朝ドラまんぷく人気を支える、巧みな脚本
2018.12.30 10:00

年内の放送が終わり、前半ひと区切りとなった連続テレビ小説『まんぷく』。個性ある俳優陣の好演はさることながら、テンポの良い展開に舌を巻いている視聴者も多いことだろう。その脚本を手がける福田靖にNHK大阪放送局がインタビューした内容をもとに、その巧みなストーリーが生まれる背景を紐解いてみたい。

連続テレビ小説『まんぷく』で脚本をつとめる福田靖
連続テレビ小説『まんぷく』で脚本をつとめる福田靖画像一覧

ドラマ『HERO』や『ガリレオ』(ともにフジテレビ)、大河ドラマ『龍馬伝』(NHK)と数々のヒット作を手がけた福田。『まんぷく』の制作発表会見では、「脚本家になって22年ですが、とうとう朝ドラを書く日が来てしまいました。身が引き締まる思い」と明かしたが、15分の物語を毎日、半年間も紡ぐことについて・・・。

【15分の尺に不安も、短いなりの感覚を思い出す】
──僕は大人が主人公の話を書くことが多いので、若い女の子が主人公の話は苦手で・・・。さらに15分という尺(時間)のドラマができるだろうかと不安があったんですが、考えてみるとNHKで『トキオ父への伝言』(2004年)という15分のドラマを書いたのを思い出したんです。あらためて見返してみたら、「あ、面白いじゃん」と。短いなら短いなりの「どんどん見ていく」「次を楽しむ」という感覚を思い出し、大丈夫な気がしてきました。結果的には若い女の子の話ではなくなったので、そういった意味でもいけるかなと。──

とはいえ、いざ脚本に手を付けるとやはり苦労したという。朝ドラを家庭料理に例え、その苦労を話す。

【毎日献立を考えるお母さんに似た大変さ】
──大河ドラマのような45分であれば、冒頭のシーンがラストに生きてくる、うねりや流れのある物語を作ることができます。それは週に一度、ちゃんとしたレストランでフルコースの料理を食べるようなもの。対して朝ドラの場合、例えば月曜に伏線があり、それが金曜に生きてくるという作り方はできません。月曜に何が起こったか、うちのお袋なんて絶対に忘れています(笑)。──

──手をかけた家庭料理を毎日作るイメージ。1回1回が一品一品ですので、毎日献立を考えるお母さんに似たような大変さはありますよね。登場人物に関しても、流れのなかでこのタイミングにこういう人物が欲しい、ということを考慮します。これも献立なんですね。ここは緑黄色野菜が出てきたほうがいいとか、お肉が続いたから次はお魚も食べなさいという感じで入れていきます。毎日のことなので、視聴者の方が飽きないように考えます。──

固唾を飲みながらも福子の出産を家の外から力いっぱい励ます、萬平(左・長谷川博己)と神部(瀬戸康史)ら塩軍団の男たち
第47回のワンシーン。固唾を飲みながらも福子の出産を家の外から力いっぱい励ます、萬平(左・長谷川博己)と神部(瀬戸康史)ら塩軍団の男たち画像一覧

だからこそ野呂缶として親しまれた野呂幸吉(藤山扇治郎)や、ともに苦労を重ね製塩業を成功させた15人の塩軍団など、愛されるキャラクターが生まれたのだろう。また、萬平(長谷川博己)や世良(桐谷健太)の行動は、常識から逸脱していたり、理解に苦しむ場面もあるが、憎めないキャラに描かれている。そんなキャラづくりや物語を紡ぐための心がけについては。

【視聴者と同じ目線を心がける】
──物語を描くときに気をつけているのは、登場人物のリアリティ。人にはそれぞれの正義や信念があり、それぞれに愛情を持ち、愛するものがあり、それゆえに互いにぶつかっていくのだろうと思いますし、それを描きたい。主人公だけが正しくて、残りは全員引き立て役だったら、視聴者も見ていて面白くないですよね。『まんぷく』でも、鈴さんの立場もわかる、でも、福ちゃんの言うこともわかる、萬平さんのこともわかる、あぁ、悩ましい!・・・、そこにドラマが生まれるはずです。僕の仕事は、日常から逸脱した何かを発明することではありません。そのため、普段の家族での会話や、ワイドショーで今話題になっていることなどをチェックして、視聴者のみなさんと同じ目線でいることを心がけています。──

【カードを出すタイミングを常に考える】
──実在の人物がモデルである以上、実際に起こった事件というものが存在します。そのできごとについての記述は残っていますが、いざ脚本に起こし始めると「なぜその事件に辿り着くのか」ということまではわかりません。例えば、萬平さんは逮捕されますが、それはある日突然起こるのではなく、そこにたどり着くまでの空気感が必ずあるはずです。それがあるとき、パッと裏返る。そんなカードの出し方を心がけながら書いています。どのタイミングで、どのカードを出していけば、最後にそのカードが裏返った時に、見ている人が「そうきたか!」と受け入れることができるかどうか、常に考えています。──

先の会見で、「自分が書くものはユーモアとかコメディの要素は不可欠。朝からみなさんが楽しい時間を過ごせるようなドラマにしたい」と意気込みを話していた福田。今後も絶妙なタイミングで切られるカードを、視聴者は毎朝楽しみにすることになるだろう。後半は1月4日よりスタート。3日には特番も放送される。

連続テレビ小説 第99作『まんぷく』

日程:2018年10月1日(月)〜2019年3月30日(土)
URL:http://www.nhk.or.jp/osaka/

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