田口トモロヲ監督が描く恋愛映画
2015.9.8 12:00

田口トモロヲ監督が描く恋愛映画

「トンネルのシーンは、僕なりのプレゼント」

原作のなかに、ビデオレンタル店の店長である京志郎イチオシの作品として出てくる(というか、作品名は現れないが判る人は即判る)のが神代辰巳監督・荒井晴彦脚本の日活ロマンポルノの傑作『赫い髪の女』。なるほど『ピース オブ ケイク』はこの作品の読み直しかと思うと合点できるものがある。

「ジョージさんも仰ってたけど、『天才ってこういうことなんだ・・・』と打ちのめされるって、神代監督には。それはホントに同じ気持ちです。こんなにすごい物を作っている人がいるのに、自分には何ができるんだっていう葛藤ですね。そこから作ることが始まる。ホント足下にも及ばないけれども、でも作りたいって衝動には正直になろうって。多部未華子ちゃんが『たやすいことよね・・・♪』って歌ってトンネルを通っていくシーンは、僕なりの原作者に対してのプレゼント。宮下順子さんが歩いてくる『赫い髪の女』のオープニングです。それに、京志郎の部屋の壁には『白い指の戯れ』(神代が脚本で参加)のポスターがあるし、その前でのセックス・シーンは京志郎があかりの足を抱えてるところから入るんですけど、ほんとにマニアックですが(笑)、僕のなかでは一応『青春の蹉跌』なんですよね(註:萩原健一と桃井かおりのシーン)。あれ要らないんじゃないの?って一部の方に言われたんだけど、いやいやちょっと入れといて、って」

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前2作では銀杏BOYZの峯田和伸、黒猫チェルシーの渡辺大知という、演技未経験同然のミュージシャンを主役に起用(今では2人とも俳優として引っ張りだこなのはご存知のとおり)してきた田口監督。しかし今回は人気実力兼ね備えたスターが勢揃い。主役の志乃にはテレビドラマ『デカワンコ』で監督とも共演した多部未華子だ。

「志乃っていうのは、等身大の一般的な女性。20代の、理想と現実のギャップでこんがらがっちゃってるというのも誰にでもある普遍的なことで、隣に引っ越してきてもそんな騒がれない。でもちょっと可愛いという匙加減、ちょうどいいバランスを持ってる人を探していったらもう多部ちゃんしかいないでしょ、となって。綾野剛さんも、男前だけれども、隣に住んでてもおかしくないというか。全体像はカッコいいけれども、ひとつだけピックアップしたら意外と親しみやすいかな、っていうところがイイと思ったんです」

© 2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会
© 2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会画像一覧

ワキも凄いが、中でも松坂桃季(志乃の親友・天ちゃん役)が今まで観たことのない新境地。でも抜群の素晴らしさだ。

「オカマ役は初めてだって言うんで、じゃあぜひ、と・・・。彼はすごく献身的で、この役が決まってから足の毛とか剃って、体重もちょっと落として、美肌パックを毎日欠かさず、っていう。あんなにルックスが良くて性格には翳りがない、ほかの現場ではみんなで『ブッダ』って呼んでたらしいです。桃李くんだけの世界があったら戦争無いですね。桃李くんたちしか出てこない映画があってもいいんじゃないかな(笑)」

そして、田口監督お得意の新人発掘としては、あかり役の光宗薫が強烈な存在感を残す。

「あかり役は最後の最後まで決まらなくて。最終的に写真を見せられたとき、ヴィジュアル的に『この人あかりじゃん! あかりそのものじゃん!』ってなって。会ったら、『ピース オブ ケイク』が大好きなんです、志乃じゃなくて、あかりのほうに感情移入しちゃって、。この映画で飛躍していただきたいと思ってます」

© 2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会
© 2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会画像一覧

次作は監督自身が「ガガーリン」や「ばちかぶり」での活動を通して、当事者でもある1980年代日本のロック・カルチャー、ストリート・カルチャーの話を撮りたいという。

「監督業が6年周期になっちゃって。地球温暖化もあるし、原発だってあるし、人間いつどうなるか分かんないんで、やるべきことをちょっと早めに、スピードアップしてやっていこうかなと思ってます」

そんな監督がインタビュー時に着ていたのは、80年代のミクスチュア・ニューウェイヴ・バンド、リップ・リグ&パニックのレアなTシャツでした。

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