

はい。特にデザート作りに際しては、標高400メートルの裏六甲にある弓削牧場を訪れ、視察させていただきました。おいしいチーズや牛乳で、全国でも名を知られる牧場ですが、酪農はもちろん、豊かな自然を最大限に生かした運営や、社会貢献・環境保護にも果敢に挑戦されている。極皿コースのテーマである「地産地消」を推奨されている姿勢にも共感し、ぜひデザートにとお願いしたんです。

そんな経緯も含め、今回のコースでは、これまで料理人として磨いてきた技術や感性を注ぎました。普段はアラカルト主体のレストランなので、コースでしかできない料理を組み立てています。兵庫の美味を凝縮した渾身の極皿を、どうぞお楽しみください。

シェフ特別プランとなる「シェフの極皿プラン」は、ディナーのみ。このほか、シェフからのアミューズ・ブーシュとコンソメスープ、魚料理、コーヒーなどが付いて、15000円(税サ込)。5日前までに予約を。

神戸三宮 東急REIホテル トリコ

JR三ノ宮駅から徒歩約2分。ブックシェルフに囲まれ、書斎やリビングを思わせる、ゆったりとくつろげる雰囲気が人気のダイニング&ラウンジ。アラカルトをメインに、ステーキやアヒージョ、ピッツァ、パスタなど、多国籍な料理をバリエーション豊かにそろえる。クラフトビールをはじめ、100種以上のドリンクも充実。個室もあり、食事からバーまで、多彩な使い方ができる。

  • 住所:神戸市中央区雲井通6-1-5 神戸三宮東急REIホテル 1F
  • 営業:7:00~10:00、11:30~14:00、17:30~22:00(営業終了時間はラストオーダーです)※無休 
  • 平均予算:昼1500円~、夜2500~3000円
  • 電話:078-291-0701(予約係直通 9:00~18:00)
  • https://www.tokyuhotels.co.jp/kobesannomiya-r/restaurant/
神戸三宮 東急REIホテル トリコ
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取材/みやけなお 写真/坂上正治