田口トモロヲ監督が描く恋愛映画
2015.9.8 12:00

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今を生きる男女のリアリティ溢れる恋愛譚を描き続け、寡作ながらも絶大な支持を集める女性漫画家・ジョージ朝倉。その彼女の代表作のひとつ『ピース オブ ケイク』が、今をときめく豪華キャストで遂に映画化!・・・というので監督はいったい誰? と名前を見て驚いた。なんと、俳優・ミュージシャンとしてはもちろん、映画監督としても『アイデン&ティティ』(2004年)、『色即ぜねれいしょん』(2009年)を手掛けた田口トモロヲだ! 前2作は共にみうらじゅん原作の童貞度100%な作品だっただけに、意外という気もするが・・・。

取材・文/ミルクマン斉藤

「登場人物が『仁義なき戦い』、共有してるものがあるなと」

「もちろん、ジョージさんのお名前は知っていたんですけれども、まさかこんなことになるとは。エンディング・テーマの加藤ミリヤさんと峯田(和伸)くんのコラボみたいなことですか(笑)。でもこれを最終的にやろうと思ったのは、原作が面白いからなんです。レンタルビデオ屋のところで出てくる監督の名前や作品が、同時代的に自分が好きで影響を受けたものばかりだったし。あと小劇場っていうのも自分がやってたアングラ芝居というフィールドであったし、あと、登場人物の名前がみんな『仁義なき戦い』の俳優の名前って気づいたときに(註:梅宮、菅原、正樹、川谷、千葉・・・)ジョージさんと共有してるものがあるな、って。そこをまず自分のヒントにしてこの物語に入っていって、自分たちなりに描けたら、と思ったんです」

本作の脚本は『色即ぜねれいしょん』に続き、2度目のコラボレーションとなる向井康介(『マイ・バック・ページ』、『ふがいない僕は空を見た』など)。ジョージ朝倉の原作は単行本で全5巻。焦点の当て方が問題だ。

「向井くんと一緒に脚本を作っていくうちに、まず始めは『東京の恋愛』を描こうと。いっけんド恋愛なんだけど、本当は違う。王道のフリをして、実はオルタナティヴな恋愛を描いてる、っていうところをさりげなくできたら、と。あとは最終的に編集する時点で、男性目線にはならないようにかなり注意しましたね」

かなり原作に忠実ではあるけれど、それでも相違点はある。たとえば、志乃(多部未華子)とあかり(光宗薫)というふたりの女性の「決闘」シーン。

「あれはオリジナルなんです。やっぱり2人の決着をちゃんと2時間の間に作ろうと。(京志郎という)ひとりの男をめぐっての戦友感といいますか・・・。映画を作る者の性(サガ)で、原作にはない結末をどうしても入れてしまう。整合性を求めてしまう。2時間の間にきちっとそれぞれの入り口と出口を描いてあげたいってところは、それが良いのか弱点なのかっていうのも含めて、ありますね。もっとワイルドにほっぽり出すという方法論もありますが・・・」

© 2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会
© 2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会画像一覧

原作で描かれている下北沢界隈の小劇場シーンは、田口監督が70~80年代、「発見の会」や「劇団健康」に加わっていたアングラ演劇とはおそらく似て非なるものだ。しかし今も昔も変わらぬ小劇場関係者の匂いは見事に捉えられている。

「最初、向井くんと話したのは、ちょっと大人な、おしゃれな感じとかやってみるか、みたいな(笑)。向井くんが大好きな市川準監督とか、ウディ・アレンのニューヨークものや『ビフォア・サンライズ』みたいな背景ぐるみの恋愛みたいなのをやってみようよ!って言ってて、フタを開けてみたら全然なりませんでした(笑)。結局志乃や京志郎の現在進行形を立体化していくときに、彼らの経済状況と行動範囲っていうのを逆算すると今描いたようなところに落ち着いてしまったんです。20代でそんなに金もない人たちの行動なら、旅行できても熱海とか、せいぜい部屋付き露天風呂でめっちゃゴージャス、っていうようなことが一番リアルなんじゃないかって展開になってしまいました(笑)」

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